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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第46話 彼女は気を利かせました

 佳子、克也、2人に対する『指示』も、問題なく通った。


 それを確認し、茜は安堵した。


 これなら、道中の移動もそれほど気を使う必要は無さそうだ。


 こちらの『指示』に素直に従ってくれるならば、茜の想定通りのルートを移動できる。


 ゲーム内では、『信頼度』が低いと『指示』に従わない、途中でやめてしまう、などの問題ある行動を取る可能性があった。


 その点、克也は最初から『信頼度』が高く、またプレイヤーの行動にあまり影響を受けず高止まりしてくれる、という特性があった。


 例えば、序盤でありながらも佳子の『信頼度』は、茜の行動によって大きく上下するというトラップがあったのである。


 恐らくチュートリアル扱いで、そのあたりの設定がシビアになっている、とWikiで推察されていたが。


 まあ、その点は問題ない。


 茜は、佳子の『信頼度』を最高に持っていって固定するプレイ方法を既に実践済みだ。


「このあたりの荷物を、空きに入れてくれる?」


「分かった」


 いくつかの消耗品を克也のリュックサックに詰めさせ、ざっと周りを確認する。


「…………」


 必要な物は、詰め終わった。


 後は、そう。


 克也の服装、か。


「克也君。今から外に出ようと思うんだけど、着替えはある?」


「あ? あー……」


 そういえば、と。


 克也は、自身の格好を改めて思い出したようだった。


 現在、克也は着心地の良さそうなルームウェアを着ていた。


 ただ、あまり屋外での活動には向いていないだろう。


「前着ていたのは、だいぶ汚れたから着替えたんだよな。この家に何かあればいいが……」


「探してくる?」


「そうだな……ちょっと待っててくれ」


 そう言って、克也は廊下に出て行った。


 2階に寝室や書斎があるため、そこに探しに行くのだろう。


 さて。


 この時間で、茜は準備を進める必要がある。


 まずは、自身の格好だ。


 服装は、問題ない。わざわざ脱いだりもしていないため、そのまま外に出ることができる。


 トレッキングポールは、装備したキャラクターの移動速度を少し上げる効果がある。


 なので、一番移動速度が遅くなる克也に渡す。


 佳子は運動神経がいいため、当面問題ない。


 いくつかのアイテムを確認し、荷物を整理する。ゲーム的に言えば、インベントリのアイテム順番を変更する。


 これにより、アイテムの取り出しや利用を、素早く行うことができるようになる。


 具体的には、リュックサックの側面ポケットや、上着のポケットに移動した。


「え……な、なぁにぃ?」


 次に、茜は佳子に目を向けた。


 佳子も、服装、装備は問題ない。リュックサックにも、さきほど荷物を詰めてもらった。


 髪型は運動部らしくショートカットで、髪留めなどは使っていない。


 履いている靴も、紐無しの運動靴のため靴が脱げるような心配も無い。


「大丈夫」


「あ、そう……?」


 ひとまず、克也以外はすぐに出発できる準備は整った。


 確か、ゲーム内では克也が部屋を漁っているところを観察することもできたはずだ。


 ただ、それでストーリーの進行が早くなるわけでもないため、ここは待機でよい。


 ――よいのだが、茜はちょっと考えてから、立ち上がった。


「あれ、どこかいくの?」


「玄関」


「着いていっても……」


「…………」


 茜が無言で頷くと、ぱあ、と表情を明るくした佳子も立ち上がった。


 佳子を引き連れ、茜は玄関に向かう。


「何か、思い出したの?」


「……克也君の、靴が、無いかと。思い出して……」


 ゲーム中では、克也は服を着替えた後、靴を探しに玄関に移動する。


 であれば、先に克也が履く靴を用意しておけば、時短になるのではないか。


 茜は、そう考えたのだ。


「靴かぁ。そういえば、何かルームシューズを履いてたよね。自分の靴はないのかな?」


「……汚れて捨てた、はず」


「そっかぁ」


 玄関に着く。


 いくつか、並べられた靴があるが、女性もの、あるいは革靴、スリッパと、運動には適さないものばかりだ。


 玄関に降りた佳子が、靴箱をがらりと開けた。


「全部出しちゃおうか」


「…………」


 茜が無言で頷くと、佳子はひょいひょいと靴を外に並べ始めた。


 いくつか、紐付きのスニーカーが仕舞われている。


 紐のない、マジックテープ式の靴もある。


 このうちのどれか、サイズが合えばいいのだが……。


「…………」


「…………」


 靴を並べ終え、沈黙する。


「……茜さん、サイズ、分かる?」


「しらない……」


 まあ、当然だった。


 さすがの茜も、克也の足のサイズは知らなかった。


「……お、こっちに来てたのか」


 そこへ。


 2階から、服を着替えた克也が降りてくる。


「あ、克也さん」


「靴もいるんだが……出してくれたのか。気が利くな」


「…………」


 やはり、余計は事はしないでもいいだろうか?


 茜は、結局靴をとっかえひっかえして確かめ始めた克也を眺めながら、そう考えていた。


 別に、時短にはならなかったのである。


 何なら、横で佳子も予備の靴を選び始めたため、余計に時間が掛かる可能性すらあった。


「茜さん、靴も予備は持っておいた方がいいかな?」


「……今、じゃなくても、良いと思う……」


「そうかな? うーん、そうかも?」

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