『死を纏う四枚目』【7】
ドンッ――!!!
かつて――
大陸最強と呼ばれた。
死者の騎士団が。
一斉に――
地面を蹴った。
ガァン――!!
シオン「っ!!」
剣と盾が――
激しく。
ぶつかる。
その瞬間。
ヒュン――!!
シオン「――!」
盾の陰から。
槍が――
突き出される。
だが。
その穂先が――
届くより先に。
シオンは――
身体を捻る。
未来に見えた――
一撃。
紙一重で――
躱す。
シオン「そこだ!!」
盾を持つ騎士の――
脇。
一瞬だけ。
空いた――
隙。
そこへ。
剣を――
振るう。
だが。
シオン「――!?」
その未来。
シオンの腹を――
槍が。
貫いている。
シオン「っ!!」
振りかけた剣を――
止める。
バッ――!!
後ろへ――
飛ぶ。
直後。
ヒュン――!!
先ほどまで。
シオンの腹があった場所を――
槍が。
通り抜ける。
シオン「…………」
なら――
槍を。
先に――
斬る。
シオン「…………!」
見えた未来。
槍兵へ――
踏み込んだ。
その瞬間。
背後から――
剣。
シオン「…………」
なら。
そいつを――
避ける。
だが。
その先では――
盾が。
シオンの身体を――
押し潰す。
シオン「…………!」
一つ。
避ける。
その先に――
もう一つ。
さらに――
その先にも。
別の一撃。
シオン「こいつら――」
ガァン――!!
再び。
盾を――
剣で受ける。
シオン「一人ずつじゃない……!!」
ヒュン――!!
シオン「っ!!」
槍を――
躱す。
シオン「全員で――」
シオン「一人みたいに動いてる!!」
その横。
セイ「…………」
騎士が――
剣を振り上げる。
セイは。
半歩――
踏み込む。
その懐。
ザンッ――!!
首へ――
正確な一閃。
だが。
ガァン――!!
セイ「――!?」
その剣を。
横から――
盾が。
受け止める。
同時に。
ヒュン――!!
セイ「っ!!」
槍。
身体を――
反らす。
頬を。
穂先が――
掠める。
シュッ――
僅かに。
血が――
飛ぶ。
セイ「…………」
着地。
その瞬間。
今度は――
背後。
ブォン――!!
セイ「っ!!」
剣が――
髪を。
僅かに――
斬る。
セイ「…………」
セイ「めんどくせぇ……」
ザッ――!!
距離を取る。
セイ「一人斬ろうとしたら――」
セイ「全員出てくんのかよ」
そして。
A「…………」
その前には。
三人の――
盾兵。
その後ろ。
何本もの――
槍。
A「…………」
盾兵が――
同時に。
前へ。
A「…………」
剣を――
握る。
そして。
一振り。
ズバァァァン――!!!
盾ごと。
一人の騎士が――
斬り裂かれる。
だが。
その瞬間。
ヒュン――!!
ヒュン――!!
ヒュン――!!
A「…………!」
斬った騎士の――
背後から。
三本の槍が――
同時に。
Aへ。
迫る。
A「…………」
バッ――!!
身体を――
捻る。
一本。
躱す。
ガキン――!!
もう一本を――
剣で弾く。
だが。
三本目。
シュッ――!!
A「…………」
肩を――
僅かに。
掠める。
セイ「…………!」
シオン「A!!」
A「…………」
肩から。
細い――
血。
Aは。
それを見る。
そして。
再び――
騎士団へ。
視線を向ける。
A「…………」
A「厄介だな」
ザッ――!!
再び。
騎士たちが――
陣形を組む。
倒れた一人の――
穴へ。
別の騎士が――
入る。
盾。
槍。
剣。
瞬く間に――
元の形へ。
シオン「…………!」
セイ「マジかよ……」
一人――
倒しても。
崩れない。
欠けた場所を。
次の一人が――
埋める。
そして。
再び――
一つになる。
シオン「…………」
未来を見る。
一人を――
斬る。
その未来は。
駄目。
別の一人を――
狙う。
それも――
駄目。
さらに――
別の未来。
シオン「…………」
何度。
見ても。
一人で――
踏み込んだ先には。
必ず。
別の騎士の――
刃がある。
シオン「…………」
その時。
シオンの目が――
Aへ。
そして。
セイへ。
向く。
シオン「…………」
一人で――
駄目なら。
シオン「A!!」
A「?」
シオン「右から三人目!!」
A「…………」
シオン「セイ!!」
セイ「あ!?」
シオン「その後ろの槍!!」
セイ「はぁ!?」
シオン「いいからやれ!!」
セイ「急に命令すんな!!」
シオン「来るぞ!!」
セイ「っ――!!」
騎士団が――
動く。
シオン「今だ!!」
ダッ――!!
セイが――
先に。
地面を蹴る。
槍兵へ。
一直線。
だが。
その前へ――
盾兵。
シオン「そこ!!」
ザンッ――!!
シオンが――
盾兵へ。
剣を振る。
ガァン――!!
盾が――
シオンを受け止める。
その瞬間。
槍兵の意識が――
僅かに。
シオンへ。
向く。
セイ「…………!」
ほんの――
一瞬。
ザンッ――!!
セイの剣が。
槍を持つ――
腕を斬る。
そして。
それを守るため。
もう一人の騎士が――
動く。
シオン「A!!」
陣形に――
穴。
A「…………」
A「そこか」
一歩。
踏み込む。
剣を――
一振り。
ズバァァァァン――!!!
騎士たち「――――」
一人。
二人。
さらに――
その後ろ。
連なっていた騎士たちが――
まとめて。
斬り伏せられる。
セイ「…………!」
シオン「よし!!」
崩れた。
初めて――
騎士団の陣形が。
大きく――
崩れる。
だが。
シオン「…………!」
残った騎士たちが――
すぐに。
動く。
盾が――
前へ。
槍が――
その後ろへ。
セイ「まだ組み直すのかよ!!」
シオン「だったら――」
シオン「もう一回崩す!!」
そこから。
何度も――
何度も。
騎士団が――
陣形を組む。
その度に。
シオンが――
未来を見る。
シオン「セイ!!」
セイ「分かってる!!」
ザンッ――!!
シオン「A!!」
A「…………」
ズバァァァン――!!
未来を――
読む。
穴を――
作る。
そして。
斬る。
だが。
騎士団も――
止まらない。
ガァン――!!
シオン「ぐっ!!」
盾に――
弾き飛ばされる。
セイ「シオン!!」
シオン「大丈夫だ!!」
ヒュン――!!
セイ「っ!!」
槍が――
脇腹を。
浅く――
裂く。
セイ「…………!」
そして。
Aにも。
幾つもの――
浅い傷。
それでも。
一人。
また――
一人。
確実に。
騎士団の数が――
減っていく。
そして――
ガァン――!!
最後の――
激突。
シオン「今だ!!」
セイ「おらぁ!!」
ザンッ――!!
一人。
A「…………」
ズバァァァン――!!
さらに――
一人。
ドサッ――
ドサッ――
シオン「はぁ……」
シオン「はぁ……」
セイ「…………」
セイ「はぁ……」
セイ「はぁ……」
A「…………」
三人の前。
残ったのは――
二人。
一人は。
他の騎士より――
一回り大きな。
重厚な鎧。
傷だらけの――
大盾と剣。
そして。
その隣。
細身の剣を――
静かに構える。
もう一人。
二人だけになっても――
構えは。
崩れない。
セイ「…………」
セイ「大陸最強っての――」
セイ「伊達じゃねぇな……」
シオン「…………」
肩で――
息をする。
その視線が。
二人の――
さらに奥。
No.4へ。
向く。
No.4「…………」
変わらず。
静かに――
そこにいる。
A「シオン」
シオン「……?」
A「ここは――」
A「俺たちでやる」
A「お前は――」
A「No.4のところへ行け」
シオン「…………」
セイ「…………」
シオン「……分かった」
セイ「さっさと行けよ」
シオン「お前ら――」
シオン「任せた!!」
ダッ――!!
シオンが――
地面を蹴る。
残った二人の――
横を。
駆け抜ける。
No.4「…………」
向かってくる――
シオン。
静かに――
見つめる。
そして。
その手が。
棺桶へ――
伸びる。
シオン「…………!」
ギィィィィ――
蓋が――
開く。
底の見えない――
闇。
その奥から。
一つ。
人の形をした――
淡い光が。
浮かび上がる。
シオン「また――」
シオン「誰か出す気か!!」
光は――
棺桶を抜ける。
そして。
墓苑の――
別の場所へ。
A「…………」
その瞬間。
Aの目が――
変わる。
光が――
一つの亡骸へ。
吸い込まれる。
ドクン――
A「…………」
ドクン――
ゆっくりと。
男が――
身体を起こす。
古びた――
鎧。
その手が。
傍らに置かれていた――
一本の剣を。
掴む。
A「…………」
立ち上がった――
男。
その姿を。
Aだけが――
じっと。
見つめている。
そして。
その口元が――
僅かに。
上がる。
A「…………」
A「やっぱり――」
A「出てきたか」
セイ「……?」
A「セイ」
セイ「あ?」
A「あとは任せた」
セイ「…………」
セイ「は?」
Aは――
残った騎士たちから。
視線を外す。
そして。
男へ――
歩き出す。
セイ「いやいやいや!!」
セイ「待て待て!!」
セイ「お前――」
セイ「俺一人で!!」
セイ「こいつら二人同時に」
セイ「相手しろってのかよ!!」
A「お前なら――」
A「大丈夫だろ」
セイ「そういう問題じゃねぇよ!!」
A「頼んだ」
セイ「頼んだじゃねぇよ!!」
シオン「A……!?」
走りながら――
シオンが。
振り返る。
A「シオン!!」
シオン「…………!」
A「そのまま行け!!」
Aは――
男から。
目を離さない。
A「こいつは――」
A「俺に戦わせろ」
シオン「…………」
A「そのために――」
A「今回は」
A「ついてきた」
シオン「…………!」
シオン「こいつ――」
シオン「知ってるのか!?」
A「…………」
A「ああ」
剣を――
握る。
A「俺の――」
A「師匠だ」
シオン「…………!」
セイ「はぁ!?」
セイ「お前の師匠!?」
A「…………」
Aは――
答えない。
その先。
かつての師が――
剣を構える。
A「行け」
A「シオン」
シオン「…………」
シオン「ああ!!」
再び――
前を向く。
ダッ――!!
その後ろ。
残った――
二人の騎士が。
セイへ――
向き直る。
セイ「…………」
セイ「マジかよ……」
二つの――
剣先。
セイ「…………」
セイ「ったく――」
剣を――
構える。
セイ「二人まとめて――」
セイ「来いよ」
そして。
そのさらに奥。
シオンが――
No.4へ。
迫る。
シオン「No.4――!!」
No.4「…………」
シオン「もう――」
シオン「邪魔する奴はいねぇぞ!!」
剣を――
強く。
握る。
シオン「今度こそ――」
シオン「お前が相手だ!!」
No.4「…………」
逃げない。
構えない。
ただ――
シオンを。
静かに――
見ている。
そして。
また。
棺桶へ――
手を伸ばす。
シオン「…………!」
シオン「またかよ!!」
ギィィィィ――
棺桶が――
再び。
開く。
その奥。
深い――
闇。
そこから。
また一つ。
人の形をした――
淡い光が。
ゆっくりと――
浮かび上がる。
シオン「…………」
シオン「今度は――」
シオン「誰だよ……」
光は――
静かに。
墓苑の奥へ。
進んでいく。
その先。
一つの――
亡骸。
光が。
その身体へ――
吸い込まれる。
ドクン――
シオン「…………」
ドクン――
指が――
動く。
ゆっくりと。
男が――
身体を起こす。
シオン「…………」
その顔が――
上がる。
シオン「…………」
剣を握る手が――
止まる。
目が――
見開かれる。
呼吸が――
止まる。
忘れるはずがない。
忘れられる――
はずがない。
シオン「…………」
震える――
唇。
そこから。
僅かに――
声が漏れる。
シオン「…………父上?」




