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ドリル魔法使い転生 〜土魔法しかない世界に『ドリル使い』とかいう環境破壊能力者が現れて界隈がざわついてる〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第2部 土魔法試験編

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第14話 土魔法試験3・魔法石上げ

 第二の試験は“魔法石上げ”らしい。名前だけ聞くと子供の遊びみたいだ。


 フクロウのじっちゃん試験官が杖でコツンと地面を叩く。視線の先にそれはあった。


 いかめしい王様の像。十メートルくらい。圧倒的な存在感。この国の王様らしい。素材は魔法石。つまり、ただの石じゃなく魔力で作られたもの。


的当(まとあ)てが操作の精密さを測るものじゃったが、魔法石上げは膂力(りょりょく)と瞬発力を測るものじゃな」


 じっちゃんの言葉。声は相変わらず(かわ)いている。


星喰(ほしく)いとの戦闘では瞬時に爆発的な力を発揮できなければならない。動かぬ石くらい簡単に持ち上げてもらわなくてはの」


 簡単にねぇ。どこの世界に十メートルの像を持ち上げられるやつがいるんだよ。この世界だよ。


「今回もチャンスは一度だけじゃ。さらに土人形の使用は(きん)ずる。(おのれ)の力なきものは()らぬということじゃ。当然じゃの」


 要するに自分で持ち上げろってことだ。シンプルで助かるが、こういうのほど難しかったりする。説明書が短いゲームほど理不尽なのは世の(つね)だからな。


「そいじゃ、オレからいくぜ」


 最初に出てきたのはゴリラ顔にムキムキの身体をした成人男。いかにも脳筋だ。


「うおおおおおおッ!」


 ゴリラ男が叫びながら像に手をかけた。筋肉が膨張(ぼうちょう)し、血管が浮く。


 しかし、像は動かない。王様は明後日(あさって)の方向を向いて微動だにしない。恋人に未読スルーされた時の既読マークくらい動かない。


「ぐ、ぬぅ……ッ!」


 数秒の(ねば)りの後、男は(ひざ)をついた。


 失敗。あの筋肉でもダメって絶望感あるな。


「フォフォフォ、見た目だけじゃったの」


 じっちゃんが白いヒゲをさすりながらニコニコしている。意外とSっぽいな。若い頃はモテただろう。知らないけど。


 その後も挑戦者が続く。遠距離攻撃が得意そうなやつ、器用に土を操ってたやつ、さっきの的当(まとあ)てでドヤ顔してたやつ。


 しかし、全滅。みんな石の前ではただの人間に戻る。


 なるほどな。これは遠距離専門とか土人形依存のやつにはキツい。


「次!」


「はいですわ!」


 元気の化身、リンの出番だ。金のポニーテールを揺らしながらシャドーボクシングをしている。


 リンは像の前に立つと、すっと腕を上げた。


 その瞬間、皮膚に爬虫類の鱗みたいな模様が浮かぶ。魔力の紋様か。見た目だけなら竜の腕って感じだ。


 彼女は像に手を掛け、軽く力を込める。


「んっ……!」


 手のひらを中心に(もや)のような揺らぎが立ち込める。魔力が可視化したものだろう。


「うぅぅにゃ!」


 変な掛け声のあと、少しずつ、少しずつ、持ち上がる。像が、だ。さっきまで世界の重さを代表してたみたいな石が、スッと浮く。


 あっさりだ。あまりにもあっさりで、さっきのゴリラなんだったのと思うレベルだ。


「やりましたわー!」


 リンはそのまま像を持ち上げきり、ニコニコと笑った。


 周囲がざわつく。そりゃそうだ。十歳程度の少女がいとも簡単に持ち上げたのだから。


 くそ。やっぱり天才ってやつは努力をバカにするために存在してるんじゃないかと思えてくる。


「次、とんがり男じゃ」


「その呼び方やめろ」


 ツッコミつつ、前に出ると、周囲の視線が刺さる。でも、もう慣れた。


 平然と像の前に立つ。デカい。近くで見ると威圧感がすごい。王様ってのは像でもマウントを取ってくるらしい。


 さて。果たして俺は持ち上げられるのか。ドリルは破壊か穿孔(せんこう)は得意だが、荷物持ちには向いてない。


「ヒャハハ……!」


 笑いが()れる。とにかく、やるしかねぇ。


 像の端に手を掛け、両手に力を込める。回転。圧縮。集中。


「いくぜぇ!」


 俺は像を空に浮かぶお星様にするぐらいの勢いで上へと持ち上げるイメージをした。


 次の瞬間。


「あ……」


 結果は……像は持ち上がらなかった。


 だが代わりに……砕けた。粉砕。崩壊。言葉を並べるのがバカらしくなるくらい見事にバラバラだ。


 王様は即席の砂山になった。権威ってのは案外こうやって崩れるのかもしれないな。


 哲学的なことを考えていると、フクロウのじっちゃんが目を見開く。


「な、ワシが創造した魔法石をいともたやすく……!?」


 じっちゃんが口をパクパクさせている。そのまま昇天するなよ。


「ヒャハハ! こんにゃくより(やわ)かったぜ!」


 テンションが上がる。だってしょうがないだろ、壊れたんだから。ドリル使い的には満点だよな?


「す、すげぇ。他のやつはビクともしなかったのに」

「でも破壊していいのか?」

「確かに。持ち上げるのが条件だよな」


 周囲の視線が冷たい。氷点下どころじゃない。南極が暖かく感じるレベルだ。


「ヒャハハ……もしかして破壊したらダメなのかぁ?」


 自分で言ってて、遅すぎる気づきだと思った。


 料理対決で鍋ごと吹き飛ばした後に、味見は必要だったか聞くくらいには手遅れだ。


 フクロウのじっちゃんが、こめかみを押さえている。


「ま、まさか、失格……かぁ?」


 俺は絶望的な表情を浮かべながら砂になった王様を見下ろした。

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