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ドリル魔法使い転生 【土魔法しかない世界に“ドリル使い”とかいう環境破壊能力者が現れて界隈がざわついてる】  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1部 人食いドリル編

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第2話 キャラ迷走1・違和感

 イキリドリル野郎というレッテルを()がせないままダンジョンに一人取り残された俺ことヘリクスは、人生という舞台から強制退場させられた役者みたいな顔で立ち尽くしていた。


「……うーん、どうするかなぁ」


 イキリドリルどころか子供を食べた人食いドリルと誤解されている状況。ここから悪いイメージを払拭(ふっしょく)できるビジョンが浮かばない。


 心が痛い。胸にドリルで穴を開けられたみたいな気分だ。ドリル使いなのに。ぐすん。


 俺はため息をつき、逃げた仲間……元仲間の荷物へと視線を落とした。


「置いてったんだから貰ってもいいよな?」


 罪悪感の天使が脳内に現れて邪魔をしてくるが、空腹の悪魔が殴り飛ばした。倫理観ってのは腹八分でしか機能しないらしい。


 俺は遠慮がちに、しかし途中から開き直ってガサガサと荷物を(あさ)る。


 出てきたのは石、石、石。


「はぁー、使えねぇ。石屋でも始める気だったのか?」


 冗談はさておき、これは“封石(ふうせき)”だ。土魔法で作られた便利アイテムで、中にいろんなものを封じておける。火、水、空気などなど。ダンジョン探索の必需品だ。


 一つ手に取って軽く叩くと、内部で水が揺れる音がする。それをカプセルトイを開けるみたいに(ひね)ると水が(あふ)れ出した。俺は缶ジュースでも飲むみたいに石を(かたむ)ける。


「かぁ、うめぇ。人の荷物を奪って飲む水は最高だぜぇ」


 あ、ついイキった台詞が出てしまった。自重(じちょう)しろ俺。まだ変身してないぞ俺。日頃から意識してイキらないことが大事なんだぞ。


「そんなことより(かね)(かね)。金目のものはねぇかなぁ? ヒャハハ!」


 ……コホン。イキリを抑えるのちょっと無理っぽいか?


 まぁ、誰かに聞かれない限りはセーフだよな。


 気を取り直して他の荷物も期待半分で(あさ)ってみるがどれも似たようなものばかりだった。


「高級品は無し、か」


 少しだけ肩を落とす。貴族の荷物だし、宝石でも出てくるかと思ったが現実はそんなに甘くない。


 まぁ当然だ。ダンジョンに高価なもん持ってくるやつなんて財布にドリルで穴を開けてるようなもんだからな。


「帰るか」


 封石(ふうせき)をいくつか拝借(はいしゃく)しつつ、出口の方へ視線を向ける。


「……いや、待てよ」


 脳みそに引っかかる違和感。


「そういえば、なんでここに星喰(ほしく)いがいた?」


 ここは放棄(ほうき)されたダンジョン。人里が近く、貴族のお坊ちゃんの遊び場で、怪物が()かない安全地帯のはずだった。


 それなのに、あの泥の化け物がいた。


「はぐれ個体か? それとも新たに()いたか? いずれにせよ都合が良すぎる気もするな」


 俺は先ほど倒した星喰いの残骸(ざんがい)へと歩み寄る。ぐちゃりとした泥の山は死んでもなお不快感だけは一人前だ。


 足で軽くつつくと内部から硬い感触。


「ん?」


 しゃがんで手を突っ込み引きずり出す。出てきたのは赤いかけらだった。


「これは(かく)、だよな」


 本来、星喰いは真円(しんえん)に近い赤い核を持っている。


 だが、これは違う。角ばっており、(ゆが)んでいる。


(くだ)けただけか?」


 あり得なくはない。これ以上は考えてもムダか。


 思考が終わると同時。ダンジョンの奥の方から音がした。


 人の声。複数。


 俺は反射的に身を低くし、声の方へと向かう。


 岩陰からそっと(のぞ)くと数人の男達が集まって何やら話をしていた。


「そろそろ捕まえられましたかねぇ?」


(あわ)てるな。オレの土人形なら確実に捕縛(ほばく)できる。少なくとも貴族のマヌケなら余裕だろう」


「へへ、さすが(かしら)ですぜ。土人形を星喰いに見せかけることで仮に標的に逃げられても怪物のせいにできる。成功して貴族を捕まえられたら身代金(みのしろきん)をたんまりいただく。いやぁ、完璧な計画でさぁ」


 説明書でも読んでいるみたいな口調助かる。


 そして理解した。さっきの星喰いもどきは、こいつら(ぞく)仕業(しわざ)。土魔法で作られた土人形、つまり偽物だった。


 高度に造形された土人形は星喰いと区別がつかない、という言葉がこの世界にはあるが、まさにその通りだと思った。まぁ泥の(かたまり)だし、高度かというと微妙なラインか。でも雑魚(ざこ)なら(だま)せるだろう。誰が雑魚だよ。


「……なるほどなぁ」


 俺は素直に感心した。悪党ってのは悪事に関しては本当に頭が()えるよな。


 その発想力を善行(ぜんこう)に使えたらいいのに。土人形を作れるくらいだから土魔法使いとしてそれなりに良い仕事にありつけるはずなのになぁ。もったいない。


 俺は肩をすくめながら(ぞく)の観察を続ける。よく見ると、(かしら)と呼ばれているモグラ顔の男に見覚えがあった。


「あれ、賞金首じゃね?」


 街の掲示板に貼ってあった顔だ。金になりそうなことは大体覚えているから間違いない。


「これはチャンスかも。賞金首を捕まえれば、(かね)を稼げて、汚名返上も()たせる」


 イキリドリル野郎。あの呪いみたいなあだ名をここで粉砕(ふんさい)できるかもしれない。


「……よし」


 俺は小さく息を吐いて岩陰の奥に行く。


「変身」


 骨がねじれ、肉が螺旋(らせん)を描く。大人の体つきになり、ユニコーンのような角が生える。ドリルマン再臨(さいりん)


 今回は紳士(しんし)を意識する。知的で、余裕があって、影のある感じだ。


 俺はゆっくりと歩き出し、そして。


 パチパチパチ。拍手(はくしゅ)しながら敵の前へ姿を見せた。


「ファファファ、話は全て聞かせてもらいましたよ」


 決まった。これは決まっただろ。完璧な紳士の登場だ。


「誰だお前は?」

「なんだその笑い方」


 あれ、紳士ってこんな笑い方じゃなかったっけ。まぁいいか。雰囲気だ雰囲気。


「ファファファ、細かいことは気にしないでください」


「待て、その毛虫みたいなトゲトゲ……まさかイキリドリル野郎か!?」


「誰が毛虫だよ。じゃなくて私はドリルマン、いやドリル紳士でございます。以後お見知り置きを」


 俺は(うやうや)しく頭を下げる。するとドリル同士が触れ合って鉄琴(てっきん)を叩いた時のような音が鳴った。


 くそ、邪魔だな。誰だよこんなトゲトゲにしたやつ。俺だよ。


「なんだコイツ、バカにしてんのか? お前ら、やっちまえ!」


 会話終了。世の中はいつだって暴力的だ。話が早くて助かるけどさ。


 敵が手のひらの上に小岩や土塊(つちくれ)顕現(けんげん)させる。


 物体の大きさと顕現速度から見て、リーダー以外は土魔法レベル1ってとこだな。俺は土魔法は使えないが、知識はあるから分かる。


「くたばれイキリドリル野郎!」


 高速で飛来する魔法の塊。


 俺は腕の一振りで全て粉砕した。しかし、破片により服とドリルが汚れる。


「くそったれが……!」


 思わず暴言が出る。いけない、いけない。紳士に行こう。これからは優しいキャラで行くんだ。そして一言。


「ファファファ! よくもやりやがりましたねぇ! お死にになりやがれですじゃあ!」


 ダメだ! キャラが迷走している!

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