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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第42話 彼女は頷きました

『――ぁぁぁああおおぉぉぁあぁいいぃいぃぃー!!』


 監視塔ゾンビが、叫び始めた。

 茜はそれを視認し、頷いてから手を離して飛び降りる。


「み、見つかったの!?」


 ゾンビの叫び声を聞いてビビり始めた佳子に、茜は首を振る。


「慌てないで大丈夫です。監視塔ゾンビ自体は何もしてこないので」


 そうして、茜は改めて、塀に『張り付いた』。


 視線を動かし、路地奥のゾンビを確認する。


 すると、その場所で立ち尽くしていたゾンビが、ゆっくりと周囲を見回しているのが見えた。


「あんな感じで、監視塔ゾンビの叫び声を聞くと、有効範囲内のゾンビが全て警戒状態になります。徘徊型は立ち止まって周囲を確認し始めますし、自縛型は見回し始めるんですよね」


「だ、大丈夫なの……? それ……」


「視界に入らないようにすれば、見つからないので大丈夫です。むしろ、視界が限定されるので歩きやすくなるくらいです。ただ、普段より音に敏感になるので、近付く場合は絶対に音を立てないようにしないとダメですが」


 そんな説明を垂れ流していると、路地奥のゾンビが、ゆっくりと身体を回し始めた。


 周囲を確認するために、動き始めたのである。


「おっと、きましたね。ではいきましょう! 静かに!」


「……!?!?」


 そして、路地奥のゾンビの視線が、路地入り口から外れた瞬間。


 茜は佳子に『指示』すると同時、『中腰』で堂々と歩き始めた。


『あああぁぁぁいいいいぃぃぃええええぇぇえええぇぇぇー!!』


「…………」


 『中腰』状態は無音で移動できる。

 また、警戒状態のゾンビは音に敏感になるのだが、そもそもこの『警報音』が響いている現状では、多少の音はかき消される。


 よって、茜はかなり大胆に移動していた。

 同様に、『指示』されている佳子も、茜に続いて『中腰』で歩く。


 路地奥のゾンビは、完全に後ろを向いていた。


 その隙に、茜は佳子を先導しながら路地を歩き、途中の住宅の門扉前まで来た。


「……開けて入ったら、すぐに右の影で『しゃがんで』『張り付いて』」


「……!」


 佳子が、『指示』の通りに門扉の取っ手に手を掛け、開けた。


 ガチャリと留め具が音を立て、ギイ、と門が開く。


 佳子がそのまま敷地に入り、指示の通り右に移動する。


 その後に続き、茜も門扉を抜け、すぐに後ろ手で門を『閉めた』。


 取っ手の金具が、ガキンと嵌る。


 それを確認することもなく、茜は左に移動、門柱の影に『しゃがみ』、『張り付いた』。


『…………』


 その瞬間。


 ガチャン、という音と共に、()()()()()()()()()()()


「…………!?」


「…………」


 両手で口を抑えた佳子が、バッと茜に顔を向けた。


 茜は佳子に目線を向け、そっと人差し指を立てた右手を、自分の口元に持っていく。


『…………』


 ガチャ。


 ガチャガチャ。


 ガチャン。


 誰かの手が、門扉を揺する。


『ぁぁあぃいいあぁぁぁ……!』


 ()()()()が、尻すぼみに消えていく。


 ガチャ、ガチャン、ガチャ、ガチャ。


 その間も、門扉を揺する手は止まらない。


 そして。


 ぬ、と。


 無表情の中年男性の頭部が、門の上から突き出された。


「…………!!」


 佳子は気配でそれを察知したのか、必死に両手で口を押さえたまま、壁に背を押し付ける。


 そうして、時間にして1分ほど。


『…………』


 門扉の上から中を見回していた中年男性のゾンビの顔が、すっと引っ込んだ。


「…………」


 茜が、人差し指でシーッとしたまま、『中腰』で佳子のそばに移動してくる。


「……そろそろ、しゃべっても大丈夫です」


「……はああぁぁぁぁ……」


 茜にそう言われ、佳子は大きく息を吐いた。


「心臓に悪いよぉ……」


「監視塔ゾンビのサイレンが鳴ると、ああやってゾンビが警戒するようになるんですよね。気になることがあったら、大体1分くらい周囲を観察してくるんです。下手な隠れ方をしていると、見つかっちゃうんですよね」


「そ、そうなんだ……」


 先ほどはゾンビが後ろを向いている間に通り過ぎたため、見つからないはずだった。


 しかし、警戒状態になったゾンビは、音にも敏感になる。


 そのため、門扉の開閉音を聞きつけてこちらにやってきたのだ。


「幸い、あの程度の音ならゾンビが走ってくることはありません。ゆっくり歩いて気になるところを見にくる感じなので、慌てず隠れればやり過ごせます」


「……。私には、色々と無理なことは分かったから、茜さんに全部お任せするね……」


 なんでもない風に解説する茜に、佳子は力なく首を振った。


「だいたい、1分くらいしたら普通の状態に戻るので、それまでは隠れて動かないようにすれば大丈夫です」


「おっけー……」


 わかってくれたか、と、うんうんと茜は頷き、佳子を促して立ち上がった。


「では、()()を迎えに行きましょう。すぐ近くです」


「か、かばんくん……? なんかさっきも言ってたけど、それって誰……」


()()を仲間にするのとしないとじゃ、難易度が倍は変わりますからね。無理に仲間にする必要はありません」


「????????」


 混乱する佳子には気付かず、茜は彼女の手を引いて裏庭を目指して歩き始めた。


 サバイバーを仲間にすることで、茜の『指示』の量は倍になる。

 だが、茜は全く気にしていなかった。


 そう、その程度の操作、彼――彼女には、お手の物なのだから。

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