第3話 キャラ迷走2・巌窟級
キャラ迷走する中、賊との戦闘が続いていた。
俺は横軸回転した。目にも止まらぬ速さで、そして、ただ一直線に進む。
「な、早い!?」
最初の一人が宙を舞い、次の瞬間には壁に叩きつけられていた。人間って意外と柔らかい。パンみたいだ。叩くと形が変わる。
もちろん手加減はした。賞金に変えないといけないからな。もし、打ちどころが悪くて死んだら……うん、墓穴でも掘ってやろう。
「へぇ、やるなイキリドリル野郎。だがこれならどうかな」
モグラ顔をしたリーダーの男が両手を地面につける。すると、周囲の土が盛り上がり、複数の土人形が現れた。
前回戦ったやつと同じ不定形の泥の塊だ。
俺はそれを見てニチャリと紳士的な笑みを浮かべる。
「ファファファ! 全部、顔ハメパネルにしてやるぜぇぇ!」
舌が回る回る。紳士設定よ、帰って来い! まだ間に合う!
なんて考えつつ、土人形を次々とトンネルにしていく。
「な、なんだと!? こいつただグルグル回るだけのやつじゃねぇ!?」
「遅ぇんですぞ!」
ドリルは容赦なく突き進む。
数分後、立っている敵は一人だけだった。
モグラ顔のリーダーが顔を引きつらせる。
「な、なかなかやるじゃねぇか。だが、“巌窟級”のオレはまだまだこんなものじゃないぞ」
巌窟級。土魔法使いの階級の一つ。六段階中の上から四番目。レベル3と言った方が分かりやすいか。このクラスになると土人形を創れるからそこそこ強い。
「おやおや、巌窟級ですか。面白いですねぇ」
メガネクイッ。あ、メガネなかった。
「余裕ぶっこいてんじゃねぇぞ! 見せてやる。オレの本気をなぁ!」
男の体を金色の鎧が覆う。土魔法で作ったものだ。金ピカで自己主張が激しい。見た目だけは立派だな。
「受けてみやがれ!」
モグラ男が踏み込む。
「オラオラオラァ!」
連続ラッシュ。俺は防御態勢をとった。一発一発が重い。さすが巌窟級だ。
しかし、急に敵の動きが止まる。
「い、い、いてぇぇぇ!」
敵の拳から血が出ていた。
俺は無傷。お、このレベルでも防げるか。ドリル魔法強いな。
「なんて硬さだ、ど、どうなってやがる……!」
「ファファファ! 鍛え方が違うんですよぉ、鍛え方がねぇ!」
まずい、イキリがはみ出ちゃう。
俺は誤魔化すように腕のドリルを回転させて敵の鎧を削る。
結果。
「ぐわあああ! いてぇぇぇ!」
削った音は意外と軽かった。期待していたほどの手応えもない。高級そうな見た目のくせに中身はスカスカだ。金色の折り紙を破ったかのよう。
戦意喪失したモグラ男が崩れ落ちる。
「や、やべぇ、お頭がやられた! 逃げろ!」
起き上がった手下達が逃げ出そうとする。
「おっと、逃がしませんよ、ファファファのファー!」
俺は出口をドリルで破壊して崩落させた。
「逃げ道、封鎖ですぞ」
これで袋のネズミだ。
絶望的な顔をする賊たち。
「お、オレ達を皆殺しにする気か!?」
「ファファファ、まさか。ここで大人しくしといてください。後で迎えに来ます」
全員、都の衛兵に突き出して金に変えてやるぜ。
俺は倒れた親玉の首根っこを掴んで持ち上げる。見た目よりずっと軽い。プライドも同じくらい軽かったんだろうな。
「お前にはちょっと付き合ってもらいますよ」
「ひぇ、どうする気だ!?」
「換金するだけですよ」
「監禁だと!? 拷問する気か!?」
いや、そっちじゃなくて金に変えるんだけど……まぁいいか。どっちにしろコイツは豚箱いきだしな。
その後もウダウダうるさかったのでドリルを回転させて脅すと、放置したフライドポテトみたいにシナシナになった。
賞金首を引きずりながら俺は出口へ向かう。隅っこで怯えている雑魚たちを牽制しながら穴を掘る。
頭領は、ぐったりしたまま。
コイツはおいくら万円になるのかなー。
金はともかく、これでただのイキリドリル野郎じゃなく、賞金首ハンターとして名を馳せちゃうかもな。
「ファファファ!」
未来への期待に思わず笑いが漏れる。すると、モグラ男が一言。
「ひぇ、おぞましい……まるで悪魔の笑い方だぜ……」
おい、どう聞いても紳士な笑い方だろ。




