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ドリル魔法使い転生 【土魔法しかない世界に“ドリル使い”とかいう環境破壊能力者が現れて界隈がざわついてる】  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1部 人食いドリル編

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第8話 ラファの土人形戦1・地母神級

 突如として上空を横切った巨大な飛行物体。それはトンボのようなシルエットをしていた。


「あれは星喰(ほしく)いか!?」


 俺は反射的に走り出していた。瓦礫(がれき)を蹴り、路地を抜けると、ひらけた視界の先に煙が見えた。


 魔法兵団が展開している。土が隆起(りゅうき)し、鳥の形をした土人形が空へと舞い上がり、トンボに襲いかかっていた。だが。


「効いてないな」


 土の鳥は紙飛行機みたいに弾き飛ばされて空中で砕け散る。トンボは悠々(ゆうゆう)と羽ばたき、まるで子供が砂の城を壊すみたいな雑さで蹂躙(じゅうりん)していた。


 兵士たちの声が飛び交う。


「おい、あれは星喰いか!?」


「いや、見たことあるぞ……! たしかあれは“ラファ様”の土人形……!」


 ラファとは、この風の都を守る土魔法使いだ。階級でいえば最上位の“地母神(ちぼしん)級”、つまりレベル6。五人しかいない化け物の一角だ。


 簡単に言うと、本気を出したらこの街の地形が書き換わるくらい強い存在。


 そんな奴の土人形が街を破壊している。


「なぜラファ様の土人形が暴れている……!?」


「乱心か、暴走か……とにかく団長のもとへ急ぐぞ!」


 団長か。魔法兵団団長でプライドが高いライオン顔のアイツのことだろう。


 敵が地母神級の土人形だとしたらレベル4である霊峰(れいほう)級の団長では分が悪い。階級一つ違うだけで実力が天と地ほど差があるといわれているからだ。


「行くか」


 俺は賞金首になりたてだが、手助けに行くしかない。上手く立ち回れば許してもらえるかもしれないしな。


 俺は物陰に入り、指へ意識を集中させる。


「変身」


 ドリルが生える。回る。うなる。イッカククジラのような(つの)がそびえる。体型も大人になった。服は元から破れているから問題なし。


 俺は煙の上がる方向へと走り出した。


 怒号と悲鳴が交錯(こうさく)する中、団長はすぐに見つかった。


 でかい。威圧感がある。顔がライオンっぽいおじさん。分かりやすくて助かる容姿だ。


 そのライオン顔が苦戦していた。城壁のような巨大な土壁で防御を張っているが、じりじりと押されている。


「来るぞ! 総員、衝撃に備えろ!」


 トンボが空から突っ込んで地面をえぐる。そのたびに地形がゆがむ。世界が紙粘土みたいに雑にこねられている。


「クソ、化け物め……!」


 あれを相手にそこそこ立ち回れている時点で団長も大概バケモンなんだが今回は相手が悪すぎるな。


 俺は()を見て叫ぶ。


「ヒャッハー! おい猫野郎、助けにきたぜぇ!」


 我ながら語彙(ごい)が終わってる。


 それはともかく、俺の声に反応して団長がこちらを振り向いた。


「な、お前はドリルマンか……! だが雰囲気がおかしいな……?」


 あ。しまった。紳士設定を完全に忘れていた。まぁいいか。


「う、うるせぇ。いいから手を貸せ。俺がトンボ野郎に風穴をぶち開けてやる」


 団長は一瞬迷い、すぐにうなずいた。


「クッ……確かにお前ならどうにかできるかもな」


「団長! そんな人食いクズイキリドリル野郎なんか当てにしたらダメですよ!」


 いや、俺のあだ名が酷いことになり過ぎだろ。早くなんとかしないと。


 団長は首を横に振る。


「今は他に方法がない。私は防御で手一杯だし、上位の土魔法使いは出払っている。ドリルマンは私より少し(おと)る、いやそこそこ、いや結構劣るが、この場の他の者よりは強いだろう。副団長よりもな」


「え、ワタシよりも!?」


 横で副団長らしきトラ顔の男がすっとんきょうな声を上げた。


 なんだこの職場、ネコ科っぽい顔しか採用してねぇのかよ。まぁいいや。


「とにかく共闘でいいなぁ!? 俺は飛べねぇし、土人形も作れねぇ! 足場頼む!」


 団長の目が細くなる。


「ほう、土魔法使いの利点である土人形をあえて創造しないことで近接戦特化の戦闘スタイルをとっていたか。道理(どうり)で私と戦った時にあれほどの硬さを持っていたわけだ。研鑽(けんさん)する技術を(しぼ)ることで魔力の少なさを(おぎな)い、格上とも戦えるようにしていると。さすがだよドリルマン」


 いや、全部間違ってるよ! 分離を覚えられなかったんだよクソ! あと俺を魔力少ないキャラにするな!


「ごちゃごちゃうるせぇ! さっさと足場作りやがれ!」


「ふ、面白い男だ。よし、総員、ドリルマンを援護しろ」


「し、しかしコイツは賞金首ですよ?」


「問題ない。何かあれば責任は私と副団長がとる」


「え、ワタシも!?」


 トラ顔の副団長が驚いている。団長に苦労させられてそうだな。


「時間がない。総員、行動開始!」


「おうっ!」


 団長が手を掲げると、トンボに向かって階段が出来上がる。


 俺はそれらを踏み台にして空へ。


「ヒャハハ! 人の作り上げたものを踏み台にして上へ行くのは最高だぜぇ!!」


 跳ぶ、いや、駆ける。


 トンボがこちらを向いた。複眼が光る。集合体恐怖症なら涙目になっていただろう。


 だが、こっちは一万六千匹の犬を書いたんだぜ。集合体がなんだってんだ。ただの昆虫の目なんざ可愛いもんさ。


「いくぜ、トンボ野郎!」


 ドリルがうなる。わんわん、と犬の鳴き声を発しながら。


 しまった。設定戻してなかった。だがもう止まれねぇ。


 俺はそのまま犬の鳴き声を(とどろ)かせながらトンボに向かって、一直線に突っ込んだ。

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