第48話
「 ん 」
眠っていたような感覚から目覚める。
潮の匂いを感じた気がして、自然と体を起こしていた。
そこは、地面の裂け目に落ちる前に立っていた場所。
あの時手にしていたガラス瓶が、手元に落ちていた。
けど、あの時と決定的に変わったものも、そこにあった。
隣に座る光輝と、思わず顔を見合わせる。
「 海が、戻ってる… 」
目の前に見えるのは、“海”だった。
静かに波打って、その音が心地よい。
浜辺に座って、光輝とふたりで海を見ていた。
「 僕たち、海を取り戻せたんだね 」
「 そうみたいだな 」
そんなちょっとの言葉のやり取りを交わした。
「 … 」
---海を見て。
空を見上げて。
それから光輝を見る。
夕日に照らされて、光輝が輝いて見えていた。
それは前に見た“灯台の影”とよく似ている。
と、なぜだかそう感じた。
胸の奥で何かがザワつく。
胸に残った違和感が、叫びをあげた。
「 …なぁ 」
そう声をかける。
光輝が俺の方を振り返って、どうしたのと言わんばかりな顔をする。
そんな光輝が眩しかった。
―――その瞬間に、俺は気づいたんだ。
気づいていなかっただけで、ずっと前から。
海がなくなってしまう前から。
ずっと、思っていたこと。
「 また、一緒に海に行こうな。ブラボー 」
「 っえ 」
その名前を口にした瞬間、胸に残っていた違和感がスっと消えていった音がした。
目を見開いたまま固まるブラボー。
少し時間が経てば、困ったように、けど嬉しそうに笑った。
気づいたら俺もつられて笑っていて。
波の音だけが聞こえる浜辺で、俺たちの声が響いていた。
―――なぁ、光輝。
お前は“光”だ。
誰かを照らせる、そんな眩しすぎるくらいの光。
だから。
その名前で呼ばせてくれよ。




