オカルト好きな彼女
俺の彼女のAはオカルト好きだ。「ゎたしー、ユウレイとかみえちゃうんですょー」…などとぬかす。出会った当初はそのブリッ子を可愛いと思ったものだ。しかし、流石にお互いに二十歳を越えたいい年なのにも関わらず、未だに幽霊がどうこうなどと言うAに、内心眉をひそめていた。端的に、頭が軽いんじゃいなかな、と。
切っ掛けは忘れた。5階にある俺のマンションの部屋で、Aとふとしたことで口喧嘩になった。勢いは止まらず、俺は思わず、
「だいたいよ、なにが幽霊が見える、だよ!そんなもんいるわけねぇだろ!」
「ひどーい」口をすぼめるA。その子供っぽい仕草に余計苛立つ。「ほんとにいるんだもん、ゎたし、みえるもん」
「いねぇよ」
「いるもん!」
結局、喧嘩別れになってしまった。
数日後、ひとり寂しく部屋に横になっていた。嫌になることはあっても、Aがいないと胸に穴が空いたような虚無感に苛まれる。
ぶるるる…。スマホが鳴る。女友達からだ。Aは彼女から紹介してもらったのだ。
「もしもし」
「ねぇ!今何してんの?!」
「何って…家でヒマしてるよ」
「Aが、Aが!飛び降りたのよ!」電話越しに涙声が響く。胃の腑がすとん、と落ちていくような感じ。
「Aが飛び降りた?!な、なんで…なんでだよ!」
「知らないわよ。でも、あのコ、「幽霊をあんたに見せるんだ」って言ってたわ」
まさか。そんな、そんな理由で?!
「そ、それでAは今どこにいるんだ?!」
「○病院で治療受けてるわ、でも正直危ないらしいわ」
居ても立っても入られず、財布を引っ付かんで立ち上がる。すぐに病院にいかないと!
カチリッ…。ドアの開く音。
思わず足が止まる。誰だ。この大変な時に。
ふと、脳裏をよぎる、違和感。このマンションはオートロックだ、鍵を持った家主は別として、住人以外が入るためには家主が部屋の中から入り口のオートロックを解除する必要がある。
あり得ない想像がよぎる。A?
「A…なのか?」
謎の侵入者は、廊下をゆったりと進んでいるようだ。電気も点けず。
リビングと廊下を隔てる磨りガラスのドアに、侵入者の姿が写る。
Aだ。Aの姿だ。そんなわけがない、だってAはいま病院。
友人の声がよみがえる。
「幽霊をあんたにみせるんだ」
ドアノブが傾く。ゆっくりと開かれる、ドア。そこには、真っ赤に染まったAが…。
「ぁ、もしもしぃー。ぁりがとねぇ、うまくいったよぉー」
「ならいいけど、あいつ、どうなったの?」
「んーきぜつしてるぅー。ユウレイなんていないってぇ、ゆってるくせになさけないよねぇ」
血糊をぬぐいAはにへらっと笑う。電話越しに友人も笑い声をたてる。
Aは内緒で作った合鍵を指に引っ掻け、くるくるともてあそぶ。
「これでぇ、ゎたしのこと、みなおしてくれるかな?」
白目をむいてぶっ倒れている彼氏に、Aはそっとキスをした。




