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"名のない英雄"  作者: 終夜 / Yosugara
【 光彩 】
42/49

第42話

 


 岩肌を辿った先。


 青い空に浮かんだ白亜の塔。


 海があることを示す灯台が、今では海があったことの証になっている。


「 碧〜。こっちこっち!! 」


 灯台の下に見えた光輝の姿。


 俺のほうに元気よく手を振っている。


 俺も手を振り返して、少し駆け足で光輝のもとまで駆け寄った。


「 待たせたな。光輝 」


「 大丈夫。僕もさっききたとこだから 」


 そんな会話を交わす。


「 海、ほんとに無くなってるね 」


「 …そうだな 」


 昨日まではそこにあったはずの海。


 それが今はどうだろか。


 延々と続く砂漠が視界に映り込むだけだ。


 なんだか虚しい気持ちになる。



 キラッ



「 ん? なぁ、光輝。あそこ何か光ってないか? 」


 光輝の肩をちょんちょんとつつく。


 それから、見つけた何かを指さした。


 何も無い砂浜に小さな輝きがある。


 ガラスか────なんて思ったけど、何故だかその一言で済ませたらダメな気がした。


「 見に行ってみようよ 」


 そう言って歩き出す光輝の背中を追う。


 砂の中から顔を出していたのは、小さなガラスの瓶だった。


 中には紙が入っている。


 見覚えのあるガラス瓶。


 手に取ってコルクを外した。


 少し黄色くなったシワシワの紙を広げる。


「 これって

 ────俺らが書いたメッセージボトルだよな? 」


 手に拾った紙を光輝に見せてみる。


「 うん、だいぶ前に書いたやつだよ 」



 “このメッセージボトルを拾ったかたへ。

 あなたの住む世界はどんなところですか?

 僕たちの住む世界はみんな笑顔が優しくて、

 毎日が楽しいところです。お返事待ってます!!”



 ほんの少しインクが滲んだ手紙。


 水に濡れてシワになっているところもある。


「 懐かしいな 」


「 ね、ほんとに 」


 数秒間、俺らの間に沈黙が漂う。


 別に気まずい訳じゃない。


 この沈黙が心地よく感じる。


「 なぁ、俺たちで海を取り戻そうぜ 」


「 うん、僕もちょうど思ってた 」


 目が合って、お互いに笑いあって。





 ────消えてしまった海。


 そこにあった俺たちの思い出を取り戻す。


 風に吹かれて砂が舞い、そして小さな山を作る。


「 行こう 」


 光輝が小さく微笑んだ。


 俺もその言葉に頷く。


 その時だった。


 ---俺たちの足元の地面が割れる。


 けど、ただの地割れではなかった。


 それは“異世界への入口”。


 世界が俺たちの選択に応えたみたいに、冒険への道が開かれた瞬間だった。






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