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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第47話 彼女は投げ込みました

 第3ステージである『夕陽新町ゆうひしんまち』から脱出して次の町へ移動するためには、ひとつの大きな障害を越える必要がある。


 それが、『大流川おおるがわ新橋しんばし』である。


 大流川新橋は、夕陽新町と東中州島町の間に流れる大流川おおるがわの上に掛けられた大きな橋だ。長さ1km以上の、巨大な吊り橋である。


 ここを避けて通ろうとすると内陸側に大きく迂回することになるため、この橋を通って移動するのがセオリーだ。


 一応通らないルートもあるのだが、移動日数は追加で10日は必要になるという上級者向けのコースとなっている。


 もちろん、移動時間が長くなれば長くなるほど、それだけゾンビの危険にさらされ続けることになる。


 ただ、問題は。

 大流川新橋は、その途中が自動車事故によって塞がれており、移動可能なルートが限られるという点である。


 橋の上にはゾンビが当然のようにうろついており、また、事故の影響で本来遮蔽物になるはずの車が無い場所があり、ゾンビに視認されやすい構造になっているのだ。


 橋を回避するルートは大変困難だが、橋を渡るのも難しい。


 それが、この町を脱出するために用意されたルートだった。


 ちなみに、橋を通らず川を渡るというのも、できなくはないのだが。


 泳いでいると、それに気付いたゾンビが次々と川に飛び込んでくるという、地獄絵図が待っているのだ。


 これは、ボートなどを使っても同様である。


 手漕ぎでは逃げ切れず、エンジンを使うとその音に向かって大量にゾンビが寄ってくる。


 川の上は障害物もなく、どこからでも視認されてしまうため、逃げ場がないのだ。


 そしてもちろん、茜が目指すのは、大流川新橋を渡橋する通常ルート。


 通称、『焦熱ルート』。


 『ZOMBIE - ゾンビ』内屈指の派手な演出が発生する、とても映える、サムネ向け、と評判のシナリオだった。


◇◇◇◇


「それでは行きましょう。ここからは、人数も増えましたので慎重に」


「……なあ、茜ちゃんはいつもこんな感じなのか……?」


「……そうですね……」


 茜率いる一行は、準備を整えて庭に降り立っていた。


 先頭でやる気満々の茜と、その後ろに立つ佳子と克也。


 一番小柄な少女を先頭にし、3人は移動を始める。


「さて、しばらくはお宅訪問の連続です。道路には、ゾンビが歩いているので」


「…………」


「…………」


 茜の『指示』で、2人のお供も『中腰』になりながら庭を横断した。


 そのまま、敷地の塀もよじ登って越えてしまう。


「さて、庭に回ると在宅のゾンビに見つかってしまうので、ここは表に回って通過する必要があるんですが……」


 茜はそう解説しつつ、2人を誘導しながら玄関側に回った。


「ゾンビの動きを確認して、視認されないように移動するのが基本です」


「……確か、奥にゾンビが……」


「お、おい……声が聞こえるぞ……」


 いつものように解説しつつ路地を確認する茜に、首をすくめながら外を気にする佳子。


 そして、そんな2人に慌てて注意する克也。


「……あぁ。このくらいの音量なら、たとえ背中で喋っても気付かないので、大丈夫ですよ。視界にさえ入らなければ、だいたい問題ありません」


「……克也さん。茜さん、結構ずんずん進むから、今のうちに慣れておいた方が良いですよ」


「えぇ……」


 そして、路地の両側を茜は確認し。


「……運が悪いですねぇ。自警団ゾンビが来てるっぽいです」


 茜の、その言葉と同時。


 ガラガラと金属を引きずる音が、どこかから響いてきたのだった。


◇◇◇◇


「あいつか……」


 茜の言葉に、克也が顔をしかめた。


 さすがに、この町で今日まで生き残った、サバイバー。

 克也は自警団ゾンビの存在をちゃんと認識していたようだ。


「とりあえず、見つからないようにこのまま隠れて……」


「ちょっと時短しましょうか」


 克也の真っ当な意見を、茜は当然のごとくぶった切った。

 自身の上着のポケットに手を突っ込むと、何かを取り出したのである。


「ほいっと」


 茜が取り出したのは、別の住宅で入手した、ねずみ花火。


 右手にねずみ花火、左手にライター。


「あ、茜さん今度は何を……」


 慌てて佳子が茜に問いただすが、時既に遅し。


 茜は躊躇無く、カチリとライターのスイッチを押し込んだ。


 シュボ、と吹き出した炎が、ねずみ花火の点火導線に火を着ける――!


「ほいっと」


 そして、火の着いた花火を、茜はさきほど乗り越えた塀の向こうに『投げ入れた』。


 その結果を確認すること無く、茜は『しゃがみ』、同時に2人に『張り付く』よう『指示』を出す。


「…………!!」


「…………!?」


 混乱した表情のまま、『指示』の通りに佳子と克也は目の前の塀に背中から張り付いた。


 茜も同様に塀に張り付いて、外を確認し――


 ――パパパパパン! パパン! パパパン!


 僅かな間を置いて、ねずみ花火が、破裂音を出して暴れ始めた。


 その瞬間。


『ぉォォおおおぉままえぇえぇぇエエェー!?』


『ちわちあわわァこんにィニニチいいぃぃー!!』


 自警団ゾンビが、そして路地奥のおじさんゾンビが、叫び声を上げて走り始めた。


 2体のゾンビが、ねずみ花火に向かい、飛び込んでくる。

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