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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第51話 彼女は動き続けました

 「今回は、こいつの出番です」


 そう言いながらポケットから取り出したのは、地面に置いて使用するタイプの吹出し花火。


 四角い箱形になっており、蓋になっている上部を開けて、導火線に火を点けるタイプだ。


「それでは」


 茜は、手早く花火を準備すると、流れるようにライターを『使い』、花火に点火する。


 そのまま、躊躇無く火の付いた花火を『投げた』。


 投げられた花火は、おじいさんゾンビの頭上を越え、その前方に転がる。


『……たたえたえタエたえサンささササたさエンさたた……』


 シュー、と火と煙を噴きながら、導火線が燃えていく。


 そんなものを目の前に投げられたため、おじいさんゾンビは立ち止まり、観察を始めたようだ。


「さあ、いまのうちに渡りましょう。『付いてきてください』。おじいさんはしばらく、あそこに釘付けになりますので」


「お、おう……」


「ひぇ……」


 茜は2人に『指示』を出すと、『中腰』のまま放置車両を避けて歩き始めた。


 2人も、茜の後ろを追いかける。


 シュパパパパ、と横倒しになった花火から、火が漏れ始め。


『さっタえさんたえサンッ! たえたたたエたえタエさんっ!』


 主張を始めた花火に対し、おじいさんゾンビは四つん這いになって手を伸ばしていた。


 そのゾンビを尻目に、3人は道路を渡って反対側の歩道に辿り着く。


 そして。


『――ぁぁあああいいいぃぃいいいぃぃー!!』


 遠くから、おなじみの監視塔ゾンビの叫び声が聞こえ始めた。


「こっちに行きましょう」


 それを確認し、茜は右に向かって歩き始める。


 そのまま、一行はその先の住宅の駐車場に入った。


『ぃぃいいいいああぁぁああぁぁ……!!』


「ひとまず、この車の陰に。絶対に身体がはみ出ないように、くっついてもらって」


「……っ!」


「お、おう」


 駐車場にバックで入っているワンボックスカーの後ろに、3人は固まる。


 克也、茜、佳子。


 茜が、2人の服を掴んで引き寄せた形だ。


「…………」


「…………」


「…………」


 沈黙する、3人。


 茜が喋らないなら、基本的に口を開かない佳子。


 顔を明後日の方向に向け、口をつぐむ克也。


 そして、2人を掴んだまま、車の後部に『張り付く』茜。


 そうして、息の詰まる十数秒が過ぎた後。


 ――ガラガラガラ。


 遠くから、金属を引きずる音が聞こえてきたのだった。


◇◇◇◇


 ――ガァン!


 金属を、何かにぶつける音。


 そして、金属を引きずる音。


『ドコしゅっシュッしんおまドまおドマどこしゅッ』


 それは、手にした金属製の棍棒を引きずり、時に打ち付けながら歩き回っている、自警団ゾンビ。


 それが、近付いてきたのである。


「…………」


 自警団ゾンビは、周囲の変化に非常に敏感だ。


 前回周回時と少しでも異なる場所を見つけたら、徹底的に破壊行動を取る。


 そして同時に、巡回ルートを歩いている状態では、非常に耳が良い。


 それこそ、茜達が『張り付く』や『しゃがむ』といった無音待機状態ではない場合、近付くだけで存在を察知するほどに。


 そのため、自警団ゾンビが近くに居る場合は、決して動いてはいけないのだ。


 対処法は、ただひたすらに息を潜める。


 あるいは。


『ドッ……ドッコドドおまオマままえオマエまこドコもノどこのんもんモどこオォぉー!』


 ズグシャアァ!!


『タェサッ!!』


 自警団ゾンビが、進行方向で地面に這いつくばっていたおじいさんゾンビを、ぶん殴った。


 人間離れした膂力で振り回された金属棒が直撃し、おじいさんゾンビはそのまま吹き飛ぶ。


 更に。


『どこモンジャッ! オマッ! なんナンこりゃンなコアあぁァァー!』


 ――ガキャアァン!!


 地面に転がる、吹出し花火の残骸。


 それを目聡く見つけた自警団ゾンビが、手にした金属棒を振り下ろし始めたのだ。


『ナンジャっ! コリゃんじゃなんコンッ! こんナンこりゃジャンっ!』


 ――バキャン! ガキャアァン!!


「行きましょう」


 自警団ゾンビが、発狂モードになった。


 こうなると、周囲の音は、一時的に反応しなくなる。


 もちろん、姿を視認すればその限りでは無いが、発狂モードであれば、比較的自由に移動することができるようになるのだ。


 もちろん。


 そんな、大暴れしているゾンビを目の前にして、わざわざ隠れ場所から出ていくなど正気の沙汰では無い。


 無いのだが、残念ながら、茜はそんな常識には囚われない。


 というか、シンプルに狂人であった。


 急に動き出した茜に、慌てて着いていく2人。


 茜は『中腰』で移動しながら、住宅と住宅の間の通路に入った。


 佳子と克也も、その後に続く。


 茜は宣言通り、無駄に止まるようなことはしなかった。


 裏に辿り着くと、そのままブロック塀によじ登り、奥の住宅の裏庭に侵入する。


「この先、自警団ゾンビはいないことが分かっているので、簡単に通り抜けできるんですよね。もう数分はあのおもちゃに夢中でしょうし、その後の巡回ルートも、こっちに来るまで結構時間が掛かりますので」


 そんな解説を垂れ流しつつ、茜は住宅の表側に辿り着いた。


 途中、突如窓に張り付くゾンビが佳子と克也を全力で驚かせたりはしたのだが、茜基準で極めてスムーズに脱出ルートを消化できているのだった。

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