18.1945年1月31日
デポット飛行場に到着したミルバード・ハーモン陸軍中将(太平洋陸軍航空軍司令官)を出迎えた
カーティス・ルメイ 少将(第20航空軍)は不満たらたらだった。
「ワシントンの陸軍航空軍司令部(アーノルド大将)から直接私に叱責が来ましたが、
27日の損害は前任者の責任です。
改善策を進めている最中に余分な時間を使わせないでいただきたい」
「仕方ないだろう。76機中の21機が喪失、具体的な数は伝えていないが、損害が大きかったと本国のマスコミまで騒いでいる」
「ジャップに撃墜されたのは17機です。
しかも大半は途中の海上まで戻っており、4機はマリアナまで帰還しています」
「マスコミは派手な見出しが好きなんだ。二度と飛べなくなった機体は喪失として派手にあおる」
「我々に責任があるような書き方は納得できませんね。硫黄島さえあれば損害は半分以下、
海軍とロバート・リチャードソン中将(太平洋陸軍司令官)の責任ではありませんか」
「責任について今は議論しないようにしよう。誰も君の責任を問わないよ。
君は君の役割をしてくれれば良い。硫黄島については既にスケジュールが進んでいる」
「了解しました。今回の件で沈み込んでいる連中の尻を蹴り上げて焼夷弾を運ばせます。」
異世界からの介入は日本側の迎撃効率を劇的に上げていた。
レーダー網、無線通信、統合指揮。諸般の事情で機能していなかった物が
機能しており一部は劇的に性能が上がったからだ。
一方で米側の警戒心も最大レベルまで上げていた。
前年からの高高度精密爆撃の効果は到底満足できるものではなく、
高価なB-29と熟練搭乗員を大量に失う事は許される状況ではなかった。
米軍は既に都市部への無差別爆撃という戦争倫理的には極めて問題のある、
米軍自らが欧州の英軍をそう評した事さえある手法(作戦/戦術)に転じようとしていた。
今回の大損害はその動きを一層早く確実にしてしまったのかもしれなかった。
少なくともカーティス・ルメイ 少将の日本人の非戦闘員をなるべく多く殺すという決意を
補完する事にはなっただろう。
「南北戦争の終わり方?なんだそれ」
月末の連絡がてら中島飛行機にやって来た今賀の言葉に金田が反応している。
「相手の国が過去の戦争でどんな風に戦ったか、終わらせたかを調べれば
次の戦争でどうすれば良いかわかる。米国の場合は南北戦争だ」
「どうやって終わったんだ?」
「北軍は焼き討ちで相手の経済力を奪った。目的の為なら女子供非戦闘員に対する暴行までやった
逆に南軍は負けが確定した後も抵抗を続け、そこまでされるまで戦争をやめなかった」
「という事は?」
「連中、日本を焼き払おうとするだろう。それが戦争の終わらせ方だと思っている」
「おっかないし、勿体ないね。折角作った物を焼いてしまうなんて。
職人の俺は作った物を壊されると悲しくなるよ」
「愛情を込めれば機械が応えてくれるんでしたっけ」
「馬鹿にされる事もあるがね。子供の頃から機械と関わっていると本当にそう思うんだ」
折角据え付けた武蔵製作所から移される事になった工作機械の梱包を撫でながら
金田が答えると今賀が肩をすくめた。
「日本人の民族性ですかね。何にでも魂がある」
その動作と話し方に違和感を覚えた金田だったが、
気になっていた事を質問してみた。
「日本は、この戦争はどうなるんだ?」
「明治維新ですね。」
「どういう事だ」
「誰が決断したか、ハッキリわからないまま有耶無耶に終わり
元の話と違うような気がするけど皆それに従うという事です」
「なんか滅茶苦茶だな」
「民族性なのかもしれませんね」
今賀の表情は全く変わらなかった。




