傾国の鉄宰 第二十九話 【オーケンの後継者と防衛隊長】 〜ロストジェネレーションって何だ!
閑話――オーケン放逐から四ヶ月――
ウカジ隊長に声を掛けられて、改めて周りを見回すと、防衛隊の正式装備を身に付けた衛士と騎士が、残りのオークの掃討に当たっている。ギクシャや門兵たちが皆、無事なことが見て取れて安堵する。
戦闘は迎撃から掃討の局面に移り変わっている。俺も掃討戦に参加しようと一歩踏み出したところで、声が掛かる。
「もういい、ボナイ。お前は休め」
「ウカジ様……! 防衛隊の到着…感謝…いたします。…しかし、まだ…魔物が残って…おりますので…」
俺は肩で息をしながら、辛うじて礼を口にする。手元の剣はオークの脂で重く、左手の掌は槍使いを引き倒した時の熱を帯びたままだった。
「礼には及ばん。持ち堪えたのは、お前たちの功績だ。どのみちその剣では、充分な働きはできまい。そこで休んでいろ」
ウカジ様の言葉で…改めて自分の剣を見ると、先が大きく欠けていることに気が付いた。未熟ゆえか、それでも仲間の命を救うことができた。剣の血糊を拭うと感謝をする。
「……ボナイ、先ほどの動き、騎士団の型に囚われない、泥臭くも鋭い一撃だったな」
ウカジ様は周囲に展開する防衛隊員たちに手際よく指示を出し、残存するオークの掃討を進めながら歩み寄ってくる。
その瞳は、初めて会った時から変わらない。期待するでも、侮るでもなく、ただ事実を見極めようとしている。
俺はウカジ隊長が苦手だった。怒鳴ることも差別することもない。穏やかで冗談好きな隊長を、なぜ自分は苦手なのか。俺自身、理由が分からず漠然と、その武勇に対する畏敬だと思っていた。しかし今思えば、虚勢と地位への渇望、空っぽな自分を見透かされそうで怖かったんだ。
「私の実力では…、騎士の型だけは……仲間を、街を守れない。そう思っただけです」
「フッ、いい答えだ。自分だけを守る剣を捨てた時、人は初めて剣の重さを正しく知る。掃討が終わったようだな。どうだボナイ。近くに何かしらの気配を感じるか」
ウカジ様に問われ、俺は握り直した剣を構えて、あたりに違和感がないかを確かめる。
魔鉄独楽では、対戦相手の独楽が帯びる魔力の量や質、方向を読みきることが大切なため、俺はこの1ヶ月、ひたすら魔力を感知する能力を磨いた。その結果、見えないモノの気配を少しだが感じることができるようになった。遊びながら学ぶ、なんだか不思議な感じだ。
「いいえ。オークのような強い気配は感じません。…ただ、わずかですが魔力を複数感じます」
俺の答えを聞いたウカジ様が、大きく口角を上げて一歩前へ出る。
「よし。合格だ」
隊長がそう口して瞬間、魔力とは違う力、『覇気』の奔流が二つ起こった。そう感じた時には、ウカジ様は既に抜剣しており、覇気が霧散すると同時に納剣する。
「ボナイは狩りの経験は?」
「…え?田舎で訓練のために何度かは」
「じゃあ血抜き位は出来るな。手伝え」
そう言うが早いか隊長は歩き出し、オークの死体から少し離れた草むらで身を屈めた。
立ち上がった、その手には気絶した一角兎を2匹掴んでいる。
「オークの集団に追い立てられるように、森から迷い出てきたのだろう。魔物が集団発生した時には、よくある事だ。一角兎でも老人や子供の命を奪うことがある。討伐が終わっても、気を引き締めて。最後まで事に当たれ。確認を怠っては、討伐を完了したと言えん」
「はい」
俺とウカジ様は、それぞれ一角兎にとどめを差し、血抜きをした。
ウカジ様は水筒と乾燥した香草も携えており、魔物の討伐というよりは魔肉の下ごしらえの様相がつよくなる。
(ウカジ様はいつも、こんな準備をしているのだろうか?それじゃあ、まるで)
「冒険者みてぇだろ?」
「いえ…」
思考を読まれたようで俺は固まる。
「フッ。辺境じゃ、街を一歩出れば生命の危険なんて、そこら中に転がっている。辺境やダンジョンから生き残る術を持つ、冒険者に倣うことは当たり前だ」
「隊長。魔物討伐の報告です。オーク総数47、一角兎2…修正して4です」
騎士のエルバン殿が、俺たちが持つ完璧に処理された兎肉に視線を留めて報告を修正する。なんだか申し訳なくて頭を下げる。
それを見たエルバン殿は少し驚いた顔をしたが、穏やかに微笑んだ。
「よし。間もなく冒険者ギルドの職員と冒険者たちも来るはずだ。オーク達の処理をすすめておけ。街の外周の確認が終わり次第合流する、副隊長の隊と合力して素材は全て冒険者ギルドに納入する。納入額の2割は、防衛協力金として市民3名に分配する。門兵2人とボナイの3名には危険手当として1割を分配、残り7割は軍務経理に納める。軍規に則って処理されたかは、担当者に後日俺が確認する。あと一角兎の討伐数は2でいい。以上だ」
事後処理の割り振りを円滑に進めていくウカジ隊長。
(いつも副隊長が対応しているから、数字に弱いのかと思っていたが)
俺の顔を見たウカジ様が笑う。
「なんだボナイ。俺には事務処理能力は無いとでも、思っていたのか?」
「けっ、決して、そのようなことは」
「ガハハハ、事務処理が出来るのと、好き嫌いは別の話だ。俺は数字が嫌いだ。それは、まぁいいとして。ボナイお前の表情は分かり易い、街の人間の信頼を得るには良いことだが、これからのお前には腹芸も必要になるからな、訓練の一環だと思って先ずは鉄皮面の練習でもするんだな」
「はぁ」
「……さて、事務の話はここまでだ」
ウカジ様は短く息を吐くと、血脂を拭った小刀を鞘に納め、パンパンと景気よく俺の肩を叩いた。
「ボナイ、それにギクシャ! 他の面々も、街の危機を救ったんだ、このまま解散というわけにもいくまい。装備を片付けたら、景気付けに一杯どうだ? もちろん、俺の奢りだ」
その言葉に、それまで疲労困憊だったギクシャや街の男たちの顔に、一気に安堵と歓喜の色が広がる。だが、俺は不意の誘いに少しだけ困り果ててしまった。
「あの……お誘いは非常に嬉しいのですが、ウカジ様。実は俺、今日の晩飯を『居酒屋宿り木』に頼んだままになっていまして。無事を報告に戻らないといけないんです」
戦いの高揚感が消え、急に空腹を思い出した俺の言葉に、ウカジ様は一瞬きょとんとした顔を見せた。しかし、すぐにその豪快な笑い声を響かせる。
「ガハハ! なんだ、そんなことか。「宿り木」か、いい店を知っているな。なら話は早い!」
ウカジ様は周囲に近寄ってきたギクシャたちに向かって、朗々と声を張り上げた。
「野郎ども、聞いたか! 今日の会場は『宿り木』だ! あそこの飯は美味いからな。ボナイ、お前の頼んだ晩飯も、全部まとめて宴会のツマミにしてやる」
そこまで口にしてから、作業する防衛隊の面々に向かい声を張る。
「宿り木の大将には俺から、防衛隊の人間が来たら食事と酒を出すように言い含めておこう。勤務が終わったら個々で楽しめ」
「えっ、全員分……ですか?」
「当然だ。本来なら全員で飲みに行きたいところだが、この人数で押し寄せては、他の客も迷惑だろう。それに、あの店の規模では酒と食い物が足りるとは思えんからな。そうと決まれば、ボナイ走れ!先ず最初に宿り木に行って5名で予約だ。大将には酒とつまみを10名分頼んでおけよ。その後、家で身綺麗にしてから宿り木に来い。順番を間違うなよ。俺は店に入って直ぐに酒が飲みたいんだ」
「10名分……」
宿り木の飯の量は多い10人前も食べきれるのか俺が不安に思っていると。
「大丈夫、隊長は若手兵士よりも量を食べるし、ギクシャさんも大食漢だから……ボナイ殿、君の頼んだ夕食、2人に食べられないよう気をつけるんだよ」
エルバン殿は穏やかに微笑むと、軽い足取りで他の防衛隊の人たちとオークの片付けに向う。
「さあ、そうと決まればさっさと片付けるぞ。ボナイお前は早く行け。あぁ一角兎も持っていけ。『宿り木』の大将には、お前がどれだけ見事な働きをしたか、俺が直々に吹き込んでやるから覚悟しておけよ」
「……お手柔らかにお願いします」
俺は苦笑いしながらも、温かな気持ちに胸を膨らませた。
先ほどまであんなに重く感じていた剣が、今は不思議と、心地よい重みに変わっていた。
――セブルス市街――
オーク討伐のあらましだけをおやじさんに話し、席と料理の予約を済ませて、急いて部屋に戻る。中庭の井戸で水を浴び、急いで古布で体を拭う。夜の水浴びは流石に冷たかったが、戦闘後に街を走り抜けた身体には、心地よくもあった。
身形を整えて、急ぎ宿り木へ向かった。店に入ると直ぐに怒号のような大きな声で名前を呼ばれる。
「おぉ、坊主、早かったな」
すでに何杯か酒を飲んだであろう、赤ら顔のギクシャさんが奥の席から手を振っている。
「遅くなって、すみません」
「なぁに、俺たちも今来たところだ。俺たちは着の身着のままで良いが、坊主は身形を整えて来たんだろう。ウカジに会うんだからお前が正しい。俺たちより着崩した格好で、俺たちより早くから店にいる隊長がおかしいんだよ」
ギクシャさんの視線がカウンターに向く。
驚いた事にウカジ隊長がそこにいた。
格好は鍛冶師がはくような厚手のズボンに、ゆったとした粗布を羽織っている。帯剣はしているものの、とても防衛隊の隊長、騎士の格好ではない。無頼の冒険者という風貌だ。
そして何より驚いたのは、強者の圧力が全くない事だ。人はこれ程に力を制御できるものなのか…。
「ようやく。主役の登場か。大将、コイツにも特製エールをくれ」
「隊長、遅くなって申し訳ありません」
「うん?別に遅くはないだろうが。俺やギクシャたちが早すぎるだけだ。酒と食い物の準備はされていたから、何の問題もない。丁度今、お前の活躍を大将に話し終えたところだ」
ウカジ様と共に席に着くと、おやじさんが俺が食べそびれた『栄養のある飯』を作り直して運んでくる。
「おやじさん、これって」
「ふん。ウカジの奢りだ、気にせず食べろ」
「大将、エールはどうした?」
「空きっ腹に酒は毒だ。若い奴は、先ずは食べろ。乾杯用の酒は俺の奢りだ、特製の果実酒を用意してやる」
おやじさんとウカジ様の会話を聞き流していたギクシャさんたちが途端に騒ぎ立てる。
「宿り木特製の果実酒か、あるのか?あれが!」
「俺たちには?」
「一人一杯だけだぞ」
おやじさんの返答に歓声があがる。
「ここの特製果実酒は絶品だからな。今日はついてるぜ!」
「ハハハ、坊主に助けてもらえなければ、おっ死んでたかも知れねぇのに、ついてるかよ」
「あぁ、ついてる。坊主、助かったぜ。おかげで美味い酒が飲める。しかもタダで」
盛り上がる テーブルに親父さんが果実酒を持ってくる。
「 さあ主役と酒が揃った事だし、乾杯といこうじゃねえか」
「「「おう」」」
「坊主。何でもいいから言いな」
ギクシャさんの声に周りを見渡すと皆が頷く。
「今日は大変勉強になりました。有能な兵士であり大切な仲間であったオーケン殿が、放逐する原因を作った俺なんかを受け入れて下さり感謝しています。……あと、こんな俺を信じてくれて、ありがとうございました」
「……」
「……」
「……」
皆が難しい難しい表情になり、俺は焦った。
「…ボナイ。良いことを教えてやる。こういう時は、短くカラッとした話をするもんだ。オレが手本を見せてやるから、よく聞いておけ」
「はい。お願いします、隊長」
「過去は過去だ。新しい仲間に乾杯!」
「仲間に!」
「仲間に!」
「仲間に!」
その日、俺は生まれて初めて美味い酒を飲んだ。
――宿り木外――
飲み過ぎたし、食べ過ぎた。おやじさんが止めてくれなければ、自力で帰れたか自信がない。
(朝の走り込み…起きられるかなぁ)
「ボナイ、帰るぞ」
隊長の住む官舎と、俺の住む兵士宿舎は方向が同じなので2人で帰ることになった。
(ウカジ様、俺の倍は飲み食いしてたけど、全然平気そうだな)
道すがら、俺は地位や名誉に固執した空っぽだった自分のことや、オーケン殿の教えの素晴らしさを語った。
隊長は笑いながら相槌をうってくれる。
宿り木と宿舎の丁度真ん中あたりに差し掛かった頃にウカジ隊長が口を開いた。
「ボナイ。お前を近いうちに騎士に推挙するつもりだ。副隊長の血縁、下級貴族の子弟としてではなく。一人の兵士として評価し、推挙するから、そのつもりでいろ」
「……俺の愚かさで、この街はオーケン殿を失いました。そんな俺が騎士に返り咲くなんて…」
「オーケンは実力も人格も申し分のない逸材だった。やつを失ったのは大きな損失 だ。だからこそお前の力が必要だ。オーケンはお前には豊かな才能があり、いつか必ず街に必要な騎士になると話していたぞ」
「オーケン殿が…しかし、俺を騎士にすればケイン様の裁定を無視したと隊長の立場が危うくなりませんか?」
「実力、人間性ともに騎士としての基準を満たしていれば異論はない『隊長の判断にまかせる』そうだ」
「えっ?ケイン様がそう言われたんですか?」
ケイン様とセブルスの街の首脳部、代官のギリム様と防衛隊長ウカジ様は、ほぼ接触もなく疎遠もしくは無関心だと噂に聞いていた。それが何で俺なんかの話をしているんだ。わずかに歩みが遅くなった俺に、ウカジ様の大きな影が振り返る。
「腹芸ってのは深く静かに、何より長い時間をかけるんだよ。ギクシャたちの宴会芸を覚える必要は無いが、こっちの芸はお前も覚える必要があるな。まあどっちもどっちのくだらん芸だがな」
暗がりで不敵に笑うオーガの如き大男を見て、怖いと思ってしまう自分は、平凡な人間なんだと改めて気づかされる。
ケイン様といえば、俺の不始末に対し、降格とオーケン殿を放逐するという裁定を下したお方だ。
その後、オーケン殿を騎士に、それも小隊長としてサクヤの街に向かい入れるという決定で街の住人からは高い評価を得ている。銀の月亭の車寄せでの街に住む少女メリアへの対応は親世代の住人から人情味のある優しい青年だと人気博している。
この街では悪意ある噂はきれいに消え去り、法と秩序を重んじるが、人情を汲むことのできる御方というのが住人の評価だ。
ただ俺は、その対応が少し芝居掛かっているように思えて空恐ろしい。街の住人は皆『ケイン様は子供にも優しい好青年』だと口にするが、あの方はまだ12歳の少年なのだ。歳上に見られた方が利となれば青年のように、少年に見られた方が利となれば少年のまま立ち振舞う。得体のしれないお方というのが俺の感想だ。心の片隅に被害者意識があって、穿った見方をしてしまうのだろうか?だとすれば、何とも情けないことだ。
再び前を見て歩みだしたウカジ様は、夜風に吹かれながら静かに言葉を続けた。
「あの日、オーケンが街を去った直後、ケイン様との面談の際に俺はオーケンからの手紙を受け取った。誰からだと思う?ケイン様ご本人からだ。「内容をご存知か?」と聞いたら、「委細承知、僕が見ることのできる世界なんてたかが知れています。ウカジ殿の判断にお任せしますよ」と笑っておられた。俺たちは短時間で面談を終える必要があったからな、執務室に戻り手紙を読んだ。『ボナイを優遇しなくて良いから見守って欲しい。彼には、才能と自分にはない”何か”がある。他者からの支配から抜け出られた今なら、必ずこの街を支える大駒になるはずだ』と書かれていた。改めてオーケンの肝の太さを感じたよ。出会ったばかりの主人の決定を否定するような手紙を主人に託すなんてな。そしてあの方は笑ってそれを受け取り、俺に託された」
「オーケン殿が……そんなことを……」
胸の奥が、熱いというよりは痛いほどに締め付けられる。ケイン様の不興を買う危険を冒して、またも彼は俺の未来を守ろうとしてくれたのだ。
「お前にケイン様からの伝言だ。『騎士としての実力をウカジが認めたなら騎士に叙任すべく、当主に働き掛けよう。だがそれだけでは貴方の過ちは雪がれない。オーケンの意気に感じたならば、その”何か”が本物であると証明せよ。自らの力で騎士の型を脱ぎ捨て、泥を啜ってでも街を守り抜いてみせよその時、私は自分の裁定が間違っていたと認めよう』と」
ウカジ様がようやく立ち止まり、振り返った。その瞳には、酔いなど微塵も感じられない、鋭くも温かい光が宿っている。
「今日の戦い、もしケイン様が見ておられたなら、お前が槍使いの襟首を掴み、己を顧みずに飛び込んだあの瞬間……あの御方は自らの判断の非を認めて、微笑みながら人の成長の可能性を喜んでくださる。そんなお方だ、ケイン様は、ハイデル子爵家の方々は」
「……」
視界が、急に滲んで見えなくなった。
俺は「空っぽな自分」を埋めるために、必死に剣を振り、街中を走り回ってきた。子供たちと触れ合い、魔鉄独楽を回し、気配を察する訓練をしてきた。それは自分のためだと思っていた。だが、その足元の小道は、いつかオーケン殿やケイン様の「皆を守り抜く」という大道へと続いているのだ。
「ボナイ。オーケンが街を去ったのは、お前の罪を背負ったからじゃない。お前という未来に、いつかお前が自分を超えると信じて、街を託したんだ」
ウカジ様はいつの間にか隣を歩いていた。その手が俺の肩に置かれた。岩のように重く、そして限りなく優しい重みだった。
「顔を上げ、真っ直ぐ歩め。お前が流すべきは、後悔の涙じゃない。明日、新しく生まれ変わるための汗だ。……オーケンに、胸を張って報告できる騎士になれ。いいな」
「……っ、はい! ありがとうございます……ウカジ様!」
「まぁ真っ直ぐ歩めとか言いながら、腹芸は覚えて貰うがな」
「アハハ…」
夜空を見上げると、月はどこまでも澄み渡っていた。
魔鉄独楽のように、激しく、鋭く、そしてぶれず。俺の心臓は、これまでで一番力強い鼓動を刻んでいた。
オーケン殿、見ていてください。あなたの信じた「何か」で、何があってもこの街を守り抜きます。
宿舎へと続く夜道を、俺は一歩一歩、噛みしめるように歩き出した。
明日の朝の走り込みは、いつもより少しだけ、早く始めてみようと思う。
――第一章 完――




