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兄の優しさに触れ、僕は生きる
兄弟は仲がよかったわけではない。ただ親に捨てられ、互いの他に頼るもののないふたりにとって、寄り添いって生きる以外の選択肢はなかった。
誤解ないように補足すると兄は弟を最大限守ろうとしたし、実際に守った。着るものも食べ物も、全てを弟に優先させた。
ある冬のことだった。いよいよ食べ物は底をつき、弟はうつろな目で降り注ぐ雪を眺めていた。空腹に、かすむ視界。夢と現の狭間で、弟は兄が部屋を出ていくのを見ていた。止めはしなかった。そんな力もなかった。
数年後、ようやく訪れた平和に町は沸いた。その頃には弟はひとりで生きられるようになっていた。逞しく成長し、もはや雛鳥のように兄の羽の下の庇護を必要とはしなくなっていた。
あの冬の日、兄は弟のもとに肉を持ってきた。
黙ってそれを弟の前においた。
弟は肉を食べた。そうするしかなかった。例え、それが肉ではなく、毒であっても食べたろう。
兄はそのさまをじっっと見ていた。しかし、終に肉に手を出すことはなかった。
人喰い。
今、弟はそう呼ばれている。弟自身、真偽は知らない。知るのは神と兄だけだ。




