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すべて我が子のため

 ○は30過ぎの看護師。つい最近まで育児休暇をとっていたが、娘が5才になり、復職することを決めたのだった。 

 産婦人科の同僚たちは○を温かく迎えてくれた。○自身もあたらしい命の生まれるこの仕事にたいする熱意が強まっていくのを感じた。

 ある日の夜勤。○は新生児たちが眠る部屋の様子を見に行った。

 小さなベッドにちょこんと収まり、すやすやと眠るあかちゃんたち。この子たちそれぞれが、将来のスターになるんだ。

5才になる娘のことを想いながら○は感傷に浸った。

 そんな時だった。新生児室に誰かいることに気づいたのは。

 真っ黒なコートに手袋。医者や赤ちゃんたちの親でないのは確かだ。

男はひとつのベッドに近づき、蓋を開けた。そしてなかですやすやと眠る赤ちゃんの首に手をかけ、、、。

 ○は部屋に飛び込み、男に飛びかかった。

「なにやってるですか!離れなさい!」

○は男をベッドから引き剥がした。しかし男はまるで悪びれた風もなく、

「あぁ、あなたは、、」などと言い、けろりとしている。

 その様子に○はますます怒りが込み上げた。

「どなたか知りませんが、すぐに出ていきなさい。警察呼びますよ」

男はひらひらと手をふった。

「いやいや。無駄ですよ。信じられんかもしれませんが、わたしは、いわゆる死神ってやつでね」

「何をふざけてるんですか!」

「最後まで聞いてください。実は、いまわたしがあの世につれていこうとしたこの子、ええ、この赤ん坊です。この子はあと十数年後に死神のわたしでも虫酸が走るような事件を起こす運命でね。だから今のうちに死ぬほうがみんなのためなんですよ」

○は青白い男の顔を見た。血の気のない薄い唇から発せられた言葉はにわかには信じがたい。

しかし明らかに尋常ではない男の雰囲気に○は飲まれてしまった。

 だが、○の脳裏に5才の娘の姿がうかんだ。子どもは無邪気で純粋な存在だ。その子たちが将来はまだ白紙だ。どうなるかなんて、たとえ神さまでも勝手に断じて、ましてや間引くなんてしていいわけがない。

 ○はきっと男をにらんだ。

「もしあなたの言うことが正しくても、わたしはあなたの行為を見過ごすわけにはいきません!子どもは宝です。どこまでも真っ白で、無限の可能性を秘めた存在なんです。あなたがどこの誰であっても、運命だなんて言葉でその子の将来を奪わないでください!」

「この子が将来、あなたの娘さんを殺すんですよ」









 ××病院で新生児死亡。死因は心臓麻痺で、病院側は対応に不備はなかったと主張しており、、、、、、、、、、。

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