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僕の妹は、ヘビ

 僕の妹はヘビだ。あの、細長くて胴長の、ヘビだ。

 

 最近、妹の様子がおかしい。普段なら、憎まれ口ばかりのくせに妙にしおらしい。と、いうより元気がない。

「食わねえならもらうぞ」

朝食。あーと口を開けて、妹の分を食べようとする。ちらりと妹を見るが、まるで反応がない。

 結局、妹は、家を出るまで一言もしゃべらなかった。

「やっぱり気にしてるのよね」母が呟く。

「いまさら?」僕はのんびりとご飯を食べ進める。

「あの娘も、もう思春期だもの。自分の姿形が、その…「違う」ことを気に病んでるのよ。きっと」

 母の目に涙が浮かぶ。

 父を喪って以降、母の拠り所は僕と妹になった。妹が、ヘビであることを、妹よりも気にしているのは母だろう。

 僕はそんな母を見て、これはなんとかせねばと胸に誓った。

 …おっと。のんびり感傷に浸っている場合じゃなかった。

 僕は学校に飛んで向かった。


 ヘビである妹は、学校でも目立つ存在だ。初雪のような白い肌に、妖しげな魅力を秘めた赤い瞳。

しかし、目立つ容姿と裏腹に、性格は典型的な内弁慶だ。それも、やはり他人と姿が「異なる」ことがネックだったのかもしれない。

「で、返事は?」ずいっとヤンキー崩れが詰め寄る。

 妹はするすると器用に後ずさった。伏し目で、見るからに辛そうだ。

「あ、あの、ですから、おことわり…」

「え?!なんて?!」取り巻き連中が下品な声で叫ぶ。

「ご、ごめんなさい…」妹はますます萎縮している。

「じゃあ今日から俺とキミは恋仲ってことで」

わっと周囲が沸く。ヤンキーはふんふんと鼻の穴をふくらます。

 1対5で取り囲んで告白か。告白というよりは脅迫だ。

 まさに藪蛇かと思って、黙ってみていたが限界だ。僕の大事な家族を脅すなんていい度胸だ!

 その場から飛び出し、取り巻きを押し潰す。

 怯えきった妹の姿をみて益々怒りが燃え上がる。僕は激怒した。それこそ火を吐くほどに。


「ごめんね…」妹がポツリと呟く。 

 久々の大乱闘。僕も、もちろん無事ではなかったが、あいつらは二度と妹にちょっかいを出す気にはならないはずだ。

「気にするな。黙ってたのは、母さんに迷惑かけたくなかったからだろ」

妹はちょこっと頷く。

 兄妹並んで黙って、歩を進める。そのとき、遠くから妹を呼ぶ声がした。視線を上げると、見知らぬの娘たちが飛んできた。

妹の友達らしい。心配して来てくれたようだ。

「行ってこいよ」

「おにいちゃんは?」

「帰る。帰って寝る」

翼を広げ、飛び立とうと力を込めたとき、僕の背に妹の声が届いた。

「ありがとう!お兄ちゃん。わたし、お母さんとお兄ちゃんと家族でよかった」

 僕はひらひらと爪を振ってそれに応えた。そして飛び立つ。

 はるか下では、白蛇の妹と、その友達のドラゴンの娘たちがなにやら話している。

 母さんには心配ないと伝えよう。妹はうまくやってるってね。

 僕は家路に向かって、大空に羽ばたいた。


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