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へらへら

 その子はへらへらしていた。

 

 時刻はもう日を跨いでいる。これだから遠方の取引先は嫌なんだ。早く自宅に戻りたくて車をとばす。

 そのときに、彼女を見つけた。

 制服を着ている所から見て女子学生だろう。長い黒髪と今時の子らしく手足が長い。きれいな子だ。

ただ、なぜこんな山奥にひとりでいるのか。なぜ、笑って、いや、へらへらしているのか。

 もしや、なにか犯罪にでも巻き込まれたのか。車を止めると、彼女はふらふらと寄ってきた。

 幸い、着衣に乱れはなかった。ほっとするのと当時に、それなら止まるんじゃなかったと後悔する。しかし、こうなった以上乗り掛かった船。

 仕方なく声をかける。

「彼氏にでも置いてかれたのかい」

警戒されないよう、なるべく声色を高くする。

彼女はへらへらしている。

「どっか行くあてでもあるのかい?」

へらへら。

「友達は?ひとり?」

へらへら。

「そうかい、勝手にしろ」

吐き捨てる。胸のむかつきを振り払うようにアクセルを踏み込む。

 帰宅すると、妻がまだ起きていた。

「ただいまー」

「おかえり」妻が振り返り、眉をひそめる。

「なにかあった?へらへらしちゃって」


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