表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/143

愛か金か

 Aには悩みがある。


 Aには恋人がいる。容姿端麗、性格は穏やか、そして経済的にもかなり余裕がある。まさに非の打ち所のない彼女だ。

 しかし、付き合って三年、いまだに身体の関係はない。彼女がやんわりと避けるのだ。

 当初は潔癖なのかと思い、Aはそれを受け入れてきた。しかし、彼女への想いは募るばかり。

表面だけのコインが存在しないように、心の繋がりだけを以て愛とは成りがたい。心と身体は表裏一体なのだ。

 Aの部屋で、Aと彼女はいつものようにくつろいでいた。

 若いふたりが同じ空間にいれば、そういう雰囲気にもなる。

 Aは彼女をそっと抱き締めた。しかし、彼女はするりと彼の手を離れた。

「僕は軽い男じゃない。君とは誠実に付き合ってきたつもりだ。なのになぜ?」Aが口を尖らせる。

彼女はしばし沈黙し、やがて徐に口を開いた。

「勘違いしないでいただきたいのです。私はあなたを愛しています。あなたの愛は私にも届いています」

「ならば、なぜ拒むのですか?」

「私が経済的に豊かなことはご存じでしょう?」

質問の意図が読めず、Aは戸惑った。そんなAをよそに彼女は続ける。

「信じがたいかもしれませんが、私は自分の体から金を出すことができるのです。ちょうど汗のような形で。それがあるために、私は経済的に困ることがないのです」

唐突な告白に、Aは言葉を失った。しかし、考えてみれば仕事もしていないはずなのに、彼女は確かにかなりのお金を持っている。そして、わずかばかりとは言え、Aがその恩恵に預かっていることは確かだった。

 彼女は続ける。

「この体質は我が家の遺伝だと母から聞きました。しかし、金を出すことができるのは清い身体でいる間なのだそうです」

彼女はじっとAを見た。いままでで見たことがないほどの冷たい、無機質な視線。

「あなたは、私が金を出せなくなっても、私を愛し続けられますか?そして、金を失った私を幸せにできますか?」

彼女は目を細める。

「愛と(きん)、どちらが大切ですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ