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好奇心は猫を殺し、時は廻る

 手袋を拾った。大人びたデザインのやつだ。視線を走らせると落とし主を見つけた。小学生くらいの幼い女の子だ。

「おーい。落としたよ」

女の子は止まらずに人混みのなかをすり抜けていく。

人助けだと思い、追いかける。

 女の子は意外と足が早く、なかなか追い付けない。久々の疾走で息がきれる。熱くなり、自分の黒い手袋をはずしてポケットにねじこむ。

 やがて、女の子は古いビルに消えた。やっと追い付き、見ると長い階段があった。そこには幼い女の子…ではなく少女が僕に背を向け階段を上っていた。

「ねえ、きみ」

僕の呼び掛けに少女が振り向く。直感で幼い女の子の姉だと感じた。小学校高学年くらいだろう。利発そうな眼をしている。

「こないで」

短く、そう言い放つと少女は僕に背を向け階段を駆け上る。

 ここまで来てそんな訳にいくか。手袋を渡すだけだぞ。僕も階段に足を駆け、のぼる。

 少女は階段をあがる。その背がぐんぐんと伸び、体つきも女性らしい丸みを帯びたものになる。まるで成長の過程を早送りでみるような…。

 少女から、均整のとれたプロポーションの女性へ。そして、円熟した妙齢へと。さらに、少しずつ腰が曲がり、頭には白髪が…。

その段になって、ようやく僕は少女に、いや、老婆に追い付いた。

 状況はまるで理解できないが、手袋を差し出す。

「これを、、、」

自分の声に、驚く。しわがれ、張りの無いかれた声だったからだ。さらに、手袋を差し出した手も、まるで枯れ枝のようだった。

 そんな僕を尻目に老婆は手袋を受けとると、落ち着いた笑みを浮かべた。

「ありがとうね。でも、これ以上は来たらいけませんよ」

そう言って、階段の果てにあった古いドアを押し開け、姿を消した。

 どのくらい僕はへたり込んでいただろう。気づくと、日の光が階下を照らしていた。

 僕の身体はいつも通りだ。枯れてなどいない。あれはなんだったんだ。

 いま、僕の目の前には例のドアがある。僕は錆びたドアノブに手を掛け、押し開く…











 手袋を拾いました。男性用でしょうか。黒い手袋です。視線を走らせると、落とし主が視界のすみにちらりと移りました。幼い男の子。

「おーい。落としたよー」

男の子は止まらずに人混みのなかをすり抜けていく。

一日一善。そう思い、追いかける。

 

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