愛か金か
Aには悩みがある。
Aには恋人がいる。容姿端麗、性格は穏やか、そして経済的にもかなり余裕がある。まさに非の打ち所のない彼女だ。
しかし、付き合って三年、いまだに身体の関係はない。彼女がやんわりと避けるのだ。
当初は潔癖なのかと思い、Aはそれを受け入れてきた。しかし、彼女への想いは募るばかり。
表面だけのコインが存在しないように、心の繋がりだけを以て愛とは成りがたい。心と身体は表裏一体なのだ。
Aの部屋で、Aと彼女はいつものようにくつろいでいた。
若いふたりが同じ空間にいれば、そういう雰囲気にもなる。
Aは彼女をそっと抱き締めた。しかし、彼女はするりと彼の手を離れた。
「僕は軽い男じゃない。君とは誠実に付き合ってきたつもりだ。なのになぜ?」Aが口を尖らせる。
彼女はしばし沈黙し、やがて徐に口を開いた。
「勘違いしないでいただきたいのです。私はあなたを愛しています。あなたの愛は私にも届いています」
「ならば、なぜ拒むのですか?」
「私が経済的に豊かなことはご存じでしょう?」
質問の意図が読めず、Aは戸惑った。そんなAをよそに彼女は続ける。
「信じがたいかもしれませんが、私は自分の体から金を出すことができるのです。ちょうど汗のような形で。それがあるために、私は経済的に困ることがないのです」
唐突な告白に、Aは言葉を失った。しかし、考えてみれば仕事もしていないはずなのに、彼女は確かにかなりのお金を持っている。そして、わずかばかりとは言え、Aがその恩恵に預かっていることは確かだった。
彼女は続ける。
「この体質は我が家の遺伝だと母から聞きました。しかし、金を出すことができるのは清い身体でいる間なのだそうです」
彼女はじっとAを見た。いままでで見たことがないほどの冷たい、無機質な視線。
「あなたは、私が金を出せなくなっても、私を愛し続けられますか?そして、金を失った私を幸せにできますか?」
彼女は目を細める。
「愛と金、どちらが大切ですか?」




