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血と骨
小銭を拾った。よく見ると、日本のお金ではなかった。長い髭の老人の横顔が彫られた硬貨だった。ゲーセンのものにしては凝ったデザインだ。しかし、興味はない。放り捨てる。
「拾え」
乾いた、枯れ木を擦ったような声。突然のことに思わず振り返る。誰もいない。
「拾え」
胃に冷や水を流し込まれたかのように、ぞくっと悪寒が走った。
声が、あの硬貨から聞こえた気がしたからだ。
「拾え」
走る。なのに、声は耳元から聞こえる。
「拾え」
意味がないと、直感でわかっていながら耳を塞ぐ。
「拾え」
消えてくれ。頼む。
「なら、こちらからいこう」
唾液の垂れるようなねばっこい声色。え?思わず足が止まる。
その時、自分が道路のど真ん中で立ち往生していることに気づいた。
衝撃。痛み。飛び出る血、そして骨。
徐々にぼやける視界が最期に捉えたものは、捨てたはずの硬貨が、手元に転がっている風景だった。
血濡れて、ぬらぬらと輝く硬貨の真ん中で、老人が薄笑い浮かべているようにうつった。




