最近の人は酒に弱いね
「さあ、出来た。これで人類みな兄弟だ!」
博士の声に助手がびくりと肩を震わす。どこかぼんやりした印象の助手がおそるおそる尋ねる。
「なんです、その液体は?」
「これは体内の酒を分解する酵素の働きを極限に高める薬だ。いまの奴らは酒を飲むと陽気になる前にすぐぐでんぐでんに酔っ払ってしまう。なんとも情けない。しかし、これを飲めば酒に強くなりグイグイ飲めるようになる」
「はあ。なるほど。酒造メーカーが喜びそうな薬ですね」
「まったく、そんな発想しかできないのか。これを飲めば酒に強くなる。西洋人は酒を樽で飲み、陽気になることで一気に心の距離を詰めるのだ。我が民族は統計的に酒に弱いことが分かっている。しかし、それも今日までだ。陽気で破廉恥な馬鹿騒ぎができるようになり、ひいては経済が回り、ついでに子どもも増える。いい事ずくめだぞ。」
「なるほどその通りですね。ではさっそく臨床者を募りましょう」
「そんな悠長に構えてられん。ミサイルに搭載してばらまくぞ!!」
50年後。
とある学校の休み時間。教室で生徒が缶ビールを一気に飲み干す。しかし顔をしかめ、ちっとも楽しそうでない。
「苦いな。テストで悪い点数だったから気を紛らわそうと思ったのに。」
別の生徒が口を挟む。
「酒なんて飲んでもちっとも楽しくねえ。いくら飲んだって腹にたまるだけ。苦い水と一緒さ。おい、炭酸でも飲もうぜ」
弱い、ということも時には強みになるのかもしれない。
なんにせよ、程々が大切。




