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もう、いいや

 悶々と天井を睨み付ける。もう、何時間も寝転がっている。することは山ほどあるのに何もする気にならない。

 パチっと。まばたきした瞬間、自室とは異なる場所に移っていた。

まるでゲルニカの世界に飛び込んでしまったかのようなカオスな空間。その中央に、スーツ姿の男が。手には一枚のプラカード。

「人生、やりなおしますか?」

 明子に振られて以降、俺の人生は狂いっぱなしだ。あの時、安っぽいプライドを大事にしたせいで…。

そして、明子は今、別の男と結婚しているらしい。

「どうする?」

スーツ姿の男の声は妙にカン高く、黒板を引っ掻いたような音。

状況はよく飲み込めないが、もしできることなら。

「やり直したい」

 パチッと。まばたきした瞬間、俺は別の場所に移っていた。

 時刻は夕方。住宅街の路地で、俺は一人立ち尽くしていた。手には鞄を持ち、ぱりっとしたスーツ姿。

 記憶が流れ込んでくる。

そうだ。あの時、俺は明子と仲直りできたのだ。そして結婚し、今は明子と幸せに暮らしている。そして彼女のお腹には俺の子が…。

 仕事終わり、今は同僚との飲みも断って家庭に帰っている途中。

 さあ、はやく帰っ-----

 突然の激痛。その場に崩れ落ちる。振りかえる。

 男。見たこともない奴だ。ぼさぼさで、いかにも落ちぶれている。手には赤い、ナイフ。俺の血で染まった、ナイフ。

「お、おまえのせいだ」

男は密林のように伸び放題のひげを震わせて俺をにらむ。

「おまえが明子を奪ったんだ!そのせいで、おれは!」

男がナイフを振り上げる。

 気づく。男の背後に、プラカードを持ったスーツ姿の男が。

「人生、やりなおしますか?」

 ナイフが、俺目掛けて急降下してくる。

「どうする?」

妙に高い、黒板を引っ掻くような声。

 俺の答えは…

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