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他人の気持ちを考えなさい!

 不愉快な存在は多々ある。例えば、目の前でイチャつくカップルとか。

 仕事帰り、電車に揺られている俺の前で、カップルがいちゃいちゃしている。いまにも、キスしそうな勢いだ。

 腹立つ。ムカつく。こっちは仕事帰りでへとへとだってのに、なんで他人のいちゃこらを見せつけられないといけないんだ。

 他人の気持ちを考えろ。

数日前に振られたことが思い出され、益々怒りがつのる。

 そのとき、連結部のドアが勢いよく開いた。制服姿の男がずかずかとカップルに近づく。腕には風紀委員の文字が。

「きみたち!仲睦まじいのは結構だが、みんながみんな、恋人と上手くいってるわけじゃないんだ。他人の気持ちを考えなさい!取り合えず、次の駅で降りてね。始末書と罰金払ってもらうから」

 不満げなカップル。ざまあみろ。俺は内心ほくそ笑む。

 くるり、と。制服姿の男が俺をみる。

「きみ!いかにも仕事疲れって感じだね。それは結構だが、みんながみんな働けているわけじゃないんだ。他人の気持ちを考えなさい。それと、立派なスーツだね。それは結構だが、みんながみんなそんないい服を着れるわけじゃないんだ。他人の気持ちを考えなさい。それと、いかにも若さに溢れてる感じだね。それは結構だが、みんながみんな若いわけじゃないんだ。他人の気持ちを考えなさい。それと、『生』に溢れてるね。それは結構だが、みんながみんな、生きてるわけじゃないんだ。ヒトの気持ちを考えなさい。それと…」

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