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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
三章 スウィート・トーク

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第60話「ラスボス 4」

「…そろそろじゃないか?妹よ」


「うん。頃合いだと思う」


 シュガーが所有している「魔剣」メイドの2人が金本大助の抹殺を狙い動き出そうとしていた。


「___‘待ちなさい‘」


「「…っ!?」」


 当然、そんな不穏な行動をミルフィーが見逃すはずがない。魔力を込めた声と同時にメイド達に強力なデバフが強制的に降りかかる。


「ミルフィー・ユピス……目障りな羽虫だ」


「邪魔をしないでくれる?…このクソ妖精」


 約2秒の硬直の後、一瞬で距離を詰めたメイド達がミルフィーへと剣を振り下ろす。


「…っ___‘コンバージョン モードブラックドッグ‘」


 ミルフィーが声による操作魔法を中断。自分自身を対象にした魔法へと切り替える。魔法の発動に「成功」したミルフィーの姿が異質なモノへと変化していく。


「むっ…!?」


「おっりゃああああっ!!」


 1対2での正面戦闘では圧倒的に不利。そう判断していたミルフィーが手前の気が強そうなメイドへと蹴りを叩き込み無理やり距離を取る。


「じょ…冗談じゃないわよほんと……」


 金本大助からの事前オーダーがなければミルフィーは間違いなく正面戦闘をしようとは思わない。それほどまでにこの2人のメイドは厄介なのだ。


「どうやら面倒な魔物の力を身に纏っているみたいだな」


「妖精と言うよりも悪霊みたいね」


 ミルフィーの魔法、コンバージョンは特殊な魔法だ。「取り込んだ」「魔物」の「力」を「装備」として身に纏う事が出来る。ただしこの魔法が「成功」する確率は70%。失敗する可能性もある。故にこの魔法はミルフィーにとって非常手段に近い。


「うるさいわね!‘妖精の私が妖精の力を身に纏って何の不都合があるってのよ?‘大体、あんた達だって本体はその‘見窄らしい魔剣でしょ?‘…‘私から見ればあんた達の方がよっぽど悪霊に見えるけど?‘」


ミルフィーのその異様な程耳に残る挑発に姉の方のメイドがブチ切れる。


「み…見窄らしい…だと?……良い覚悟だ。じゃあお望み通り今すぐに焼肉にしてやもごごっ!?」


「ラビカ姉さん落ち着いて…「言霊」に当てられたら相手の思う壺」


 妹メイドが「馬鹿正直」にミルフィーへと返答しようとしていた姉の口を無理やり「閉じ」させる。


「ミルフィーからの「魔力」が込められた「問い」には答えちゃダメ。たぶん3回くらいで肉体のコントロールを持ってかれる」


「……」


(姉のラビカは強いけどアホだから初見殺しで体を操って同士討ちさせるつもりだったけど、やっぱ妹のネフォラがいると無理か。2人揃うとマジで面倒なのよね…)


 ラビカとネフォラはシュガーが所有する意思を持つ魔剣だ。自立行動が可能で戦いにおける遊撃の役割を担っている。だが肝心の主人が怠け者なので雑務や書類仕事が本業と化しているのが悲しい実状だ。


「むぅ…と、とにかくだ。黙ってあの羽虫野郎をブチ殺せば問題無いんだろう妹よ?」


「うん。…これ以上余計な口を開かせるわけにはいかない」


(金本からは相手を殺さず無力化しろとか言われたけど、無理ゲーてやつじゃないこれ?…まあ、あいつならきっと「だからこそ面白い」とか絶対言うんだろうけど)


 ミルフィーが余計な思考を打ち切り戦闘に全神経を回す。そうでもしなければこの姉妹の相手をする事は出来ないのだ。


「…上等!二人まとめてかかって来なさい!!とにもかくにも金本大助の邪魔は絶対にさせないわよ!!」



「くたばれ…!!」


 シュガーが振り下ろした斧が大助の頭部を砕く。


「…いいね」


 大助の十手がシュガーの頭部を弾き飛ばす。


「ぐふっ…!?」


 頭部を失った状態のシュガーが右腕で大助の心臓を貫く。


「…っ!!」


 お返しとばかりに大助が振るった右ストレートがシュガーの心臓を破壊する。


「……っ……ぐうっ……はぁ…はぁ…はぁ…」


「ふう…。まったく。治ると分かっていても気持ちが良いものじゃあないなぁ?だがこの感覚は良い。すごく良い。命を懸けたやり取りを4回も楽しめるんだ。ゾクゾクしてくる」


 大助とシュガーの破壊された部位が高速で修復されていく。


■金本大助 残りライフカウンター 1


■シュガー・カフェリア 残りライフカウンター 1


「はぁ…はぁ…はぁ……」


 シュガーの再生した顔に映っていた表情。それは恐怖だ。「安全」が「約束」されている状況であっても「死」に繋がる攻撃は本能的に恐ろしい。恐怖に飲み込まれるのは当然の話だ。その様子を大助は楽し気に「観察」していた。


「おいおいおい。なんて面白い表情をしてるんだよ。…ここからだろ?ここからが最終局面だ。…さあ、思う存分楽しもう」


「…ふん……おまえを見ていると、人間と言う存在が怖くなってくるな……」


「……」


「だが舐めるなよ人間!私は最後まで諦めないタイプなんでな!!使える物は何でも使う…というレベルではないが、負けるぐらいなら使うぞ!!___‘アロカシア‘」


「んっ!?」

 

 背後にいつの間にか出現していたシュガーの両手斧。それを大助の両目がギリギリで捉えていた。


「ふっ!!」


 それを十手で無理やり弾き飛ばす大助。


(今まではとはパターンが違う攻撃。何か切り札を使ったな)


 無理な力を加えた影響で十手はヒビ割れ使いものにならなくなる。壊れた十手を破棄しすぐさま大助は予備の十手を倉庫から引き抜く。約0.5秒の隙、それを見逃さずシュガーが力強く斧の間合いへと踏み込んだ。魔力の大部分を武器へと集中させた「シンプル」な「暴力」。それ故に対処は難しい。


(……)


 正面から普通に受けてはマズい。そう判断した大助が十手を手元でコンパクトかつ高速に「回転」させる。


(回転の力、重力、そこに魔力を纏わせるだけでいい)


 地面がひび割れる程の踏み込みと共に、大助が回転する十手をシュガーの斧へと叩きつける。


「「ぐっ…!!」」


 蒼色に昂る十手と白雷の斧が衝撃で粉々に粉砕される。両者共に手にしていた武器が破損したタイミングで後方に大きく距離を取っていた。


「……」


(「裏打ち」でも仕留めきれないか…)


「ゲホッ…馬鹿な…あの小さな武器の何処にこれ程の力が……」


 短刀類の武器には「裏打ち」と呼ばれる技術がある。回転の力とタイミングを合わせる事で「部分的」かつ「一瞬」ではあるが、「真剣」での「抜刀」に匹敵する威力を出す事が出来るのだ。

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