表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

19.昭和20年2月3日

「大豆の特配というのは君が提言したのか?」

「私ではない。節分という行事に大豆を使うというのを今知った位だ」

「物知らずだな。枝豆は大豆、節分で投げるのは煎った大豆だ。覚えておくといい。

 もっとも最近は衛生的じゃないと個包装のナッツや

 殻付きピーナツを投げるらしいけどな。」

「この世界じゃまだそこまで言いませんよ。

 それどころか豆は歳の数だけ食べて、まくのは小石にしましょうという

隣組の回覧板が回ってくるらしい」

「小石?鬼役やったら血まみれになりそうだな」

「近所の寺じゃ反古紙を小さく丸めてたよ。配給された大豆は味噌や醤油にするらしい」

「俺の祖父母も自宅で味噌を作っていた。この時代の名残りかもしれない」


所沢の農家の離れに集まっているのは今賀の他、町工場の社長だった金田、JAXAを引退した遠山、

電気回路技師の三田の4人だった。

「節分の日に実験したのは縁起担ぎかな?鬼退治ではなく米軍退治を願っての」

「どうでしょう?確かにそう言う事を考えそうな人達ですが、時間に余裕が無いですから」

「時間がない、そう言われて一日も休ませてもらえなかったが実験は成功したんだろ?

 少し休ませてもらえないだろうか?」

「教授の口からそんなセリフが出るとは思いませんでした。数日も徹夜で点検するのが

当たり前とか言ってませんでしたか」

「教授呼びはやめてくれ。退職後Fラン大の名誉教授をやったが、やる気のない連中と

 かかわったののは黒歴史だ。それに古希を過ぎているんだぞ。疲れるのは当たり前だ」

「この時代の古希とは大違いの若さで、驚かれてましたね。」

「格好が若いだけだ。約束通り2機仕上げた。計画通り200km飛んで渡島大島に命中した。

 これ以上できる事はない。少し休ませてくれ」

「その旨軍関係者にも申し入れてあります。皆さまお疲れ様でした。」

「嫌にあっさり解放してくれたな。何か裏でもあるのか」

「まさか。これ以上の開発は戦争終結までに間に合わないので兵器開発は一旦やめるだけです。

 4月まで英気を養ってもらった後、戦後の経済発展のため皆様の知識をこの世界に広げて下さい」

「教員になれという話だったな。いつまで出来るかわからんがやらせてもらうよ。

 理解しようと努力する若者を導くのはやりがいがある」


日本は徐々に針路を変えていた。

この頃には大陸からの段階的撤退、資源も人も出来うる限り本土に持ち帰ろうとしていた。

満洲産大豆を持ち帰ったのはその副産物だった。

学徒を臨時の航空兵にするという無茶もやめていた。

連合国はその意図を日本本土の防衛力強化、占領地縮小と見て

各地で攻勢をかけてきていた。


「上の人もようやく江戸幕府程度にはなってくれました」

今賀の唐突な発言に他の3人は首を傾げた。

「江戸幕府ってなんだ?」

「ペリーが浦賀に来た時、江戸幕府があそこまで弱腰だったのは

 アヘン戦争を研究してたからです。強硬派が強い昭和の政府は

 江戸幕府以下の理性しかないんですよ」

「いよいよわからん。説明してくれ」

「食料問題ですよ。アヘン戦争の時、戦闘でカタが付いた訳じゃありません。

 運河を抑えられて食料を運べなくなった清が降伏したのです。

 江戸幕府がたった4隻に譲った理由もです。陸戦で負けるとは思って無かったけど

 海上交通を断たれたら終わりと考える理性があったからです」

「昭和の人はそうじゃないと」

「どこまで考えてたか不明ですけどね。

 産地に食料が有っても消費地に運べなければ意味がないんですよ。

 後のベトナムの様に武器が他国から流れ込むならともかく

 都市部の経済活動なしでは戦争継続できません。

 もっとも米軍も理解してなかったのか機雷戦が本格化するのはこの後です」

「何故米軍の機雷封鎖はおくれたんだろう」

「自分達は封鎖されても困らない国ですからね。

 あの国を交渉の場に立たせるためには2発目が必要なんですよ。

 救援にやって来た艦隊の目の前を飛んで爆発する二発目が。

 その爆発だけが停戦交渉に向かわせるのです」


拳を握った今賀が熱く語る姿をどうも胡散臭いと還暦を過ぎた3人が冷たく見ていた。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ