天使と炭酸
まさにイメージ通り。
天使は窓からやってきた。白い羽、ガラスのように透き通った肌に、艶めいた髪が春風に柔らかく揺れる。上下の繋がった新雪色のワンピースの裾が、彼(あるいは彼女)が動く度にふわり…とはためく。
「はじめまして。天使のあまつかと申します」凛々とした声。小さな頭を優雅にさげる。スッと顔をあげて、ひた…と僕を見据える、その瞳は気品溢れる宝石のようだ。
「早速ですが、あなたは何ができますか。それに応じて祝福いたします」
何ができるか、だって?まさか一発芸だとか、大して美味しくもない手料理を出すわけにもいかない。なにせ相手は天使なのだ。そしてなにより、「それに応じて」祝福は変化するのだという。
悩む僕。じっと待つ天使のあまつかさん。時計の針の音がやけに大きく聞こえる。早く、早く、早く、早く、と。
「あまつかさん」
「はい」
「何かして欲しいこととか、ありませんか?」
天使のあまつかさんはふっと笑みをこぼした。桃色の唇に指をあて、んー…と首をかしげる。
「のどが乾いております。ジュースをいただけませんでしょうか。出来れば炭酸の」
僕はくつくつと笑った。天使と炭酸の組み合わせは、失礼かもしれないが、異色だったからだ。
冷蔵庫から炭酸のジュースを取りだし、ガラスのコップに注ぐ。しゅわしゅわと楽しげに泡立つ。コップを天使のあまつかさんに手渡す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」腰に手をあて、のどをあらわにごくごくと飲み干す天使のあまつかさん。いいのみっぷりだ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
こうして天使のあまつかさんは来たときと同じように窓から去っていった。
さてどんな祝福が僕を待っているのだろう。それはきっと無くした物が思いがけず出てくるとか、自販機でもう一本当たって出てくるとかそんなものだろう。
ガラスのコップの内側、ジュースの雫がつーっとつたっていた。




