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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
三章 スウィート・トーク

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第61話「ラスボス 5」

「……」


(あの感じだと、ミルフィーはそう長くは持たないな……)


 大助の視線が限界ギリギリの状態で足止めを続けるミルフィーの姿を映す。


(いや、あれはあれで十分だ。不確定要素を時間限定だが排除できた事こそが上々。やはりあいつは「使える」)


 大助がゆっくり十手を正眼に構え半身を後ろに下げる。


「さてと…そんじゃ、そろそろ最終ラウンドと行こうか?」


「ふん。言われなくとも理解している」


 シュガーが全ての防具を解除。予備の剣だけを手に最も身軽な戦闘スタイルへと移行する。


(そうさ。このゲームの本質は「殺し」じゃない。相手を完膚なきまでに打ちのめし負けを認めさせる事こそが重要だ。言い訳の仕様が無い程の致命的な1撃。そいつを決める必要がある)


「「…ふっ!!」」


 両者が前に踏み込む。互いに1撃。ただ1撃を与えれば勝敗が決まる。故に両者共に確実に致命傷を叩き込める近接戦を選ぶ。


「___‘トランスファレンス!!‘」


「っ……」


 シュガーの詠唱。そして雷鳴と共にシュガーの姿が掻き消える。


「……」


(発動に詠唱や何らかのアクションが必要な技。つまり理不尽をこちらに押し付けてくる類の魔法というところか)


「さてと…」


 視覚情報だけでは対処困難。そう判断した大助が聴力と勘を頼りに攻撃が繰り出される前に回避行動を起こす。


「なっ!?」


「あっぶねえなぁ……」


 背後に回り込んでいたシュガーの突き技を上半身を逸らし躱す大助。


「逃がすかあああ!!」


 回避後の硬直。それを狙いシュガーが追撃の前足蹴りを繰り出す。


「おりゃああ!!」


「ふっ!!」


 その蹴りに大助も蹴りを重ねる事でガードする。


「ちっ…!」


 衝撃を緩和。それどころか逆に力を利用し大助が大きく距離を取る。


「まだだ!!仕切り直しなんぞさせはしない!!」


 シュガーの両腕が巨大な竜形態へと変化する。


「___‘ライトニング・エッジ!!‘」


 居合切りに近い所作から次々と極大の爪の斬撃が大助の回避地点を狙い叩き込まれる。


「ったく…何でも有りだなぁおい!?」


(予測3、直感7て感じか?一番面倒だな…)


 迎撃は不可能。一度でも足を止めた瞬間に直撃を喰らうと判断した大助が全速力でシュガーの元へと走る。魔力の「ON」「OFF」を繰り返し予測困難な動きへと行動を変化させつつ急速に接近。再びインファイトに突入する。


「「ふっ…!!」」


 互いが武器を片手に持ったままでの接近戦。拳。そして隙を狙い繰り出す武器の応酬でも決着は付かない。


「ならば…これでどうだ!!」


「ぬっ!?」


 痺れを切らしたシュガーが無理やり突破口を開こうと尻尾を使い攻撃を仕掛ける。ギリギリで尻尾攻撃を弾いた大助。だがそこで僅かな「隙」が生まれてしまう。


「くははははっ!!ゲームオーバーだな!!___‘トランスファレンス!!‘」


 シュガーの体が再び雷光のように掻き消える。


「…ふううううぅ」


 大助が少しだけ重心の掛け方を変更する。


(スウェーでの回避を見られた以上同じ手は無理だ。対策されて今度こそ1撃を喰らっちまう。…ならばどうする?答えは簡単だ。殺られる前に殺ればいい。狙うべきは後の先。つまりカウンターだ)


 回避ではなく、攻撃のために大助は意識を集中させる。


(目で追うな。それだと対応できない。攻撃を誘導しタイミングを絞り込め)


 シュガーの気配。それとほぼ同時に背中越しに大助は十手を付き出す。


「いっ…!?」


 頭部を正確に狙った突き技をシュガーは慌てて剣を切り上げる事で回避する。


「そうは…させるか!!」


「…甘いな」


 距離を詰めさせないと牽制で振るわれた甘い剣。それを弾き間合いへと踏み込む大助。再び手元で十手を回転させ必殺の一撃を決めに掛かる。


「さあさあさあ!!躱して見せろよ!!」


「…っ!!」


 シュガーの喉元を狙い繰り出された突き技。それを上半身を逸らす事でシュガーが回避。


「ふんっ!!世迷言はそこまで……」


 シュガーの視界。そこには大助の姿が映っていなかった。何処に?その思考と同時に聞こえる背後からの爆発音。本能的にシュガーの視線が背後を向いてしまう。


(警戒心ってやつは長くは続かない。特に危険を回避したと勘違いすると猶更な)


 投擲後、あえて不発の状態で地面に転がっていた封が巻かれた十手。それを使用した一度限りの視線誘導。極々単純なトラップ。いや、だからこそこの場面では「最適」なのだ。


「ぐっ…!?」


 認識外から打ち込まれた顎を狙う肘打ち。それにより手前に傾いたシュガーの軸足を大助が足で刈り取る。シュガーの右腕橈骨筋と上腕筋の上に十手を差し込み関節を固定。そのまま体を地面から空中へと投げ飛ばす。そして鮮やかに宙を舞う少女の腕を引き戻し地面へと叩きつけた。


「ぐっああああ!?」


 痛みは無い。だが確実に「決められた」という感覚がシュガーに声を上げさせていた。


 その技は十手術の基本にして奥義。相手の体重を奪い制圧する古くからの捕縛術。


「十手術、左入り身ってな…」


 シュガーのライフカウンターが砕け散り、表示が0になる。そして目の前にデジタル調の大きなメッセージが表示された。


★勝者 金本大助


 唖然とした表情を浮かべるシュガーの前に、楽しそうな表情を浮かべた大助が手を差し伸べる。


「さてと、…俺の勝ちだ。文句はないだろ?」

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