魔王様と破眼の魔王①
魔王は言葉の通り魔族の王なので、突然そこに押しかけたりしない。きちんと事前アポは撮っている。
アレストの過ごしている屋敷に辿り着いた私達は。滞りなく彼の元へと案内された。まぁ同行者の半数が人間なのでちょっと不思議そうな目で見られたけど。いや、それもちゃんと事前に伝えってあったけどね?
そうして私達が連れていかれた場所は立派な建物……ではなく、様々な植物が鬱蒼と生い茂った植物園だった。
「アレスト様はこちらの中のガゼボにおられます。リン様が以前いらした時と場所は一緒ですが、ご案内は必要でしょうか?」
「いいえ、覚えてるから大丈夫よ。ありがとう」
そう答えるとここまで私達を案内してくれた侍従は頭を下げて、植物園の入り口の辺りにある小屋の方へと向かって言った。……私達が戻るまでここで待つ気なのかしら。まぁいいわ。
「それじゃ行きましょうか」
後ろで待つ皆に声を掛け、アーシェと並んで先頭に立って歩き出す。今回は全員一緒だ。
事前に連絡した時に人数は絞る事も話したけど、当人の方から問題ないしなんなら聖王国の聖騎士はあってみたいねという返答が来たので、だったらとこちらも遠慮せずに全員連れていく事にした。アレストは好奇心が強いタイプなので、深い思惑はなく本当に興味だけだろう。そういう意味では人間にしては強力な魔力を持つフレアや無効化の力を持つユキにも強い興味を抱いていそうね。
「……あの侍従はついてこないのね?」
私達のすぐ後ろを歩いているシェリーがそう声を掛けてくる、ちなみにフレアはその後ろでユキとアヤネに両手を握られていた。ここの植物園いろいろな珍しい植物もあるから、多分ふらふらしそうだと思われてるわね、コレ。
まあそれはおいておいて、私はシェリーの声にこたえることにする。
「アレストは外部の人間と会う時は大体一人なのよ」
「……それだけ自分の力の自身があるということかしら?」
「それは勿論あるけど、一番の理由は巻き込まないためね」
「巻き込む……?」
「まぁ後で話すわ」
そういやアレストの能力の話とかしてなかったわ。別に戦いに来たわけじゃないから問題ないけどね。
そのまま1分くらい様々な植物の間を歩くと、、やがて開けた場所に出た。その場所の中央にはかなり大き目で立派なガゼボが立っている。そしてその中に、白髪の人物が一人座っていた。
魔力で感知していたんだろう、その人物は顔を上げてこちらの方をすでに向いていた。ただ、その視線はこちらに向いていない。いや、その視線はどこにも向いていない。何故ならその瞳の部分は撒きつけられた黒い布で隠されていたから。目隠しを着けているのだ。
「え、アレ……」
シェリーが怪訝そうな声を上げるけど、私とアージェは特に気にする事はなく青年に近づいていく。そうすると青年はゆっくりと立ち上がりこちらを迎え入れた。
「やぁ、リン、アージェ。二人とも久しぶりだね?」
「私は大分久々だね。リンはもう少し最近だよね?」
「そうね」
まぁこっちも年単位ではあるけど。
ちなみに私、というか魔族の上位の人間なら誰でもできると思うけど、目をつぶっていても魔力による感知で周囲の状況は把握できる。勿論その分魔力は消費するけど、彼は魔王の中でもトップクラスの魔力保有量を持つのでなんてことはないだろう。
「アレストは、相変わらずここに入り浸っているのね」
「本を読むのにはここが一番適しているからね……まぁたまにやらかしてしまうこともあるけど、部下達を巻き込むよりはマシだろう?」
「まぁそれはね? ……どうしたの、フレア」
ふと気づくと、隣でフレアが首を傾げていた。彼女の視線はアレストの方に向いている。
私に声を掛けられると私はやアレストの視線(見えてないけど)が自分に集まっている事に気付いたフレアがわちゃわちゃと両手を振る。
「あ、何でもありませんわ! 申し訳ないですわ……」
申し訳ないと思うような事を考えていたのかしら、フレアがそんな事を考えるとは思えないけど。
「どうしたんだい、お嬢さん?」
「何か気になる事があるなら、口にしても大丈夫よ? アレストはそうそう怒ったりしないから」
私の言葉にアレストは苦笑いを口元に浮かべるが、事実である。アレストは魔王の中でも一番温厚な性格をしており、敵意を向けられない限りは攻撃的な態度をとってくる事はまずない。
私の言葉にフレアは私を上目遣いにみて、アレストを見て、もう一回私を上目遣いにみてから、彼女にしては元気のない声で問いを口にした。
「その、単純にここでやらかしてしまう事って何なんでしょうって思っただけですの……」




