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【1】宗明:優美な曲線
部下が出してきた書類を見て、領主の宗明は訝しんだ。
この部下が出す書類は、いつもどこか抜けている。それが今日は完璧だ。正確で緻密な論旨が、詩的な文章で綴られている。
見上げてくる部下は、そわそわと落ち着きがない。何か隠し事をしているようだ。宗明が目を細めると、部下は「失礼いたしました」と頭を下げた。
「やはり、領主さまにはお見通しですね。こちら、私が整えた文章ではありません」
「では誰が」
「街の代筆屋でございます」
部下が言うには、街にたいそう腕利きの代筆屋があるらしい。内容や用途を告げるだけで、文章を整え、依頼主そっくりの筆跡で代筆をする。
宗明はもう一度、部下が出してきた書類を見る。
(どこかで見たことがあるような――)
筆跡は、部下のものにそっくりだ。しかし、ほんの少しだけ、曲線が優美すぎる気がする。この詩的な文章にも覚えがある。
(この曲線)
指でなぞってみる。
(あいつにそっくりだ……)
心の奥にしまい込んでいた記憶がよみがえる。
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