光さん僕の事まんざらじゃないかも!?
光さんとの帰り道、僕はつい大きなため息をついてしまう。
「どうしたの?ため息なんてついちゃって、そんな大きなため息をつくと幸せが逃げてしまうぞ。
だからその大きなため息で幸せが逃げないように大きく息を吸おう」
僕は光さんに言われたとおり大きく吐いたため息を吸い込むようにした。
「これで幸せは逃げなくなるからね」
「光さん、世の中には色々な人達がいるんですね」
「麻美ちゃんの事なら気にしない方が良いよ。また明日になったら、いつものように元気を取り戻しているからね」
「光さん麻美ちゃんはどんないじめに合ったんですか?」
「それは個人情報だから、あまり言えないけれど、中学時代、相当ないじめにあったそうよ」
「そうなんですか・・・」
「麻美ちゃんの事が気になる?」
「僕が麻美ちゃんを泣かせた事を思うと、なぜかいても立ってもいられない状況に陥るんですけれど」
「もう済んでしまった事を思い返して蟠っても仕方がないでしょ。麻美ちゃんならあっ君の事を許してくれるよ」
「なら良いんですけれどね」
「それよりも、英明はどうだった?」
「気難しい人がいるけれど、通って見たいです。今日僕が泣かしてしまった麻美ちゃんを見て、僕は思いました。僕もいじめられた経験があるから、麻美ちゃん、いやその他の人達にも分かりあえるんじゃないかって」
「そう言ってくれると連れてきた甲斐が合ったわ。今からあっ君の家まで行って親御さんと私が話を付けてあげる」
「良いですよそんなの、自分でやりますから」
「そんな事を言わないで私の力も必要でしょ」
と僕にウインクをする。
そんな光さんを見て、胸がきゅんと締め付けれられる感じがして、僕は本当に光さんの事が好きなんだなって思えた。
でも光さんは僕にその気は無いことは分かっている。だから光さんは僕の憧れだと、思うようにする。
でもそう思うと少し切ない。
色々と光さんと話しながら、自転車を引いて歩き、僕の自宅にたどり着いた。
「ただいま」
光さんが「お邪魔します」と中に入ってきた。
母親が居間から出てきて、「あらアツジ帰ったの・・・それであなたは光さんでしたっけ」
「はい、あっ君の今後の事でお話したいと思ってお邪魔させてもらったのですが」
「まあ、立ち話も何だから、中に入ってお話しましょう」
居間に行くと父親は新聞を広げて読みふけっていた。
「お父さん、光さんがアツジの事で将来に関して話が合るそうよ」
「そうか」
食卓に向かい隣に光さんが座って、正面に父と母が座っている。
母はご丁寧にお茶をもてなしてくれた。
そこで父親は「アツジ、お前が学校でいじめを受けていけない理由は分かったよ。でも図書館も良いが、今後どうするつもりだ?」厳しく言われてしまった。
そこで光さんが「その事に関しましては、」光さんは鞄からフリースクール英明塾のパンフレットを取り出して、父親と母親に差し出した。
「フリースクール英明塾?」
「アツジ君の親御さん達はご存じありませんか?不登校の子達が集って将来の事を考えたり、専門学校や大学に行く生徒がいるところなんですよ」
「なるほど、ならアツジに打ってつけの所みたいだな」
父さんが言う。
「はい。アツジ君は成績も優秀ですし、ここで学びさえすれば、高校に進学する事も出来ます」
「アツジは通ってみたいのか?」
そこで光さんが「今日なんてアツジ君勉強部屋にこもってちゃんと勉強をしていました。すごく熱心に勉強をしていました」
「そうか。じゃあ、アツジここに通いたいのだな?」
「はい父さん」
「よし分かったお金の事は問題はない、むしろ普通の塾に通わせる程のお金じゃないみたいだからな」
「ありがとう父さん」
「そこでしっかりと学んできなさい」
「はい!」
話は終わり、時計を見ると午後十時を回っていた。
光さんが帰るとき僕は「光さん、送って行きますよ」
「大丈夫よ、そんなに気を使わなくても」
「ダメですよ、この辺り結構物騒だから」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃうかな」
僕は光さんを自転車で送ることとなった。
光さんとこうして二人で自転車で並んで走り、何か恋人同士のように思えて来た。
「光さん、今日はありがとうございます。フリースクールを紹介してくれて、それに僕の親に理解していただいたのも、光さんのおかげです」
「私はそんな大した事はしていないよ。全部あっ君の努力の結果だよ」
「そんな僕は何も努力していないですよ」
「でもあっ君のお父さんに暴力を振るわれた時に私の為に戦ってくれたあっ君はかっこ良かったよ」
光さんは言った。僕の事がかっこいいと、もしかしたら僕のことをまんざらでもないんじゃないかって思えてきた。
僕は光さんとこうして並んで自転車で走っていたい。
でも楽しい時間ってどうしてこんなに早く過ぎてしまうのか?気がつけば光さんが住むアパートにたどり着いた。
「じゃあ、あっ君お見送りありがとう。明日も図書館はないから、明日は英明の方にいるから、よろしくね」
「はい、光さん、色々とありがとうございます。それではお休みなさい」
「はい、お休みなさい」
僕は来た道を折り返して帰った。
光さんなんて素敵な人なのだろう。
美人で優しくて、こんなにも僕の事を慮ってくれるなんて。
僕はもう光さんにいつの間にか心を奪われてしまった事に気がつく。
思えばこの数日、光さんと出会って色々な事があった。
テレビで図書館においでよと言う言葉に僕は導かれるように図書館に行った。
そして光さんに出会った。
これって運命なんじゃないかな?
何て思いながら、自宅に到着して、僕はお風呂に入り、自分の部屋に戻って眠りについた。
眠る前僕は光さんの事を嫌らしく考えてしまう自分が嫌になった。
何て僕は不埒な男なんだ。
ダメだ。そんな事を考えちゃ。
朝になり、今日も英明に行けば光さんにも出会えるし、仲間とも出会える。
朝ご飯を食べると、僕は自転車で英明に向かった。
たどり着いたときには、もう八時半を示していて、光さんと菜々子さん以外誰もいなかった。
光さんに挨拶しようと思ったが、部屋の窓から見える豊川先生と何やら深刻そうな話をしている感じがして挨拶さえ出来なかった。
でも挨拶は基本中の基本。
「おはようございます」
と言うと「あら、あっ君、おはよう」そこで豊川先生が癒しの笑顔でおはようと言ってくれた。
光さんと話し合いたいが、何やら深刻な感じがして、そんな余裕すら感じられない。
僕は部屋を出て、とりあえず、勉強室にいる菜々子さんに「おはよう」と挨拶をした。
「あら、おはよう」
菜々子さんは必死に勉強している。
何だろう。菜々子さんに僕は触圧されて勉強熱心になってしまう。
僕は菜々子さんの前に座り、英単語帳を取り出して英語の勉強に取りかかった。
なぜか菜々子さんが勉強しているところを見ると、僕も負けていられないと思って勉強を開始する。
英単語帳を見て、書いて単語を覚えていた。
部屋の中には僕と菜々子さんのシャーペンをなぞる音しか聞こえてこない。
なぜ僕は彼女を見ると、こんなにも勉強熱心になってしまうのか分からない。
何かに没頭している時ってなぜか時間が早く感じられるんだよな。
光さんが中に入ってきて、「あら二人とも勉強熱心ね。菜々子ちゃんもあっ君も分からないところが合ったら私に言ってね」
「はい」
と菜々子さんは素直な返事をする。
そして僕を見ると、きつい目で見て、何か怖くなってしまう。




