VSリベルティラバー①
「変革者ぁ?なんだそりゃ!」
ギャハハハと馬鹿にするような笑い声が耳に入るが、シルヴァはただ前を見据えている。
こ
(この人数差……どうやって切り抜けようか。 )
「…は、はは。」
少し後ろからも笑い声が聞こえるが、構いやしない。シルヴァは手元にある斧を両手に持ち、振り上げる構えをとる。深く息を吸い、ゆっくりと吐く 。心身ともに落ち着かせ、いつでも斬りかかれるように体勢を整える
「あっはははははは!!」
少しずつ苛立ってくるが、奏多はお構いなしに笑い続ける。あまりの声の大きさに、強盗団も黙ってしまうほどだ。
「…なんでそんなに笑ってるんだ?馬鹿にしてるのか?!」
「違う違う、馬鹿になんかしてない!…本当に思ってる。」
「じゃあなんで!?」
「いや…、本当に、『変革者』を名乗るやつが現れるなんて…思わなかったんだ。先生の言っていた通りだ 。その刻印といい、俺を納得させる証拠しかない。」
「…え?それってどういう…?」
「これが全部終わったら、改めて変革者。あんたを銀河戦士団に勧誘する。それは俺個人だけじゃなく、リーダーの意向の上でだ。」
笑いは収まり、二人にしか通じない話しかしない彼らに再び怒りを覚え始めた強盗団は全員が武器を取り出す。
「野郎ども!こいつらを革命への見せしめとして殺しちまえー!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!」
斧を振り回す前に、奏多は俺の前に飛び出し、一斉に襲い掛かる敵に怯むことなく、大鎌を振り下ろす。
「この辺の有象無象は俺に任せな。お前は強盗団のボスを頼む。変革者のお手並み拝見させてもらうよ。」
「ふん、見てろよ。俺が必ず、こいつらを止めてやるよ!」
シルヴァは奏多と構成員たちの向こうにいるボスへと向かい始める。背後では怒号が飛び交っていたが、無視を決め込む。
(俺の腕試しと先の道へ送り出したんだ。奏多が必ず食い止めるだろう。信頼関係はないが、俺が一方的に奏多を信じる。あいつは路地裏で倒れていた俺を助けてくれた。今度は俺が応える番だ!)
ボスの付近にちらほらいる構成員もシルヴァが向かってくる姿を捉えると、武器を持って襲い掛かる。シルヴァは相手が剣を振り下ろす動きに合わせて斧でガードを取りつつ、蹴りを腹に決める。一人は「ぐはっ!」と倒れる。
「こいつ…強いぞ…!?」
四方八方に襲い掛かる敵に対して、空中にジャンプをすることで挟み撃ちを回避しつつ、背後へと回り、斧を振り回し斬りつける。
反撃をする敵には足払いをし、体勢を狂わせてから、斧で武器を壊す。
「くそっ!撃ち殺せ!!」
_カチャッ!
と拳銃を次々に取り出す。
(…!?なんだあれ?散弾銃よりも小型の武器!?)
未知の武器に困惑するも、本能で危険と察知したシルヴァは、銃口から撃ってくる位置を予測する。
(狙いは頭…?いや、高さ的に心臓!…っく!斧で、防げるか?…避けるしかない…!!)
「撃て!!撃て!!!」
(いや…流石に…この数は……)
「この数は無理ぃぃぃいい!!!」
銃弾を避けながら、なんとか盾になるような物陰に身を隠す。そして息を整えつつ、様子を窺う。
「ちっ!こっちから行くか!?」
「銃で牽制だ!見た感じあのガキに遠距離武器は無さそうだ!」
(く……、どうすればいい…、どうやって近づく…。……ん?…待て!あの武器は取り巻きの奴ら全員持ってた!ってことは奏多が危ない!!)
収まらない銃声音に耳を傾けながら、奏多がいる後方をチラリと見る。しかし、そこには異様な光景があった。
(う…そ…だろ…?)
「あんなにいたのに、全員…倒れてる…。」
◇◇◇◇
数分前。シルヴァが後ろを振り返る少し前のこと。
「くそ!あいつをボスのもとまで行かせるか!」
「あいつには銃を出せ!あいつは銀河戦士団だ!舐めてかかったら死ぬぞ!」
剣だけでなく、次々と銃を取り出す構成員に対し、奏多は余裕そうな笑みを称えながら、様子を眺めていた。
「さて、どうしようか。」
(変革者の元へ行かせるわけには行かないな…。木こりと言ってたし、戦闘知識はない可能性が高い。それどころか銃を知らない可能性もある。…ボスの取り巻きが銃を持ってないわけがない。これはとっとと倒して、変革者をフォローしに行くべきだな。)
「っておっと!」
思考の最中に銃の弾幕が襲い掛かる。奏多は大鎌をくるくる回し、すべてを避け、軽く防ぐ。
「酷いじゃないか、こっちだって1対複数人で色々考えてるんだから。」
「そっちの事情なんて知るか!っていうかなんで効かねぇんだよ!」
「効くんじゃなくて、防いでるんだよ。当たったら痛いに決まってるじゃないか。当たり前だろう?」
「その余裕ぶりがウザいんだよ!!」
「残念ながら、うちにも銃のスペシャリストがいてね。彼に比べれば、あんたらの銃の腕はまだまだなんだよ。」
「うるせぇぇぇえ!!!!」
「馬鹿にすんな!!俺たちはここで負けないんだよ!!」
(煽られれば、すぐに反応。典型的な直情型の集まり。怒りのままに武器を振るう。…分かりやすいなあ。)
「なぁ、お前らさ。何でこんな所で、こんなことやってんの?」
奏多は次々に剣やナイフでも襲い掛かる構成員を受け流しながら単純に思ったことを問いかける。
「は?」
「悪い。質問の仕方が悪かったか?」
「何を聞くかと思えば…。俺達は義賊のリベルティラバー。アストレアを変えるための狼煙を上げるんだ…よっ!」
ナイフの目に向けた突き刺しを、横に躱し、膝蹴りを相手の腹に入れる。
「うん、やっぱり質問が悪かったな。言い換えようか。」
倒れ込んだ相手の武器を足払いで遠くへ投げ捨てながら、至って冷静に、煽りを入れずに、言葉を投げかける。
「スラム街の人達がどうやってネオン街へ移動した?」
「なっ…!」
「俺はアストレアに仕事で来たんだが、中々スラム街への行き方が分からなくてね。教えてくれるとありがたいんだが。」
聞きたいことを言っただけだが。…どうやら相手の反感を買ってしまったようだ。
「…ふざけてるのか…!」
「え?」
「俺達のことを何も知らない!この星を何も知らない銀河戦士団のボンボンがっ!!行きたいなんて簡単に抜かすな!!!」
先ほどとは異なり、銃の乱射とナイフが飛び交い、拳で襲い掛かる。
「何の地雷でも踏んだか!?一気に襲い掛かるじゃないか!」
大鎌で戦いながら距離を保ちつつ、宙へ飛び、シルヴァのいる方面を見る。彼も戦っている様子だった。彼と戦う構成員は皆、剣やナイフを使っているが、腰回りに膨らみが見える。あれも…銃だ。
(これは早く変革者のフォローに回るべきだな…!)
「お前らが答えてくれないなら、一旦終わらせてから、話を聞くことにするよ。」
敵の頭を踏み台にしつつ、着地をする。くるっと振り返り正面を向くと、大鎌の持ち手を地面に真っ直ぐ打ちつける。
「…終わらせる。月ノ仮消−朧。」
奏多は2回転し、魔法陣を作成した後、霧を一気に作り出す。奏多の姿がぼやけ始め、敵に困惑を与える。
「なんだ…?赤いやつがぼやけて見える…!」
「それに、なんだよこの霧?」
「…くっ、ただの霧だ!気にせず、あいつを倒せ!!」
構成員達は奏多に襲い掛かるが、奏多は何もせず、グサリと刺さり、「ぐっ…」と声を上げる。しかし、何も手応えはなく、奏多の姿をしたものは全て霧散して消えていった。
「どうなってる!?」
「確かに刺したのに!!」
「こっちだよ!」
聞こえた方へ顔を向けると、そこには奏多がニヤリと微笑みながら、手をひらひらと振っていた。
「残念、こっちでした。」
「くそ…舐めやがって!!」
また剣で突き刺しても、それは消える。何度も、何度も繰り返しても、本物の奏多に刺さることはない。彼らは奏多の幻影に翻弄され続けるばかり。
「どうして…本物はどこなんだよ…!!」
「もう降参かい?」
「どうせお前も偽物だろ!!」
「ははっ、それはどうだろうな?けど…。」
奏多は、構成員を壊れた柱の上から見下ろしながら、大鎌を構える。
「ここまでだ。」
「なっ……、上!?」
「お前達は、誰も動け『無い』。」
「うぐっ…!」
奏多の言葉通り、彼らは誰一人身動きが取れなくなる。困惑し、何かしらの言葉を口にする前に、奏多は飛び降り、敵の中心に着地をする。
「暫く眠りな。」
鎌を振り、大きな円状の斬撃を飛ばし、風圧で全てを吹き飛ばした。
…辺りは静寂に包まれる。何故ならその場に立っているのは、奏多ただ一人だからだ。
「後はお前だけだ、変革者。」
◇◇◇◇
一人佇む奏多が、こちらへ振り返る。
「お前の力はこんなものか?違うだろ。…あんたの実力を、見せてくれよ。」
「……ただの木こりに言うじゃないか。今まさにお前のように戦うから、見てろ!!」
銃声が止むと、物陰に隠れたシルヴァを見るよりも前に、ボスの取り巻きは、奏多と戦っていた仲間たちの倒れている姿を見てしまった。彼らは動くことなく、力なく倒れこんでいる。
「な…!あいつらが!!」
「あの赤いやつに全員やられたのか!?」
「あいつを撃て!!」
狙いが奏多に定まり、彼らは銃を乱射する。その姿を見たシルヴァは、すぐさま駆け出し彼らの背後へ回る。持っている斧に全力で力を込める。不思議と持ち手が銀河のように煌めきを放つ。
「ずっと斧を使って切ってきた!俺は薪割りNo.1のシルヴァだ!」
そして、勢いよく伐採のときに使う玉切りを繰り出す。注意してたシルヴァから、一度奏多に持っていかれた意識がすぐに戻ることはなく、背後からの突然の奇襲に反応ができず、彼らはシルヴァに切り伏せられた。
「ほう。うちの奴らをやるとは…やるじゃねぇか、クソガキ。」
リベルティラバーのボスは、余裕そうに拍手をしながら鉄パイプを持ち出す。
「俺は、銃を使うことはないから安心しな…。さあ、かかってこいよ。ガキ程度、軽く捻ってやる。」
「さっきから、ガキガキってうるさい!…俺はシルヴァって言ってるだろう。…俺はお前に言いたいことがあるんだ。」
「ほほう?言ってみろよ。」
「それは……」
シルヴァは、戦闘体勢のまま走り出し、斧を振り上げる。ボスはその動きに反応し、鉄パイプで防ぐ。
「…戦いながら話す!」
「そんな余裕があんのか!?」
「ないかも!でも、ガチで戦いながらじゃないとダメだと思ったから、戦いながら聞く!!」
「ふん、命を落としても文句を言うなよ、クソガキ!!」
ご読了ありがとうございました。




