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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第59話 彼女は照らされました

『キィらラららチャンきいいィィぃちゃランラぁアアあァァァー!!』


「ここです」


 ハンズアップで走ってきた中年男性ゾンビが、顔を出す茜に飛びかかる。


 その瞬間、茜はすっと引っ込んだ。


『きらララぁらラキゴッ?!』


 跳躍したゾンビだが、もちろん空中で方向転換することはできない。

 茜の頭のあった位置を通り過ぎ、そのままコンクリート製の欄干の上に腹から落下し。


「はい、オタコールお兄さんご案内~」


 茜は、目の前のゾンビの足を『持ち上げた』。


 太ももが欄干に引っ掛かって止まっただけのゾンビは、そのまま抵抗する術もなく橋の下に消えていった。


『ぁアアあぁキララららチャあぁアアァアァァー……』


「おお……!!」


 その鮮やかな身のこなしに、佳子は目をキラキラさせる。


 克也は、ぽかんとした表情で、ゾンビが落ちていった欄干を見つめていた。

 少し、刺激が強かったようだ。


「はいもう一投〜」


 そして、茜は止まらない。


 今度はそのまま立ち上がり、無防備に全身を晒したのである。


『ぴぴピピっちゃアアアアぁぁかえぇろピッ!!』


『タイたいタむぃたいムすススすケジューるウウゥうぅー!!』


 それに、2体のゾンビが引っ掛かった。2体は、そのまま横並びに走り出す。


「むっ……」


 茜は2体のゾンビと相対し――


『カかカえぇッ! ぴっチャああァァアアァアアァァァー……』


『たたタタいいぃイイィッ! スケッじゅううぅうぅるウウゥぅぅー……』


 飛びかかられる直前で、茜は横にダイブ。


 茜は自動車の影に飛び込むが、ゾンビ達はその動きに追従できない。


 その勢いのまま跳び上がったゾンビ達は、今度は欄干に引っ掛かることもなく落下していった。


「さて……」


 滑り込んだところから身体を起こすと、茜は再び『しゃがむ』『張り付く』を使用して、車の影に身を潜める。


「こんな感じで、ゾンビ達を川底にご案内するわけです。とはいえ、ちょっとでもミスすると一緒に高飛び込みか、あるいはゾンビに普通に捕まるか。ここは万全を期して、慎重にいきましょう」


「あぁ……って言ってるそばから出て行くんじゃねえ……ッ!!」


 説明もそこそこに、茜は再び立ち上がって影から出る。


 そのあんまりな行動に、克也は思わず突っ込んでいた。


『ハォはょッごザイマすッ! オォはよぅござマイスゥッ!!』


「元気が一番、よっ、ハイッ!」


 走ってきたゾンビは、今度は跳躍すること無く真っ直ぐ茜目掛けて走り込んできた。


 それを茜は、非常にタイミングがシビアな『躱す』でするりと身を躱し、『押す』を使って突き落とす。


『ぉドッ! ッハヨオオォオォォー……』


 4体目。


 またしても、華麗なキャラクターコントロールを披露した茜が、危なげなくゾンビを退場させた。


「オッケーです。これで、すぐ排除できるゾンビはいなくなりました。万難を排するなら、アイテムなどを駆使して追い払うことも可能ですが。無視して走っても、ギリギリ間に合いますので」


 ハラハラした表情で待機する佳子と克也の元に戻ってきた茜は、流れるように茜と克也を立たせると、自身は2人の後ろに移動。


「では、『行きましょう』。目指すは非常用のあの通路です! 『走って!』」


「心の準備くらいさせろォ!」


「あわわわ」


 佳子と克也は、茜の『指示』に弾けるように走り始めた。

 もちろん、茜もそれに続く。


 ――『走る』は、便利だが危険なアクションスキルだ。何せ、足音で一定範囲内のゾンビを誘引してしまう。


 つまり、3人が走り出したということは。

 視界外で隠れて立ち尽くしていたゾンビ達も反応する、ということになるのだ。


『ざザざんザンざんぎょうギョウざんギョウギョウううぅううぅ!』


『ととレあうトレあぁアウトれっとっとあうレトああぁ!』


『ハッはーっハァーッははハッはっハハッはッ!!』


 3人の足音に、即座に周囲のゾンビは反応する。


 『走る』の音が発生した地点、その最も新しい場所に向け、ゾンビ達が移動を開始した。


 だが、この橋の上は、放置車両によって通過可能な場所が少ない。


 すぐに移動できる場所にいたゾンビは、さきほど茜が排除してしまっていた。


 よって、ゾンビ達はぶつかり、詰まり、うまく移動することができない。


 その混乱で生まれた僅かな時間を使い、3人は全力で走り抜ける。


「先に『降りてください』!」


「うんっ……!」


 最初に辿りついたのは、佳子。


 茜の『指示』に躊躇無く欄干に飛び乗り、落下防止の輪っかに囲まれた梯子を下り始める。


 そこに、ややもたつきながら克也が続く。


 克也の運動性能は、お世辞にもあまりよくない。

 震える手で梯子を掴み、半ば足を滑らせるように降りていく。


「では、私が最後に」


 そんな克也を見届け、茜も欄干に飛び乗った。


 くるり、と身体を反転させつつ、足を梯子に下ろし。


『あうトレットレッとおぉぉー!!』


 遂に辿り着いたゾンビが1体、茜目掛けて跳躍した。


「おっと、これは間に合わないか!?」


 茜が、そんな解説を口走った。


 例えここで今すぐ茜が手を離したとしても、重力に捕まるより先に、飛び掛かってきた女性ゾンビに掴まるだろう。


 その瞬間。


 茜の顔を、オレンジ色の光が照らしだした。

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