包囲網①
「シルヴァ!!」
奏多の声が聞こえた瞬間、すぐ同時に刹那が振りかぶった大剣がシルヴァに牙を剥く。
「ぐっ…!!」
咄嗟に斧を召喚し、胸の前に構え、防御態勢をとったことで致命傷は避けられた。しかし…。
(この人、力が…強すぎる!!)
「ぐあっ!!」
「シルヴァ!!!」
相手の力に押され、シルヴァは思い切り吹き飛ばされてしまった。そして、建物の壁に激突する。
「…っく、かはっ!」
背中に与えられた痛みは、リベルティラバーと戦った比にならないほどに激痛で、すぐに立ち上がるのは困難なほどだ。
(い…痛い……、頭がクラクラする…。……ここで倒れちゃ駄目だ…。奏多が……奏多が、一人になる…!)
崩れた壁に倒れ込みながらも、シルヴァは、なんとか呼吸を整え、立ち上がる機会を伺うことにした。
「ふん、銀河戦士団といえども、この程度か。いや…シルヴァと言う小童の新人は偽造だったな。…さて、次は貴殿のば…」
「月ノ仮消‐三日月!!」
相手が自身に向かって動き出す前に、奏多は大鎌を取り出し、技を放つ。三日月型の斬撃は全て、首元に向かって刹那の元へ突き進む。
「下がってください!刹那さん!!二重結界!!」
澪羽はすぐさま刹那と奏多の技の間に入り、刹那の前で障壁を作り出す。二重結界は、奏多の技を全て受け止めようとする。が、怒る奏多の技は、普段よりも威力が無意識のうちに増幅していたのか、少しずつ結界にヒビを入れる。
「なっ、二重結界にヒビが…!?」
「下がれ、澪羽。こいつは銀河に名を馳せる傭兵団の実力者。二重結界なんて障壁如きでは止められない。」
その瞬間、奏多の技が障壁を破壊し、二人の元へ辿り着かんとする。澪羽は両手を合わせ握り締めると、詠唱をする。
「我らアストレアに栄光を。銀河の光よ、我に応え、力を見届けよ。『聖光の守護』!!」
「…っ!?その技は…!」
奏多が目を開くと同時に再び結界を展開した澪羽。月ノ仮消‐三日月は、結界にぶつかると、その瞬間、光に溶けるように技は消えてゆく。
「聖なる光は、神の使いである天使の末裔が使える魔法。奏多さん、貴方の技はどうやらこの結界には効かないようですね。」
「チッ…!神の使いである天使の末裔。それによる結界…。」
「執行官に続けー!!」
「我々も突撃せよー!!」
「クソっ、どっちみち俺達だけじゃ分が悪い!」
奏多は後方を振り向き、大声で名前を叫びながら、シルヴァが吹き飛ばされた方向へ走る。奏多の足は速いため、大鎌を振り回しながら、包囲網を駆け抜けて、シルヴァの元へ駆け寄る。
「シルヴァー!!平気か!自力で動けるか!?」
「はぁ…、うぐっ……、うん…立てる。」
「話は後だ、今はここから離脱する。」
「はぁ…了解…!」
立ち上がることは出来たが、足元が覚束ないシルヴァの肩を奏多が支える。しかし、そうこうしている内に、包囲していた他の警官が追いついて来てしまう。
(……どうやって逃げる…、街の中心はアストレア政府の縄張り。街の外…?でも、本当に逃げ切れる?……俺が余りにも足手まといすぎる。奏多だけでも、何処か確実に逃げ切れる場所を…!)
「変革者。俺だけでも、とか考えるなよ。俺達は、仲間を見捨てない。例え現地の住民と敵対する形になろうとも、仲間を傷付けられて黙っていられるほど、甘くない。」
「……奏多…!」
「俺はあんたを支えるって決めたんだ。あんたの変革の旅に着いていくって決めたんだ!そこにはシルヴァが絶対に必要だ。……何があっても、あんたは守ってみせる。」
ジリジリと詰め寄られながらも、真っ直ぐに俺のことを思ってくれる奏多。…出会ったばかりなのに、俺のことを信じてくれた。異世界に来て最初に出来た、初めての友達。俺だって、応えたい。奏多の約束に、応えてみせる。
(なぁ、運命の刻印。俺に力を貸せ…!何でもいいから、この状況を打開できる何かを!!)
___シーン。
(…駄目…なのか……!?いや、強く念じれば、斧を召喚したあの時のように何かできるかもしれない。女神に渡されたこの刻印は一体何ができるんだ…!未来を変えるなら、俺達のこれからの未来でも、過去でもいいから何かを俺に見せろ!!!!)
______キュイーン!
突如右手の甲が熱くなり、頭に酷い激痛が走る。あまりの激しい痛みに目を開けていられなくなる。
(な…何…!?)
その瞬間シルヴァの脳裏には、2つの景色が見えた。一つ目は、包囲している警官が執行官を除いて全てが倒れている景色。二つ目は、こことは違う場所のようだった。周囲の建物はやけに古く、ネオンライトもやや少なめに見える。しかし、中心部に高いビルがあり、アストレアでも一番高いと思えるほどだ。そこに何か赤色の鳥居が見える。
(この景色は、一体…?)
脳裏に浮かぶ景色が消えると、必然的に頭痛も治まり始める。目を開けると、そこには数秒前と変わらない景色で、警官に包囲されたままだった。
「大人しくするんだな。抵抗は無駄だってことは、さっきの澪羽様の結界でよく分かっただろう、犯罪者。」
「もう犯罪者扱いかよ。…お前達こそ、いい加減そこを退け。死なたくないなら…。」
「手負いの人間を背負って何ができる?今の貴様らは執行官様の手を煩わせる。俺達だけで十分だ。」
「……あんまり使いたくはないが…シルヴァを支える必要がある……。くっ……。」
「さあ、二人まとめて…ここで終わりだ。」
(なっ…このままじゃ…!)
シルヴァに悔しさの表情が表れた時、同時に隣から異質な気配を感じる。シルヴァは武人ではないため、何となくではあるが、それでも確実に何かが違うのだ。
「終わりはお前達だ。お前達は、立ち上がる事ができ『無い』。」
「はははっ!!何言ってやがっ…!?」
奏多が言葉を発した次の瞬間、包囲している警官全員が突然倒れ込む。なんとか、立ち上がろうとする者もいるが、全て無駄な努力へと変わる。
(これ、さっき見た景色と同じ状況だ…!なら…!!)
シルヴァは斜め上方向に顔を向け、首をできる限り回し、周囲を見回した。
「見つけた…!!」
シルヴァが視界に捉えたのは、恐らくこの街で一番高いとされるビルだ。その鳥居に何があるかは分からない。しかし、シルヴァは刻印の力で見えた景色に無駄なものがあるはずがないと考え、奏多にすぐに伝達した。
「奏多、俺を信じてほしい。」
「…なんだ、言ってみろ。」
シルヴァと目線を合わせた奏多の瞳は赤色になっているが、その変化は今はどうでもいい。
「簡潔に話す。さっき、俺の刻印によって、二つの景色が見えた。一つは今の状況。包囲してたやつらが皆倒れる図。恐らく未来を見た。二つ目は、あそこに見えるビル。分かるか?」
シルヴァが指を指すと、奏多は「なるほど。」と口にする。
「つまり、あそこに向かえばいいんだな。」
「話が早い!」
「その刻印は無駄なことはあんたには伝えないはず…そうだろ?」
「ああ!さっきよりは大分身体も動くようになった。今は俺を信じて……走るぞ!!」
「おう!」
二人は、一番高いビルへ向けて走り出した。
シルヴァは特殊な力を使えるようになった…!?
ご読了ありがとうございました。




