貧乏神 基子
期待は失望へ。失望は敵意に変わった。
みんなが期待していた。転校生に。なのにやって来たのはボサボサ髪の野暮ったい娘。しかもどうしようもない根暗だった。
基子。彼女がいじめの対象になったのは転校後わずか3日だった。物を盗られ、ノートをやぶられ、陰口を叩かれ、笑われ、面と向かってバカにされはじめた。しかし基子は、
「あぁ、うん」
この一言をまるで免罪符であるかのように繰り返した。
わたしはその輪に加わらなかった。なぜか。それは基子の「前任」がわたしだったからだ。
わたしがいじめられたきっかけはケータイだった。わたしの母は入院している。そのため、何かあればいつでもわたしに連絡がとれるようにと、特別にケータイを持つことを許可されていた。
それがみんなのシャクに触った。正直、みんな隠れてケータイくらい持ってるけど。
ある日のこと、わたしは基子と偶然鉢合わせた。基子は裸足で、手には泥で汚れた上履きを持っていた。
「捨てられたの?」
「あぁ、うん」
基子は無感情にいつもの言葉を口にした。そしてそのままわたしの側を通り抜けようとした。
わたしは思わず呼び止めた。
「ねえ!どうして平気なの?辛くないの?!」
「あぁ、うん」基子はくるりと振り向いた。やっと彼女の焦点がわたしに合った。
「あたし、実は貧乏神なんだ」
突然の告白にわたしは二の句を告げなかった。貧乏神?
基子は国語の朗読でもするみたいに淡々と口を動かした。
「あたしの周りにいる人ってみーんな不幸になるの。だから、みんなにはあたしを嫌ってほしいの。ゴミみたいに扱ってほしいの。ありったけの悪意をあたしに向けてほしいの。だってそうなれば、あたしがみんなを不幸にしても、あたしは罪悪感を持たなくてすむでしょ」
ぴりりり…。わたしのケータイがなる。
着信 病院




