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死をもって償います

 眼前に広がるのは果てない荒海。足元は切り立った崖。一歩でも足を進めれば、命はないだろう。

 ひとりの若い女が思い詰めた表情でたたずむ。

 彼女はすべてを失ったのだ。


 優しい男だった。物腰は柔らかく、紳士的。

 しかし、彼の目的は彼女の身体と金だった。


 こうしてすべてを搾り取られた彼女は、こうして崖に身を乗り出している。

「さ、どうぞ」

 彼女とそう年の変わらない男がスマホの動画を回しながら、催促する。

 彼と彼女が顔を会わせたのはつい先ほど。ネットで知り合い、今日、この場で落ち合ったのだ。とある約束を取り決めて。

「…おねがいします、ね…」

 ひらり。

 …。

 水面に吸い込まれるように、ひとりの命が消えていった。


 スマホを手に、男はその様を余さず撮った。

「まったく、世の中どうなってんだろうな。自殺の瞬間を納めた映像が高く売れるなんてな。ま、人が死ぬ様を見て、自分が生きてるって実感ができるってことなんだろうが…」

 映像の売り上げの10パーセントは、彼女の親に振り込まれるのだそうだ。

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