報連相を知らないと社会に入って苦労するよ!
母親に今日は夕飯を食べてくるとスマホで連絡したら「あまり人様に迷惑かけちゃダメよ」と言われて「分かっているよ」と言って通話は途切れた。
僕と笹森君と麻美ちゃんでカレーの買い出しに行った。
そこで僕は麻美ちゃんの事が気になり「麻美ちゃんはどうしてこのフリースクールに来たの?」
すると表情を悲しそうに歪めて、泣き出しそうになってしまった。
「あ、あれ?僕何か悪いことでも聞いちゃったかな?」
すると笹森君が「大丈夫だよ、麻美ちゃんここには麻美ちゃんをいじめる子はいないから、それにあっ君は悪気があって言ったんじゃないんだから」
「ごめんなさい。麻美ちゃん。僕変な事を聞いちゃったね」
麻美ちゃんは涙を拭いながら、買い出しに行くことになった。
そこで笹森君が「麻美ちゃん深呼吸をしよう」
すると麻美ちゃんは大きく深呼吸をして大分落ち着いてくれたみたいだ。
ここには思い出したくない過去の事を聞かれただけで泣いてしまう人がいるんだなあ~と僕は反省させられる。
麻美ちゃんは大分気持ちは落ち着いてくれたが、僕は罪悪感でいっぱいだった。
また謝ったら思い出してしまうんだろうな。
麻美ちゃんとはどのように接したら良いのか、僕は分からなくなる。
買い物の途中、麻美ちゃんは僕を怖がるように避けている様子だ。
どうしよう。僕の中で蟠りが止まらない。
このままだと僕がどうにかなってしまいそうだよ。
僕達は買い物を済ませて英明塾に戻った。
すると僕達の帰りを待っていた光さんが、僕に向かって「どうしたの?あっ君」
「べ、別に何もないですけれども」
「そうは見えないわよ。何か合ったでしょう」
この人はエスパーか、僕の心を読まれている感じだ。
「あっ君に社会人になるために、私からアドバイスをしておこう」
そういって光さんは僕の手を取って勉強室につれて行かれてしまった。
「あっ君は報連相と言う言葉を知っているかしら?」
「ほうれん草ってあの野菜の?」
「違います。報は報告の報、連は連絡の連、そして一番重要だと思う相は相談の相、これをしっかりマスターしておかないと社会人になって苦労するよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて言います。麻美ちゃんにどうしてこのフリースクールに来たの?って聞いたら、僕を避けてきたの、それで僕は蟠って」
「なるほど、麻美ちゃんは今まで辛いいじめに会っていたからね。その事を思い出すだけで泣いちゃう繊細な子なんだ」
「僕はどうすれば許してくれるの?」
「許すも許さないもないわ、麻美ちゃんにちゃんと謝ったんでしょあっ君の事だから」
「はい」
「だから許してくれるよ」
「そうですか?」
「そうですよ。まあ良く私に打ち明けてくれた。だから今日はみんなでカレーを食べましょう」
報連相か、その相談をして僕は本当に良かったと思えた。心に巣くう蟠りに苛まれそうに無いこととなった。
もし光さんが僕の心を読んで報連相を教えてくれなければ、僕は今日眠れない夜を送っていただろう。
本当に光さんは僕の女神様だ。
それとその女神様に僕は眼中にないんだろうな。
その事を相談するのは光さんにとって迷惑な話になってしまうから仕方がない。
とにかく今はみんなとカレーライスを作ることに専念した。
そうして麻美ちゃんとの距離が縮まり、今麻美ちゃんにジャガイモの切り方を教えてもらっている。
どうやら光さんの言うとおり僕は麻美ちゃんに許してもらったようだ。
これで良かったんだよね。
でも気になるな?どうして麻美ちゃんは過去の事を聞こうとすると涙を流すほどの悲しみに打ちひしがれてしまうのか?
麻美ちゃんの手首を見てみると、リストカットの後があるのが分かった。
きっと凄惨な事が過去に合ったのだろう。
それを本人から聞いたら、また先ほどと同じように、泣いてしまうのかもしれない。
仮に彼女の事を聞き出そうとしても、僕にはその悩みを解決してあげられないのだろう。
僕は人一人の悩みを解決させるには、相当な根気がなければ出来ないことを知っている。
だから僕が麻美ちゃんに出来ることは遠くで見守ってあげられる事しか出来ないのだろう。
僕達が切った野菜を炒めて、豚駒の肉を焼き、具材をカレーの中に入れていく。
とても良い香りがする。
そしてご飯も炊きあがり、カレーライスの出来上がりだ。
「みんな、カレーライスが出来上がったわよ」
先ほどまで悲しんでいた麻美ちゃんは言って、元気を取り戻してくれて僕は安堵の吐息を漏らした。
そこで僕が「光さんも食べて行ってくださいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
お米を盛り、その上にカレーを乗せて光さんに差し出した。
「うん。このカレーライスおいしいね」
そこで僕が「みんなの愛情を感じるよ」
そこで麻美ちゃんが「あっ君大げさだよ」
すると麻美ちゃんの瞳から笑顔のまま、涙を流してしまった。
「どうしたの麻美ちゃん」
「いいや、ちょっと目にゴミが入っただけだよ」
そう言いながら、食事を中断して、さらに光さんがその後を追う。
どうしたのだろう?
僕も食事を中断して、その後をこっそりと追って、二人は誰もいない勉強室に入って、僕は窓ガラスからその様子を伺っていた。
しっかりと防音設備が整った部屋で、音は聞こえないが麻美ちゃんは光さんに抱きしめられて涙を流している。
僕のせいだ。僕があんな質問をするから麻美ちゃんは泣いて、その涙も外には漏らさずに光さんの胸で泣いている。
その麻美ちゃんの涙は僕の胸にだけ押さえておこうと思う。
再び、調理室に入り、笹森君に「どうしたのあっ君」
「いやちょっと」
「麻美ちゃんが泣いていたのは俺のせいかな?」
高ちゃんが根拠もなく言う。
さらに他の生徒までが名前は覚えきれていないが、みんな自分のせいなんじゃないかと、落ち込み始めた。
僕のせいなのに何でみんなが自分を責めたりするのだろうか?
その後もおいしいはずのカレーライスはどんな味がしたか分からないほどに僕は落ち込んだ。
僕は麻美ちゃんを傷つけてしまった。
後でまた光さんに報連相を教わった事を言わなければならない。
カレーも食べ終えて、みんなどんよりしていた。
麻美ちゃんの件でみんな、心配している。
そこで麻美ちゃんは調理室に戻ってきて、みんなは「麻美ちゃん、俺何か悪いことをした?」「麻美ちゃん大丈夫?」等々、麻美ちゃんに根拠のない心配をしている。
「別に麻美は大丈夫だよ」
麻美ちゃんはにっこりとして何事も無かったかのように残ったカレーを食べ始めた。
僕は光さんの所に行き、「光さん。麻美ちゃんは僕のせいで泣いていたんですか?」
「いいや、違うよ。麻美ちゃんたまにあのように昔の事を思い出して泣いてしまう時があるんだよ」
「じゃあ、僕が麻美ちゃんの過去の事を聞いて、それで思い出したんですか!?」
「あっ君、とにかく自分を責めないで、君は彼女のことを知らなかっただけなのだから」
そう言って光さんは僕の腕を掴んで、「とにかく気にしないこと」と真摯なまなざしで僕に訴える光さん。
「僕、そろそろ帰ります」
みんなに挨拶をして、麻美ちゃんの事が気になり、麻美ちゃんにもさよならの挨拶をしたけれども、彼女は笑って見送ってくれた。
僕が外に出ると、さよならの間際に麻美ちゃんの笑顔を思い出して、気持ちが軽くなった感じがした。
そこで光さんが「あっ君帰るなら一緒に帰りましょう」




