↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
134/143

空を見る彼女は待っている

 彼女に声をかけたのは酔っていたからだ。

 

 飲み会に行く前にちらっと見かけた彼女は、ひどく頼り無さげで、強い風が吹けばふいっと消えてしまいそうに見えた。

 三次会を抜け出し、終電を気にしながら歩いていたとき、再び彼女を見かけた。

 まったく同じ場所、格好。デジャヴゥだと思い、お酒の力もあって、好奇心を抑えきれなかった。

「どうしたんですか?」

彼女はゆっくりと僕に視線を下ろした。意外にも警戒はされていないようだった。

「待っているのです。人を」

「でも、あなたもう何時間もここにいますよね」

「ええ。もうすぐ来るはずです。彼はとても優しいのですから」

彼氏持ちか。早めに立ち去ろうかとも思ったが、恋人を待つにしては、彼女からは弾むような嬉々とした雰囲気を感じない。

 彼女は再び視線を中空に戻した。

「わたしを気にかけてくださっているのですね。ありがとうございます」

「女性がひとりでずっと道で立ち尽くしていれば、普通は気になりますよ」

「あなたはいいひとですね。…彼もあなたのようであれば、わたしは待たずにすんだのかもしれません」

 言葉の意味は聞けなかった。

 僕の目の前に人が、かつて人だったモノが落ちてきた。熟れたトマトがつぶれるような音をたて、ソレはコンクリートの地面を赤く染めた。

 男性であることは体格からわかった。彼女の姿はどこにも、ない。

 事態に気づいた周囲がざわめきはじめる。

  

 携帯を取りだし、ボタンを押す。しかし、途中でやめた。この理由を上手く言葉にはできない。


 ただ、これで彼女はもう待たずにすむな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。