第11章 戦いと浄化
天井の上から、見慣れない武器を手にしたローブ姿の者たちが、悪魔とヴェクタ教の信者たちへ一斉に襲いかかった。イザウたちにとっては未知の武器だったが、その威力は明らかだった。ハンベルスは頭部を撃ち抜かれ、その場で絶命する。信者たちは恐怖に駆られ、ヴェクタリウムから我先にと逃げ出した。
悪魔たちもまた、絶え間ない攻撃に押され後退していく。やがて白いローブの者たちが降り立ち、イザウたちを救い出した。
「助けてくれてありがとう――」
イザウが声をかけるも、その人物は何も答えず、ただ無言で彼を祭壇の裏へと導いた。
「みんな無事か!? 怪我はないか?」
「うん、大丈夫だ」
ルシは弱りきった祖父に駆け寄り、その体を抱きしめた。
「泣くな、ルシ……わしは大丈夫じゃ」
「よかった……みんな無事で……」
イザウは胸を撫で下ろす。
白ローブの人物がフードを外した。その瞬間、イザウは目を見開いた。
「……女の人!? あ、あの……助けてくれてありがとう」
「礼は後。今はあの悪魔たちを片付けることに集中して」
そこへ、黒に白い線が入ったローブの人物が現れ、フードを外す。イザウはさらに驚いた。
「お前……あの武器商人!?」
それは、ヴェクタ教の拠点を探していた時に出会った男だった。
「サヤミ(Sayami)、全員の救出は完了したか?」
「うん、全員無事」
「よし。攻撃班に合図を出して、殲滅に入る」
「……気をつけて、ユスフ(Yusyuf)」
男――ユスフは頷き、その場を離れていった。
「えっと……一つ聞いてもいいか?」
イザウが手を挙げる。
「今この状況で?」
「難しい質問じゃない」
「はぁ……何?」
「君たちは何者で、どうして俺たちを助けた?」
「私たちは反悪魔組織よ。私はサヤミ。さっきの彼はユスフ、私がスパイ任務を与えていたの。あなたたちを追跡していたのも彼よ」
「じゃあ、あの時つけてきてたのは君たちか……気づいてはいたけど、ヴァークを感じなかったから無視した」
「当然よ。私たち“地球人”はヴァークを持たないから」
「地球人……初めて会った。噂通り、すごい発明をする種族なんだな」
ソラが興味深そうに呟く。
その時、白ローブの者たちが続々と内部に入り、悪魔へ銃を向けて発砲した。
「なんだあの武器……滑稽だな」
サイリンは嘲笑し、虚無の雷撃で彼らを吹き飛ばす。
「くっ……銃じゃかすり傷程度か……」
「銃? それ何?」
イノリアが首を傾げる。
「地球の武器よ。弾丸を飛ばすの」
「へぇ……すごそうだけど、威力は微妙だね」
その後、ユスフが戻り、攻撃隊が壊滅したことを報告する。
「武器商人、助けてくれて感謝する。でもあの悪魔たちはその武器じゃ倒せない。次は俺の番だ」
「武器商人って呼ぶな……俺にはユスフって名前がある」
「はは、最初はもっと怪しい奴かと思ってたけどな」
「どういう意味だそれ……」
「イザウ、無駄話は後。サイリンはあなたが倒して。私とソラで他を抑える」
「了解!」
「私たちも援護する。囮くらいにはなるはず」
「イザウ……」
「トロマン爺さん、どうした?」
「……耳を貸せ……」
かすれる声で、トロマンは戦術を語る。
「サイリンは目がない。ヴァークで敵を感じている……ならば、お前のヴァークを消せ。そして至近距離で一気に解放するんじゃ」
「なるほど……ありがとう爺さん」
イザウは頷き、サイリンへと向かった。
その間、ソラとイノリアはスケクメス、サメス、クリナクスと対峙する。
――激戦が始まった。
イザウは助言通りヴァークを抑え、至近距離で解放する戦法をとる。サイリンはそれに対応できず、連続して攻撃を受けた。
一方、ソラたちは苦戦していた。
クリナクスは霧のようなヴァークを操り、実体が掴めない。
「攻撃が当たらない……!」
「霧のヴァーク……火と水の融合か」
視界は遮られ、攻撃はすり抜ける。だが敵の攻撃は確実に当たる。
「……動きが円を描いてる?」
氷壁に刻まれた傷から、イノリアは気づく。
「ソラ、周囲を高速で回れる?」
「任せて!」
ソラが高速移動で追跡し、本体を発見。
「イノリア! 本体はこっち!」
雷撃と氷の連携――ついにクリナクスを拘束する。
サヤミとユスフが目を撃ち抜き、ソラの雷撃が頭部を粉砕した。
再生するも、心臓――紫の結晶を破壊され、クリナクスは塵となって消えた。
「やった……!」
「これが悪魔の核……」
その頃、イザウは追い詰められていた。
サイリンの猛攻に倒れ伏す。
とどめの一撃――その瞬間。
巨大な樹の怪物が立ちはだかる。
「……爺さん!?」
「助けに来たぞ、イザウ」
トロマンは樹の巨人へと変貌していた。
「武器の場所がわかった!」
「行け。時間は稼ぐ」
イザウは投げ上げられ、時計塔へ。
内部で巨大な振り子を発見する。
――それは双刃の斧だった。
鎖と共に腕に巻き付き、ヴァークと同調する。
「これが……伝説の武器……!」
再び戦場へ。
斧を操り、サイリンを圧倒する。
「心臓を狙え!」
イノリアの声。
胸を裂き、核が露出する。
「これで終わりだ――!」
しかしその瞬間、スケクメスが攻撃を弾く。
サメスも現れ、サイリンを回収。
「残念だったな、小僧」
「また遊ぼう」
彼らは闇へと消えた。
サメスとスケクメスはサイリンを連れてその場を離れた。イザウは追いかけようとするが、トロマンがそれを制した。
「追うな、イザウ。今のお前では奴らには勝てん……次の機会を待つのじゃ」
「くそ……あと少しだったのに……最初の一撃が甘かった……」
――戦いは終わった。
ホトヤの街での大戦から二日が経過した。イザウたちは治療を受け、戦いで負った傷も徐々に癒えつつあった。
イザウはイノリア、ソラと共に、残された伝説の武器を探す旅を続ける決意を固める。一方で、トロマンとルシは同行しないことになった。体の状態もあるが、トロマンはホトヤの孤児院を引き継ぐことになったからだ。そこにいた子供たちは、かつて宗教儀式の生贄として扱われていたのだった。
トロマンはまた、街に蔓延していた信仰を正し、住民たちをヴェクタ教から解放した。そして人々と共に、戦いで破壊された街の復興に取り組み始めていた。
ルシはこれからもトロマンと共に生きていく。彼女はすでに、自分の父がホトヤの元指導者であり、トロマンがその護衛だったことを知っていた。悪魔の襲撃の際、彼女はトロマンに託されていたのだ。
両親を失った今でも、ルシにとってトロマンは本当の家族だった。
「じゃあ、爺さん……そろそろ行くよ。俺たちは残りの伝説の武器を集めて、悪魔を倒して、ソラの父親を救って……元の次元へ帰る方法も見つける。それに――アトロクスが次元の牢獄から出てくるのも止める」
「世話になったな、爺さん。本当にありがとう」
「ルシも元気でな。また必ず会おう」
「うん……!」
ルシはソラとイノリアにぎゅっと抱きついた。
サヤミとユスフたちも別れの挨拶を交わし、地球人の集落へと帰る準備をしていた。
「なあサヤミ……地球人の集落ってどこにあるんだ?」
「ここから三日くらいの距離よ。あなたたちはこれからどこへ行くの?」
「サリヴの街(Saliv city)に向かう」ソラが答える。
「それなら、私たちの集落にも寄っていかない? ちょうど同じ方向だし」
「いいのか? それはありがたいな。噂に聞く“創造者たちの村”……楽しみだ」
「そんな大した場所じゃないわよ。ただの集落(Earthling settlement)よ」
「えっ……何もないのか……? ところで“工場”ってなんだ?」
「もう、イザウは本当に質問が多いんだから!」
ゴンッ、とイノリアの拳がイザウの頭に落ちた。
そんなやり取りを交わしながら、一行は地球人の集落へと向けて歩き出した。




