第5話「放置モード 2」
<放置モードでは保有しているコイン数に応じてお助けモンスターが様々なアクションを起こします。コインの残数には注意しましょう>
(このコインってのはあれか?ゲーム内独自の通貨とかそんな感じか)
アプリ画面をホームに戻し、機能の確認を始める大助。
(右上に表示されてる数字がコインの残数だな。確か植物を作るたびに増えるんだよなこれ。…つまり、植物を育てまくってコインを稼ぎ、設備を充実させる。そういうことか)
「…お?」
コインの残数が減少する。気になった大助は再び放置モードを起動した。画面内ではモブ・ラビットが地面に座り飲み物を飲んでいる姿が見える。
「なるほど。こんな感じでも使われるのか…」
コインはモンスターの休憩物資や雑費などにも使われる。その事を理解した大助は満足そうに頷くとアプリを落とした。
「…そういえば腹が減ったな」
昼飯を食べていなかった事を思い出し、大助は冷蔵庫に向かう。そして中から冷凍パスタを1つ取り出す。
「ふむ…」
(ついでにこいつの味見もしておくか)
スマホの倉庫メニューから、大量生産したラルメン王国の雑草を取り出し、冷凍パスタと共にフライパンにぶち込む。中火で加熱すること数分。部屋には香ばしい匂いが充満し始めた。
「なる程、これならバジルの代用として十分に使えるな」
皿にパスタを盛りつけ、雑草の実食が始まる。
「モグモグ…ふむ……」
「ん~…ちと苦いな。だが普通に食べられる。原価0という事を考えれば最高の結果だな」
大助はそのままモグモグパクパクとパスタを食べ続け、完食した。
「…ふう。ごちそうさまでした」
「……」
「やっぱりいいね。結果が分からない目的があるってのは…」
放置モードが解禁されてから3日が経過した。そして今日も大助は雑草を育て続ける。
「ふおおおおお!!」
ただひたすらに画面をタップする大助。栽培レベルを上げるにはひたすら草を育てるしか方法はない。故に大助はただただ無心に草を育て続ける。そしてついに大助が待ち望んできたメッセージが表示された。
<おめでとうございます。栽培レベルが4に上がりました>
「いいねいいね~」
(さあさあ。今回はいったい何が起きるんだ?)
<育成可能な植物のリストが増えました>
「おお?」
(そろそろ新しい草を育てたいと思っていたんだ。こいつは嬉しい)
<売買機能が追加されました>
「…売買?」
アプリのホーム画面に戻り、ショップ画面を開く。すると今まで表示されていなかった売買という文字が追加されていた。
「…ふむ」
売るメニューを開くと、倉庫に保管されているリストが表示された。
「お…?育てた植物を売れるのか。これは助かる」
大助が暇な時間を全てアプリに注ぎ込んだ結果、雑草の在庫数は恐るべき数になっていたのだ。
(正直余り過ぎて困ってたんだよな…)
雑草サラダ。雑草ジュース。雑草サンドイッチ。大助は様々な雑草料理を試していた。それでも有り余る在庫の使い道には頭を悩ませていたのだ。
「…なるほど。レートは1つ1コインか。後は商品のラインナップ次第だな」
1本1円相当。労力に見合うかどうかは微妙なラインだ。だが今の大助にはこのレートが高いのか低いのかを判断することはできない。
「とりあえず、不要な分は売っておくか」
不要な雑草を全て売却。合計で1000コインを大助は獲得した。ショップのメイン画面へと戻り、購入メニューを開く。ズラッと購入可能な商品が画面に表示された。
「おお…結構色々な商品が売ってるんだなぁ……」
商品画面は雑貨道具のような物が大半を占めていた。パンやチーズなどの日本食も販売されていたがやや割高な設定になっている。
(食料品は後回しでもいいか…ああ、いや、あのウサギちゃんへの差し入れとしてはアリか)
「まあ、それは追々考えるとして…おお?これなんか面白そうだな」
大助の興味を引いた商品。そこには低級ポーションという商品が表示されていた。
「いいね~実にファンタジーな感じだ」
・低級ポーション 価格1000コイン。
最低品質のポーション。軽度の傷を回復させる事ができる。
(よくあるゲームの回復薬そのまんまだな)
「…ん~…どうするべきか」
(他に欲しい物なんてないしな。…買っちゃうか?いや、買うしかないよな)
1000コインを消費して、大助は低級ポーションを購入した。
次の瞬間、スマートフォンの画面から丸い瓶がポンッ!という音と共に飛び出す。
「むっ!?」
反射的に中空に投げていたスマートフォンを左手で回収し、落下するポーションを右手でキャッチする大助。
「危ねえ…この飛び出す演出は見栄えはいいが実用性0だぞ」
「……ふむ」
(これがポーションか。…低級だから品質は良くないってところか?)
瓶の中には緑色の液体が入っていた。心なしかかなり濁ったようにも見える。ポーション瓶をクルクルと回しながら細部を確認していく大助。
(見た目はワイン瓶を小さくしたような形だな。ビンの先端部分にコルクが刺さってる。普通に考えればこれを抜いて使えというところだが)
「ん~…」
大助は2つの使用パターンがあると考えた。1つ目は中身の液体をぶっかけて使う方法。2つ目は直接飲むという方法だ。
(とはいえ、現状ポーションを使うような「用事」は存在しないんだよな……)
「…まあいいや。とりあえずこいつはどこかに保存しておいて……ん?」
(というか、これを現実世界に保管してたらヤバくねえか?)
賃貸物件は水道業者や内装業者の出入りなどもわりと頻繁に発生する。そこで秘密が露見する可能性も0ではない。
「……」
(そもそも正しい保存方法なんて知らねえぞ。適当にポンと置いとけばいいのか?)




