傾国の鉄宰 第二十七話 【オーケンの後継者と魔鉄独楽】 〜ロストジェネレーションって何だ!
閑話――オーケンの放逐――当日
その日の午後、街の西門付近は、異様な雰囲気に包まれていた。
オーケン殿と俺は通りに跪き、その後にはオーケン殿の妻子が粗末な荷馬車の前で立ち尽くしていた。強引に連れてこられたのは、誰の目にも明らかだった。
ケイン様のやりように怒りを覚えるが、それ以上に、原因を作った自分の愚かさが腹立たしい。少し離れたところでガストンと話すケイン様が見える。
「申し訳ありません。オーケン殿。俺なんかのために…どうやってお詫びをすれば」
「こちらこそ、私の指導が及ばず申し訳ありません。詫びなんていりませんよ」
「でも…。ご家族まで巻き込んでしまって、俺はなんて愚かな…」
冷静でいようとは思うのだが、やはり自分の愚かさに嫌気がさす。
「では一つだけお願いがあります。私がいなくなった街を、あなたが守ってください」
どこまでも穏やかな声だった。だが、何者にも怯まない強さを感じさせる響きで、オーケン殿が提案する。
「騎士でもない俺にできるでしょうか…。いえ、違いますね。騎士だから守るんじゃない。守りたいから守る。……そうですよね」
騎士は守る形の一つに過ぎない。それに囚われすぎれば、本当に守りたいものを見失ってしまう。今回、俺はそう学んだ。
「……そうです。その通りです。立場や形式に囚われれば、心がすくみ急変する状況に対応できませんから。…これで安心して旅立てます。ありがとう、ボナイ様」
「様はいりませんよ。こちらこそ、ご指導ありがとうございました」
「私も様なんて柄じゃないですよ。ボナイ、また逢う日まで、お元気で」
見なくてもわかる。横で跪く真の騎士は穏やかな笑みをたたえているはずだ。
「はい。オーケン殿もお元気で。貴方は大切なことを教えてくださいました。師匠を呼び捨てには出来ませんよ」
「頑固ですね」
「ええ頑固なんです。ご存知でしょ?」
「確かに。ふふふ」
「ははは…」
少しだけだが話せて良かった。心はいつになく澄んでいる。
ケイン様が馬車に乗ってやってくる。
芝居掛かった演出にも思えるが、信賞必罰を明確にするためなのだろう。
その効果はてきめんで皆の注目を浴びる。
「おい、見ろよ……本当にオーケンさんが追い出されるのか」
「あれが噂の子爵家の坊ちゃんか。噂通りの暴君じゃないのか」
低く抑えられた非難の声が俺のところにまで聞こえてくる。ケイン様の耳に入ればどうなることか、固唾を飲んで地面を見つめる。
幸い住人の不満に一切気付く素振りも見せず、ケイン様は馬車のステップに立った。そして感情の見えない冷淡な態度で宣言する。
「今回の職務怠慢の罪、騎士ボナイの降格と元衛士オーケンの退去により以降は不問とする。早々にこの街から立ち去るように」
「「はっ」」
その言葉を合図に、荷馬車が動き出す。
オーケン殿は立ち上がり、家族を馬車に乗せ、自らはその横を歩く。彼は同僚や顔なじみの者たちにわずかに手を挙げて挨拶とし、街を後にする。
ケイン様は早々に宿へ戻られた。
俺は今日と明日は謹慎を言い渡された。
その間に荷物をまとめて騎士の宿舎を出る準備をしよう。
「オーケン殿。どうかお達者で」
オーケン殿たちの馬車が門を出て見えなくなるまで見送ったあと俺は歩き出した。
謹慎明け最初の非番の日、俺は騎士用の官舎から兵士用の官舎へと引っ越しをした。料理や洗濯は官舎付きの人間がやってくれていたので手荷物は少なく、引っ越し自体はあっという間に終わった。
逆に兵士用の官舎は自炊が基本なので、炊事道具を揃えるのに時間が掛かりそうだ。食器や鍋、洗濯用品等を買いそろえるために街へ出てみれば、もう四日も前の話なのにオーケン殿とケイン様の話をよく耳にした。
「オーケンさんが街を出て行くって聞いた時はハイデル家の若様に腹も立ったけど、騎士様、それも小隊長で召し抱えるってんだから驚いたねぇ」
「噂なんて当てになんねぇなぁ」
「まったくだぜ」
街でのオーケン殿とケイン様に関する話は概ね好意的だ。
俺はオーケン殿を見送った後、謹慎していた為、事の顛末を見てはいないが、街の人々や同僚たちの話を聞いた限りではケイン様は厳正だが人情にも厚い人物のようだ。オーケン殿は騎士への道が開かれたみたいだ。
最初に話を聞いた時は
「えっ、騎士になった? あの時、家族全員追放って言ってたのに……?」
と困惑したが、漏れ聞こえてくる話を整理するとオーケン殿にとって悪い話ではなさそうで安心した。
その情報にも偏りがあるかも知れないが。なにせ周りが話しているのを聞いただけなんだから。好転したとはいえ、オーケン殿放逐の原因になった俺だ、同僚や街の人々が距離を置こうとするのは当然だ。
それにしても、ケイン様とオーケン殿はいつ頃からこの話を進めていたのだろう。密偵の捕縛など不測の事態だろうから、それ以降、ケイン様の常宿にオーケン殿を連れて行った後の話だろうか。
ケイン様のあの冷徹な目は、どこまでが演技だったんだろうか。
十ニ歳の少年にこの街の大人たちを翻弄された。あの方は何者なんだ……底が知れないというか、正体がわからない。
あの冷徹な目を持たずには居られなかった。そんな状況を生き抜いてきたとしたら…。俺の半分しか生きていない少年がそれをなすとしたら…そこまで考えてゾッとする。
まぁ考え込んでも仕方ない。オーケン殿が俺に示した想いに疑念はない。ならば俺は俺の出来ることをやるだけだ。
最初にやれるのが、水差しと洗濯板の購入というのが、何とも締まらない話だが…。
――オーケンの放逐 三ヶ月後――
朝の日課の素振りを終え、水に濡らした布切れで体を拭う。水を飲み、ただただ空を眺めて汗が引くのを待つ。高ぶった感情が凪いでいくこの時間が、今の俺には必要だった。
今日は非番だ。昼の走り込みまで、当てもなく街をぶらつくことにする。
「散歩」と言えば優雅だが、俺にとっては苦行、あるいは己への戒めに近い。それでも、この街の空気から逃げるわけにはいかなかった
市場へ差し掛かると、そこには俺を待ち構える「壁」があった。
「あ! ボナイだ!」
囃し立てる声の主は、悪戯をしてはオーケンに拳骨を食らっていたザクトルと、独楽を教わっていた小柄なビッケだ。二人の名前と、彼らとオーケン殿との関係性を知るだけでも二ヶ月以上の時間を要した。俺と街の人々との間に横たわる「壁」は想像以上に厚い。彼らが俺に向ける視線には、いまだに隠しきれない反発の色があった。
「……元気そうだな、二人とも」
「ああ、もちろん。あんたがそうなのは残念だけどな!」
「そう言うなよ」
「イタズラする相手がいなくて力が有り余ってるんだよ」
「仲間や親父さん達にやればいいだろう。っていうか、そもそもイタズラはしちゃ駄目だぞ」
「…俺は仲間内で一番力が強いんだよ。弱い者イジメになるだろ。イタズラは笑って許してくれるけど、弱い者イジメは駄目なんだよ」
「オーケン殿に怒られたことがあるのか?」
「あぁ滅茶苦茶な。大の大人が泣きそうな顔で怒るんだよ。オーケンのおっさんは特別だったんだよ」
「そうか…」
「まぁ最近は独楽遊びで疲れて眠るから、イタズラする暇も無いけどよ」
「独楽か。ビッケはオーケンさんに独楽を教わったんだろ?」
「昨日、やっと独楽で全勝したんだ。僕は何をやっても駄目なヤツだったけど、初めて一番になれたんだ」
「そうか、おめでとう」
「…でも。おじさんには勝てて無いんだ。いつか会えたら勝負して勝ちたいんだけど。もう僕より独楽が上手い友達がいないんだよ」
ビッケがつまらなそうに呟く。
ライバルというか、高め合える相手がいないのだろう。
「俺も幼い頃は独楽遊びに、熱中したもんだよ」
懐かしむ俺に、ザクトルが毒づく。
「ボナイの時代と今じゃ、独楽打ちは全くの別物だぜ」
苦笑いしか返せずにいると、彼らはオーケン殿が残した『魔鉄の独楽』なるものについて語り始めた。
「ビッケ。独楽と道具持ってるだろ。このおっさんに『オーケンの魔鉄独楽』の凄さをみせてやれよ」
おっさん扱いに地味に傷付きながらもビッケの説明と実演に目が離せなくなる。
結論から言えば、ザクトルが正しかった。俺が知る独楽遊びと、今この街で流行っているそれは、根本から別物だった。
魔鉄で鋳造された独楽に魔力を流し込む。すると、「反発する力」が宿る。俺には不可視の現象だが、ビッケには薄っすら靄がかって見えるらしい。自分の未熟さが情けない。日課に、夜の魔力循環の訓練を取り入れようと心に決める。
独楽が闘う舞台は、巨大な酒樽に魔獣の皮を硬く張り詰めた特製の闘技台だ。この皮もまた、魔力を撥ね付ける性質を持っていた。
「魔力」を帯びた独楽と、「魔力」を拒む闘技台。
この二つが揃ったとき、独楽は俺の常識から外れ、永劫にも思える回転を始める。無学な俺には分からないが、オーケン殿はこれを「摩擦なき旋回」と呼んでいたらしい。子供たちは「マサル泣き千回」と覚えていたが、おそらく前者が正解だろう。
ビッケに何度も独楽を回してもらい、その軌跡を凝視し続けて、ようやく一つの事実が見えてきた。
(独楽の剣先が、わずかに宙を噛んでいる……!)
そうなのだ。独楽は闘技台に接触していない。その光景に、俺の心は震えた。
オーケン殿が言ったのは、このことか。接地せず、摩擦という枷から解き放たれているからこそ、その回転は衰えないんだ。
驚くべき道具へ進化した独楽だが、扱う人間も相応の成長が求められる。
独楽を単に回すだけなら、出来る限りの魔力を注いで力任せに叩きつければいい。
だが「対戦」となれば話は一変する。
この遊戯の本質は、腕力や魔力の多寡ではなく、繊細に研ぎ澄まされた加減にあるのだ。魔力は込めすぎれば独楽は「自重」を失うほどに軽くなり、制御を失って場外へと消える。魔力が少な過ぎれば、独楽は宙を噛まず、剣先が闘技台に接した瞬間から回転は衰え、敵の独楽との衝撃に耐えられず、弾き飛ばされる。
魔力と同じぐらい大切なのが投擲する力加減だ。独楽を投げる力と、紐を掛けて引く力のバランスが悪ければ、回転が不足する。それでは闘技台が放つ反発力に耐えきれず、無様に跳ね飛ばされてしまう。かといって力任せに投げればいいというものでもない。オーケン殿は訓練の際、常々こう言っていた。
「武技は総じて外に向かう力――遠心力を多用しますが、その根幹は留まり制御する力――求心力なのです。遠心力は目に見えるため意識しやすい、求心力は目に見え難いため失念しやすい。真理は見えないところにこそあるのですよ」
この魔鉄独楽を見て、ようやく理解した。あの言葉は正しかった。剣術や槍術、無手の稽古にも、求心力の意識をもっと取り入れなければならない。
もはやこれは、無邪気な子供の遊びと呼べる代物ではない。
魔力制御の精度と、物を、身体を動かす事への深い洞察が求められる、魂を削り合うような真剣勝負の世界なのだ。
そしてもう一つ気づいた。ビッケもザクトルも、魔力の扱いが異常に巧みだ。そこらの駆け出し冒険者など、足元にも及ばないだろう。
こちらの考察などお構いなしに、ビッケ達の魔鉄独楽の話は進み、独楽の加工方法に変わっていた。
「―――それでね。魔鋼の鏨に暖かい気を、入れ、入れ、と思いながら指先に力を込めると、鏨の先がこう光るんだよ。その光った先で、パパっと削るんだよ。コツはオーケンさんが教えてくれたんだ。面白いでしょ?」
ビッケが誇らしげに見せた独楽の溝加工を見て、背筋に冷たいものが走った。
魔鉱石などを採掘する鏨は高価な魔鋼だが採掘用に大量生産されているから比較的安く手に入る。問題はそこじゃない。魔鋼に魔力を込める技術そのものだ。魔鋼への魔力注入など、初級の魔術士が数ヶ月、下手をすれば一年以上を掛けて、修める技術だ。俺は動揺を抑えて問いかける。
「ザクトルもビッケみたいに溝加工が出来るのかい?」
「できるも何も、ザクトルは凄いんだ。僕より速くて、いっぱい削れるんだ。鏨だけじゃなくて手が白く光って格好良いんだよ。僕も光らせたいなぁ」
手が白く光る……それは身体強化魔法の初歩だ。それをビッケが視認できているなら、彼には魔術師としての天賦の才がある。この年齢で、遊びを通じてそれを修得させているとは。
ザクトルも初歩とはいえ身体強化魔法を習得しているとすれば、騎士を目指すことだってできる。しかも、この年齢となれば…先はどこまで伸びるのか、冷や汗がでる。
「何言ってるんだよ、ビッケ。お前の魔鉄で独楽を作るほうが、よっぽどすげぇよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
互いを認め合う微笑ましい友情だが、その内容がまたしても、問題だ。だめだ頭が痛くなってきた。
「魔鉄の独楽を作る?独楽は買っているんじゃないの?」
「いいや、ビッケ達が作ってくれるんだよ。鉛は身体に悪いらしくて、鍛冶屋で鉛の独楽が手にはいらなくなったからな。それで困っていたらオーケンのおっさんが魔鉄独楽の作り方を教えてくれたんだ」
「ザクトルも手伝ってくれるじゃないか。オーケンさんから道具も貰ったよね」
この街の子供たちは本当に仲が良い、話の内容さえ普通であるなら、心和む光景なんだが。
「どうやって作るんだ?」
「そんなに難しくはないよ。屑魔鉱石を鍛冶屋で分けて貰って、火を思い浮かべて、出てきた熱いモヤモヤを、グッて集めて、鉱石を包めば誰でも溶かせるよ。オーケンさんに見せて貰った時は驚いたけどね」
当日を思い出したのかビッケは、俺なんかには見せたことのない笑顔を浮かべている。
「あぁ、驚いたな。ビッケが溶かした魔鉄を水で何回も冷やすんだ。回数はビッケや勘良い奴が決めるんだけどな。そんで最後にガッツリ冷やすんだよ」
「ガッツリ冷やすんだ…最後」
要領を得ない二人の話を整理し、その「手順」を頭の中で組み立て直した俺は、終始無言だった。正直なところ、驚きを通り越して、呆れて言葉が出なかった。
まず、子供たちが当たり前のように使っている受け皿と型だ。それが高価な魔鋼製であると聞き、驚愕した。あの色褪せた服で街を歩いていたオーケン殿が、子供たちのために自身の小遣いの何ヶ月分を投じたのか。その献身に胸が熱くなると同時に、道具の「格」からして、オーケン殿が遊びの先を見据えていた未来を窺い知ることができる。
さらに驚愕したのは、その加工法だ。
ビッケたちは「熱いモヤモヤを集めて包むだけ」と笑うが、それは火魔法を長時間、一点に停滞させ、安定して運用し続けるという高度な技術だ。しかも、屑魔鉱石を数回に分けて溶かし、その都度水で冷やし固めるという。不純物を除き、魔力の通りを均一にするための「練り」の作業を、彼らは意識せず、遊びの工程としてこなしている。
そして仕上げの瞬間――。
一気に溶かした魔鉄を型に流し込み、ただの水ではなく鬼仙人掌の樹液に沈めて時間をかけて冷やす。
(それは魔鉄の硬度を極限まで引き出すために鍛冶師が用いる「焼き入れ」の技法じゃないか!)
火魔法による精錬、水による練り、そして鍛冶職の硬化処理。
オーケン殿は、この街の子供たちに「独楽作り」という皮を被せ、魔法師や騎士に辿り着くような「魔力操作の本質」を叩き込んでいたのだ。
なんてことを教えているんだ、あのオーケン殿は!
…だが―――
「なぁ、二人にお願いがあるんだ。その『魔鉄の独楽』の作り方を、俺にも教えてくれないか? もし教えてくれたら、ビッケの独楽の練習に付き合うし、ザクトルがやりたいなら剣の使い方も教えるよ。どうかな?」
二人は少し離れて、ヒソヒソと相談を始めたが長くはかからず、すぐに戻ってきた。ザクトルが俺を真っ直ぐに見つめる。
オーケン殿が放逐されてから三ヶ月、こんなに真っ直ぐな目で見られるのは初めてだ。
「ひとつだけ教えてくれ。ボナイは、オーケンのおっさんのこと、どう思っているんだ?」
予想もしていない質問だったが、二人の真剣な目を見て、俺は心の中にある本当の気持ちを話すことにした。
「前はね、オーケンさんのことが大嫌いだったんだ。いつもペコペコして、古びた服で街を歩いて……『騎士にもなれないのに、今の仕事にしがみついて、かっこ悪いな』って思ってた。でも、それは俺が間違ってたんだ。騎士になって、威張ることばかり考えるように、俺自身がなっていたんだ。
それに気づいて、自分が恥ずかしくなった。騎士とか、偉いとか、そんなことはどうでもよかったんだ。オーケン殿にとっては、この街のみんなを守ることが一番大切だったんだね。
俺の失敗でオーケン殿は街を出てしまったけれど、これからは僕がオーケン殿の代わりに、この街を守っていきたい。違うなオーケン殿の代わりなんかじゃなくて、僕自身がそうしたいんだ。オーケン殿が、その大切なことを教えてくれた……だから、俺にとっては『先生』みたいな人、オーケン殿みたいに俺はなりたいんだ。これで答えになるかな?」
「……よくわかんねぇ!」
頭をかきながらザクトルが言う。
「僕も難しいことはわからないけど、ボナイさんがオーケンさんのことを、とっても大事に思ってるのはわかったよ!」
ビッケはニコニコしながら、そう答えた。
「ははは、そうだよね。ちょっと難しい話すぎたかな」
(子供相手に、俺は一体何を熱く語っているんだろう……)
何でも難しく考えてしまうのが俺の悪いクセだな。簡単に考えれば答えは出てる。
独楽遊びは自分の修行にもなるはずだ。ビッケやザクトルとの修行は、きっと楽しいはずだ。
それに、この街を守るのにも役立ちそうな予感がする。
「それでいいじゃないか」と、俺は晴れやかな気持ちで微笑んだ。
「で、いつからにするんだよ?」
ザクトルが、照れくさそうにぶっきらぼうな声で聞いてくる。
「えっ?」
聞き返す俺に、ビッケが笑いながら答える。
「だから、いつから始めるんですか? 独楽作り。次のお休みの日からでいいですか?」
「……ふんっ。まあ、ビッケの練習相手は必要だしな。……来てもいいぞ!」
この日、俺に、この街に来て初めての「友達」ができた。




