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"名のない英雄"  作者: 終夜 / Yosugara
【 光彩 】
49/49

第49話

 


 バシャンっ


 ぱしゃんっ



 波が岩に当たって砕け散る。


 大きな波。


 小さな波。


 それぞれ違った音を奏でる。


 そんな音ばかりが響く砂浜に、俺たちは立っていた。


 終わりの見えない水平線が赤く染っている。


 青の名残もあるけれど、海は夕日に染まっていた。


「 碧 」


「 あぁ 」


 視線を交わして、背負っていたランドセルをおろした。


 砂浜に置いたそれは、夕日に照らされてほんのり赤く煌めいている。


 靴も脱いで、その中に靴下も入れた。



 ---ふたりで海へ向かって歩く。


 その間も波の音が静かに聞こえていた。


 浜辺に押し寄せる波が足首に触れる。


 冷たい。


 けれど、その冷たさが妙に気持ちよかった。


「 いくよ? 」


 ブラボーが俺の方を見る。


 俺が頷いたのを見て、ブラボーも頷いた。


 そして大きな波が浜辺に押し寄せる。


 その瞬間に、俺たちは波へガラス瓶をのせた。



 波が一度引いて、ガラス瓶が海へと飲まれていく。


 波に揺られるガラス瓶が、やがて水平線に消えていく。


 その時まで、俺たちはガラス瓶を眺めていた。


 何も言わずに、黙って。


 ただ、それを見ていた。


「 返事、返ってくると思うか? 」


 なんて、ブラボーに聞いてみる。


「 うん、返ってくるよ。きっとね 」


 そう言って微笑むブラボー。


 ガラス瓶が誰かに届くかも分からない。


 返事が帰ってくるかも分からない。


 けど、心の底から思った。



 “返事は帰ってくる”


 って。


 ブラボーの言葉を聞いて、不思議とそう思った。






 ---風が吹く。


 耳元で風の音が聞こえる。


「 …来年も一緒にここに来ような 」


 ずっと言いたかった言葉。


 去年はブラボーが俺に言ってくれたから。


 今年は俺が言いたかったんだ。


「 うん。もちろんだよ 」


 ブラボーがそう言った瞬間、風がひとつ吹き抜けた。


 追い風が俺たちの背中を押している。


「 綺麗だね 」


「 そうだな 」


 ブラボーと他愛ない会話を交わす。





 その間も、風は前に吹いていた。















"名のない英雄"-光の行方-


これにて第2部も完結になります。




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