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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第60話 彼女はまたやりました

 周囲がオレンジ色の光に照らされたと同時、爆音が響き渡る。


 自警団ゾンビによる過剰な暴力に晒され、炎で炙られた自動車が、遂に爆発したのだ。


 そして、その爆発によって弾き飛ばされた破片が、茜に襲いかかろうとしていたゾンビをついでのようになぎ倒す。


「きっつ!」


 茜は梯子を下りつつ、思わずそう零した。


 爆風で煽られ、かつ炎熱によって発生した赤外線に炙られたのである。

 距離は離れているため、直接的に火傷するほどの熱量では無いのだが。


 音、風圧、そして熱。


 それらの感触が、茜が正に『ZOMBIE - ゾンビ 』の世界の()()()()、ということを脳髄に叩き付けてくるのだ。


「――さあ、いよいよこのステージもラストスパートです! 走り抜けていきましょう!」


 その台詞は、誰に向けて発したのか。

 茜自身も理解しないまま、彼女はメンテナンス通路に降り立った。


 通路は落下防止の柵で囲われており、人1人分の広さしか無い。

 下を見ると、グレーチングの隙間から夕陽に照らされる川面が確認できた。


「さあ、ここからは『歩いて』移動しましょう。走ると上からゾンビが降りて来ちゃうので、気を付けてください」


「……分かった、が。ゾンビが降りてくるのか?」


 茜に促され、カツカツと歩き始めながら。

 克也は、茜にそう尋ねた。


「そうなんですよ。足音に気付くと、私達が降りてきたみたいな避難用の梯子を使って、ゾンビがどんどん降りて来ちゃうんですよね。どうも、使い方自体は理解しているみたいなんですよね、ゾンビ達」


「……そうなのか」


「ええ……。ゾンビって、そういう知恵は無いんだと思ってたよ……」


 克也や佳子の言ったとおり。


 その辺りをうろつくゾンビは、通常、例えば道具を使うとか、迂回路を使うとか、そういう知的な行動は取らない。

 せいぜい、生前の習慣そのままに行動する、そんな程度だ。


 だが、これが生きた人間を襲いに来るとなると、途端に変わる。

 梯子があればそれを登ってくるし、離れた場所の階段を使うような知恵も見せてくる。


 ただ、下に降りる場合はそのまま飛び降りることが多いため、本当に頭を使っているかどうかは議論の分かれるところだったのだが。


 例えば、橋の下をボートで移動していれば、気付いたゾンビ達は普通に飛び降りてくる。

 だが、メンテナンス通路を移動している場合は、梯子を使って下りてくるのだ。


「まあ、今は大丈夫です! あれだけ爆発してれば、そちらに気を取られるので。さすがに走るとダメですが、歩くだけなら気付かれることはありません」


 そう茜が喋っている間にも、再び頭上から爆音が響いてきた。


 自警団ゾンビは、相当に暴れ回っているらしい。

 また、拡大した火災によって燃料タンクが加熱され、更に被害が拡大しているようだった。


 高圧状態になったタンクごと車体を押しつぶされれば、爆発炎上するのは道理である。


「もうしばらくはそのまま進めますが、真ん中を越えたくらいでまた状況が変わりますので、気を付けてくださいね」


 そして、茜のその忠告に。


 佳子と克也は、何とも言えない顔になるのだった。


◇◇◇◇


「天丼ですね」


 茜はそう呟きながら、次々に導火線に火を点けた。

 これで、茜が所持している打ち上げ花火、設置型花火は全て使い切ったことになる。


 ここは、大流川おおるがわ新橋しんばしの中間地点。


 同行者2人は下の通路に残したまま、茜は花火を使用するため、1人で再び橋の上に戻ってきていた。

 このあたりより先には、まだまだ元気なゾンビがうろついている。

 一方の反対側では自動車が爆発炎上しており、大変な騒ぎになっていた。


「ではでは、戻って進みましょう。もう、地上に戻ることはありませんので」


 適当なことを言いつつ、茜は身を低くしたまま非常用の梯子に戻る。


 茜が梯子を下り始めたところで、火の付いた花火が、シュバシュバと火を吹き始めた。


 それとほぼ同時、炎上現場で狂乱状態となっていた自警団ゾンビが、武器を振り下ろす手を止める。


『ドッコ……オマぇどこシュッし……ん……』


 そして。


 花火が、パンパンと破裂し始め――


『――ドコッシィんだァアァオマええぇぇエエェーッ!!』


 一瞬狂乱状態が解除された自警団ゾンビが、再び吠えた。


 それは、さきほどの焼き直し。茜の言葉を借りれば、天丼だった。


 花火の噴出に気が付いた自警団ゾンビが地面を蹴り、大きく跳躍しながら現場に突っ込んでくる。

 その着地の勢いに負け、足場にされた自動車がひしゃげ、破壊された。

 そして、破壊の圧力に負けて噴出したガソリンに、いまだに火が燻る自警団ゾンビそのものが火種となり、引火する。


『ドコンもんジャあああぁぁぁーッ!! ドまエええぇぇーッ!!』


 エンジンブロックと思われる、金属塊。


 それを武器として、自警団ゾンビは目の前の自動車に振り下ろし、破壊する。

 更に崩壊した金属塊を放り投げ、目の前の潰れた自動車から新たに金属塊を引きずり出し、剥ぎ取った。


『んじゃリャッッシャああぁぁアアァーッ!! なジャッこりャアアァァああぁーっ!!』


 その圧倒的な暴力に負け、自動車は真っ二つにちぎれ、ひっくり返る。


 完全に破断した燃料ホースから、勢いよく炎が噴出した。

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