運命の傘
コンビニで傘をパクった。突然降ってきた雨のせいだ。しかも、途中で止みやがった。腹立たしい。そのとき、傘の柄にぷらぷらとネームプレートがぶら下がっていた。薄汚れていて名前は読めない。苛立ち紛れに傘を溝に放り捨てる。ババアが俺をじっと非難するように見ていた。負けずに睨み返す。
ちっ。舌打ちして、そのままアパートに帰った。
翌朝、乱暴なノック音で目が覚めた。無視しようと思ったが、いつまでも成り止まないので仕方なくでる。
「警察です」無骨な男がたっていた。「署までご同行願えますか?」
若い刑事が喫煙ルームに行くと、そこには先輩の刑事がいた。いまどき時代遅れの無骨な男だ。
「事件解決おめでとうございます」一応、頭をさげる。
「おう」ぶすっと応じる。
「偶然、お婆さんが傘を捨てる現場を目撃して、それを警官に通報して。偶然、その傘が被害者の物で。偶然、その傘についていた指紋を調べたら前科者にヒットして。そして任意同行したら自白したんですよね。でもなにより、被害者が以前コンビニに忘れた傘を、偶然、犯人が盗むなんて、なんか神がかり的ですよね」
「カミサマなんて信じねぇな。悪いことすりゃあ捕まる。自明の理ってやつだ」
無骨な刑事はタバコを揉み消した。若い刑事は肩をすくめてみせる。
打ち捨てられた傘は、保管室で二度と帰ってこない持ち主を町続けている。




