表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/64

第62話 彼女は託しました

「…………」


 茜は、音を立てないようにゆっくりと車のドアを開け、助手席に滑り込んだ。

 車内には、ハンドルにもたれる男が1人。


「……死んでない」


 もしも、この男が死体であれば。

 車の中は、大変なことになっていただろう。


 このゾンビパンデミックが発生して、10日以上。そして、季節は初夏だ。

 そんな中、放置された死体がどうなるかなど、考えるまでもない。


「……なんで、生きてるのかな」


 男は、動かない。

 茜は、じっと男を観察する。


「……まあ、いいか」


 そして、茜はため息を吐き。

 ゴソゴソと、ダッシュボードを漁り始める。


「お、らっきー。メモ帳とシャーペンですね。それでは失礼して……」


 茜はそうつぶやきながら、メモに何事かを書き込んでいく。

 そうして、書き終わったメモをそのまま助手席の座面に置くと、再びそろそろと車のドアを開け、外に脱出した。


「……ふんっ」


 ガチン。


 車のドアをゆっくりと閉め、体重を掛ける。

 そうやって、ほとんど物音を立てず、ドアをしっかりと閉めた。


「さて……吉と出るか、凶と出るか……ですね。……さすがに、ゲームストーリーと外れることをやると心配ですが……」


 周囲を確認し、ゾンビの位置を探る。


 滞在時間は、数分間。


 幸い、ゾンビ達は茜の記憶の通りの位置で、ルーチン通りに行動しているようだ。


「さて、さっさと戻って脱出してしまいましょうか。そろそろ夜の時間になりますので」


◇◇◇◇


「えっと……茜さん、何か用事があったの……?」


 急に2人を置いて梯子を登っていった茜が、何事も無く戻ってきた。


 またぞろ、大爆発でも起こるのではとビクビクしていた2人だったが、本当に何も無く茜が戻ってきたことで、困惑しているのである。


「……。……ちょっと。野暮用……」


 一瞬、ちゃんと説明しようかと頭を悩ませた茜だったが。

 結局どう説明するのがいいか分からなかったのか、誤魔化すことにしたらしい。


「そ、そうなんだ……」


 追求すべきか、否か。

 佳子は迷ったようだが、小さく頭を振り、頷く。


 ひとまず、考えないことにしたようだ。まあ、タイムリミットも近い。仕方が無いだろう。


「じゃあ、先に行く?」


「……はい。そうですね、私が先に行きましょう」


 そして、茜を先頭に、茜、佳子、克也という並びに隊列を変更し、3人は再び歩き出す。


 ここで、その歩き方は『中腰』に変更された。

 そろそろ、音を出すと上からゾンビが降りてくる状態になっている、ということだ。


「このくらいの声で喋るくらいなら、大丈夫です。でも、足音には敏感なので注意しましょう」


 茜の説明だが、さすがにお喋りをする気にはなれないのか、佳子はぶんぶんと首を振る。


「ええと。この先、びっくりして声を出さないようにしてくださいね」


 茜は、後ろの2人にそう忠告した。いや、忠告というか、『指示』なのだが。


「例えば、アレとかなんですが……」


 そう言って、茜は前方を指さす。


 佳子も克也も、足元や目の前の背中しか見ていなかったため、進行方向には全く注意を払っていなかった。


「……ぇっ」


 そして。


 ()()に気付いた瞬間、佳子は息を呑み、慌てて両手で口を押さえる。


 遅れて、克也も気が付いた。


 前方、橋の欄干から、何かがぶら下がっている。


 いや、何かでは無い。


 ()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()。たまに動きますが、手出しはできませんので、気にしないで大丈夫ですよ」


「ゾっ……」


 ヒィ、と佳子が自分で両肩を抱き締める。


 克也も顔をしかめ、目を細めた。


 3人が見つめる中、吊るされたゾンビがビクビクと動いている。


「『しゃがんで』ください。ゆっくり通り抜けましょう」


 ややあって、茜がそう指示を出す。


 3人がしゃがんだ状態で、足を擦るように移動を再開し。


 ――ブンッ!


 吊るされたゾンビの左足が、大きく振られた。


 その足先が、しゃがんだ克也の頭上を掠める。


「――ッッッッ!!」


 そして、その動きの反動で、吊るされたゾンビが回転した。


 首が折れ、普通の人間であれば間違いなく致命傷であるはずのゾンビは、しかししっかりと活動している。


「ックキュッ!」


 だが、頸椎は折れ、首回りが自身の体重で完全に締められ、まともに声を出すことができない状態だ。

 ゾンビは3人を視認したものの、声を出すこともできず、ただ身体を揺らすだけだ。


「はい、はい……はい。じゃあ『中腰』に戻りましょうか」


 ゾンビの手足が当たらない場所まで到達すると、茜は『中腰』に戻るよう指示を出した。


「普通に横を通ると、掴まってゲームオーバーですからね、気を付けましょう」


「…………ッ!!」


 そんな、ゲーム的には見え見えのトラップという小ネタを間に挟みつつ。

 茜達は、遂に対岸に辿り着いた。

 後は、先に見える階段を使って、地上に降りるだけだ。


 太陽は、山の稜線に差し掛かっている。

 夜の時間まで、あと30分といったところか。


 階段を降りれば、茜の目指すセーフゾーンは目と鼻の先。

 だが、そんな状況でも、茜は全く油断していなかった。


「『しゃがんで』『張り付いて』」


 茜が警戒する、橋脚の先に見える住宅街で、キラリと何かが反射した。

 茜の指示に、2人は即座に隠密態勢に移行する。


 ――ガンッ!!


 突然、重い音と共に。()()()()()()()()()()

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ