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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第41話 彼女は発見されました

「……ちょっと。待って」


 空き地の前、塀が途切れた場所で、茜は立ち止まった。


 塀に張り付いたまま、その向こうを確認する。


「…………」


 佳子も立ち止まり、じっと息を殺していた。


 茜の『指示』は絶対だ。

 茜の指示を聞いていれば安全だ、そう佳子は十分に理解している。


「よし」


 そして何かを確認し、茜は頷いた。


「佳子ちゃん。走って、向こうに行きます」


「あ、はい」


 そうして、そう宣言し。


 茜と佳子は、ほぼ同時に走り始めた。


 最初に、茜が塀から飛び出す。


 その瞬間、


『――ぁぁあああいいいぃぃいいいぃぃー!!』


 遠くから、サイレンのような大音響が流れ始める――!


「走って!」


「…………!」


 だが、それ自体は無視し、茜は走り続ける。

 佳子も、それに続く。


 数秒で空き地の前を通り過ぎ、茜と佳子は再び、住宅の塀の影に隠れた。


『ぃぃいいいいああぁぁああぁぁ……!!』


 そして、2人が隠れると同時。


 その音は、ゆっくりとフェードアウトしていったのである。


「…………」


「…………」


 茜は振り返り、口元に人差し指を当てた。


 静かにしろ、のポーズ。


 佳子はこくこく頷き、大人しく塀に張り付いた。


 そのまま、10秒が経過する。


「……はい」


 そうしてようやく、茜は警戒を緩めた。


「で、話の続きなんですが。自警団のお兄さんが発狂中なら、多少動いてもバレないので」


「え、そっちの話!?」


 先ほどの叫び声についてはノータッチで話を再開した茜に、佳子は思わずそう突っ込んだ。


 だが、茜はなぜ突っ込まれたか分からずに少し首を傾げ、だが、その疑問には答えず喋りを再開する。


 コミュ障に、会話のキャッチボールを期待してはいけない。


「自警団が近付いてきたら、気を引くように細工してあげることで、その間は自由に動けるようになるんです。なので、けっこう時短になるんですよね」


「……。……? じ、時短?」


「時短、です。時間は貴重です」


 そして。


 佳子は、ものすごく渋い顔をしてから、様々な突っ込みを飲み込んだ。


 いろいろと、言いたいことはある。


 だが恐らく、それをぶつけても、茜は納得できる回答はしてくれない。

 そんな確信めいた予感を、佳子は抱いていた。


 茜と行動を共にしはじめて、はや3日目。

 佳子は、茜の性格を理解し始めていた。


「わ、わかった。それはわかった」


「ん」


 佳子は、理解してくれたらしい。

 茜は頷き、移動を再開する。


 2人は『中腰』のまま、住宅の塀沿いをゆっくりと歩き始めた。


「……で、さっきの、空き地の前を通ったときの叫び声って……」


「あ。あれは、監視塔ゾンビです。人間を見つけるとああやって叫ぶんですが、何もしてこないので、当面は無視して大丈夫です」


「監視塔……?」


「なんか、マンションの屋上に陣取ってるんですよね……。あれ、生前は何やってたんですかね。ヤバそうですよね」


「……そ、そう、だね……」


 わからない。


 いや、分かる。説明してくれているというのは、分かる。


 だが残念ながら、微妙に、佳子が望んでいる回答とはズレていた。


「視線が通る場所――直線道路とか、ああいう空き地とかを横切るときは、監視塔ゾンビに見られちゃうんですよねぇ。ちょっと、後半になると厄介なんですけど。今はとりあえず、あまり影響はありません」


「そうなんだ……後半……?」


 そんな、キャッチボールになっているようでなっていない会話をボソボソと続けつつ、2人は道を進み。


「さて――」


 茜が、足を止める。


 彼女の雰囲気が変わったのを察し、佳子も口を閉じ、立ち止まった。


「――()()を、お迎えしましょう」


◇◇◇◇


「…………」


 茜は塀に『張り付いた』状態で、通路の奥を確認する。


 通路奥には、じっと佇む人影があった。


「……何とかして、あのおじさんゾンビの気を逸らさないといけません」


「何とかしてって……」


 茜の台詞に、佳子はビクビクしながら返答する。


 ささやき声なら、ゾンビはほぼ反応しない。


 それは、茜が佳子に教えた()()()のひとつだ。


 通常状態のゾンビが反応するのは、一定以上の大きさの音。

 ささやき声なら、例えゾンビの背後であっても、反応しないのである。


 これに関しては、ゲーム設定考察としていろいろな説が提唱されていた。


 単に、ノーマルゾンビが音に疎い、という説。


 そもそも他のゾンビがある程度音を立てるので、それにいちいち反応しないよう、音への感受性が低い説。


 ゾンビ化によって聴覚が変質している説。


 どれが正解かは、結局ゲームを通して明かされることはなかった。


 ただ、小さな音にはゾンビは反応しない。

 それだけは、確かであった。


「では、失礼して……」


 そして。


 茜は、『張り付く』をやめて塀に向き直ると、そこを『登った』。


 上部を掴み、身体を持ち上げつつ下部の出っ張りに足を掛け、塀の上からぴょこんと頭を出す。


「…………」


「…………」


 その程度の露出であれば、ギリギリ、通路奥のゾンビからは視認されない。


 その状態で、茜は目を凝らした。


 住宅や庭木の隙間、そこから見える、遠くのマンション。


 その屋上に、何か、動く影。


『――ぁぁぁああおおぉぉぁあぁいいぃいぃぃー!!』


 そうして、サイレンのような叫び声が、響き渡った。


 監視塔ゾンビが、茜の頭を視認したのだ。

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