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5、実演販売?

***石田視点***


わざわざ茶室までやってきたのに、そこでは個々の紹介はされなかった。

茶室としては広いのかもしれないが、11人も入るのには無理があるので庭に出ることになった。


歴史上の人物3人はカラーで俺たちの前に立ち、コンテナの開口部の前に立っている。

実感がわかない。東京裁判の映画俳優と似ていないのだ。

大川というのは東條の頭を叩いた人物らしいけど、そんなシーンあったっけ?

近衛って俳優がやってたんだ? 記憶にないぞ。

何にしろ違和感しかない。


今賀の奴はコンテナの奥から安っぽい折り畳み机を取り出して組み立てだした。

連れて来られた中で最年長の遠山――JAXAを定年退職して今は模型飛行機を趣味にしている男と、

その次に年長の金田、昭和島の町工場の社長だったらしいが、それが手伝っている。


そこまで重い物を持つわけではなさそうなので黙って見ていたら、

AK、PK、RPGというソ連製武器のプレゼンをやりだした。

機械加工の難易度などを説明しているが、3人が理解している様子はない。

大川はやたら感激して関係ない方向に話を広げようとするし、近衛は無関心。

東條は真面目に聞いてはいるが、ピンと来ない様子だ。


なんか近所のショッピングモールの実演販売を思い出す。

とりあえず300mmの装甲板を打ち抜くという説明をして、陸軍の関係部署で試験をするという話に無理やり持っていっている。

実演販売より強引かもしれない。


「図面と実物があるからって、今から生産工程組んで間に合うのかね?」

「わからん。NCの汎用工作機械とTIG溶接機は乗ってたが、1台じゃどうしようもないと思うけどな」

中田とヒソヒソ話をする。

銃身のライフリングとバネ、木製部品を除けばあの機械だけで作れると言っていたが、たった1台でどうする気だろう。


今賀はソ連製兵器の説明を終わらせると、今度はレーザーポインターを取り出してコンテナの中の物の説明を始めた。


次ははフラップタイプのチャッキ弁をステンレスのパイプに溶接した物に、

灯油バーナーを取り付けた物の説明をするようだ。

パイプラインの仕事を長くやっているが、見たことがない物なのでじっと見ていたら、

遠山という爺さんがエンジンだと説明してくれた。

何でも超大型のラジコンジェットを設計してくれと依頼を受け、

設計だけならと図面を描いたら、金田の工場で3台組んだらしい。

単なるパイプにしか見えないがパルスジェットといい、

1944年の今ならドイツが沢山作っているらしい。

コンテナの中のはそれより性能が良いはずと威張っていた。


今賀の説明は空回りを続けている。

製品として形をなしていないので、この時代の3人にはイマイチなのだろう。

今賀は「先ほどお見せした動画のミサイルに使います」とか言っているが、

この時代の人にミサイルの概念はあるのだろうか。


「ここまでご理解いただけましたら幸いです。ここからがお願いの本番、世界を変える物です」

説明が盛り上がらないことに苛立ったのか、今賀が大声を出した。

「梱包した箱の中にあるのが、先程の動画でご説明させていただいた新型爆弾です。戦争という概念を変え、誰も勝利者のいない状態にしてしまう兵器です」

「陸軍の、ある不愉快な男が『未来は瞬間戦争になる』と言っていたが、

それに影響を受けたヨタではないのか?」

「その説は知っていますが、発想は現実に追いついていなかったですね。説明したとおり、

全面的に使ったら終わりです。戦争ではなく破滅です。」

「脅しに使うつもりなのか」

「一度は使ってみせなければ、人類は理解できないでしょう。

限定的に使うことができ、たとえ恐怖による均衡だとしても平和をもたらせのは

今が最初で最後のチャンスです。

帝国の崩壊前に講和に持ち込むことができます」


今賀の言葉は敬語だったり現代語だったり、俺も知らないような専門用語が入ったりする。

歴史上の人物に通じているのか不安になるが、熱意だけは伝わっているようだ。

50ktの戦術核兵器の威力をタブレットの画面で説明し始めると、3人とも食い入るように見ていた。


とりあえず、プレゼンは終わりらしい。

大川という人が「神国日本が、」「アジアの大義が、」とか近衛に向けて話している。


この人、脳梅毒で少しヤバイと今賀が言っていたな。

距離を置いておくことにしよう。












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