『変幻の三枚目』【10】
鮮血が――
山頂に。
飛び散る。
セイ「ぐっ……!」
シオン「――!!」
斬られたのは――
セイ。
咄嗟に――
身体を捻った。
だが。
避けきれなかった。
胸元を――
双剣が。
斬り裂いていた。
セイ「…………っ」
No.3「…………」
No.3「流石は――」
No.3「ガキでも凶宴のメンバーか」
セイ「……いきなり」
セイ「こっち来んなよ……!」
No.3「言っただろ」
No.3「こっちの方が――」
No.3「面白そうだ」
再び――
双剣が。
セイへ――
振るわれる。
セイ「――っ!」
ヒュンッ!!
身体を――
反らす。
刃が――
鼻先を掠める。
さらに――
もう一方。
セイ「…………!」
地面を蹴り――
横へ。
ザンッ!!
双剣が――
岩を斬り裂く。
No.3「…………」
セイ「…………っ」
No.3「どこまで――」
No.3「避けられる?」
No.3が――
踏み込む。
その時。
シオン「はぁっ!!」
背後から――
シオンの剣。
ギィン!!
シオン「――!」
No.3は――
振り返らない。
片方の剣だけで――
シオンの一撃を。
受け止める。
No.3「邪魔するなよ」
シオン「お前の相手は――」
シオン「俺だろ!」
No.3「だから?」
シオン「――!」
ギンッ!!
シオンの剣を――
弾く。
そして。
もう一方の剣は――
再び。
セイへ。
セイ「また俺かよ!!」
ザシュッ!!
セイ「っ!」
僅かに――
遅れた。
腕から――
血が飛ぶ。
シオン「セイ!」
セイ「俺はいい!!」
シオン「!」
セイ「こいつの攻撃くらい――」
セイ「避けられる!!」
シオン「一回どころか――」
シオン「もう二回斬られてるだろ!!」
セイ「うるせぇ!!」
No.3「…………」
二人の声を――
聞きながら。
No.3の口元が――
ゆっくりと。
歪んでいく。
No.3「……いい」
シオン「?」
No.3「いいな――」
No.3「これ」
セイ「…………」
No.3「一人を斬ろうとすれば――」
No.3「もう一人が来る」
No.3「そっちを斬ろうとすれば――」
No.3「また一人が動く」
No.3「…………」
No.3「最高じゃねぇか」
ドンッ!!
セイ「――!」
No.3が――
飛び込む。
双剣が――
狂ったように。
閃く。
セイ「っ!!」
一撃。
二撃。
三撃。
セイは――
紙一重で。
躱す。
その背後から――
シオン「はぁっ!!」
ギィン!!
No.3「…………!」
片方の剣で――
シオンを受ける。
もう片方は――
セイへ。
ヒュンッ!!
セイ「――っ!」
躱す。
シオン「こっち見ろ!!」
ギィン!!
No.3「…………」
No.3の笑みが――
さらに。
深くなる。
No.3「もっと――」
シオン「…………!」
No.3「もっと来いよ!!」
双剣が――
荒れ狂う。
右。
左。
上。
下。
シオンを――
捌き。
セイを――
斬る。
セイ「――っ!」
シオン「はぁっ!!」
ギィン!!
No.3「そうだ――」
No.3「それだよ……!」
No.3「もっと――」
No.3「俺を楽しませろよ!!」
ギンッ!!
ギィン!!
ザンッ!!
三人が――
入り乱れる。
No.3「…………!」
シオン「…………!」
セイ「…………!」
双剣が――
再び。
セイへ。
ヒュンッ!!
セイ「――っと」
身体を――
僅かに傾ける。
刃が――
首元を通り過ぎる。
次。
腹。
セイ「…………」
半歩――
下がる。
ブンッ!!
空を斬る。
No.3「…………!」
さらに――
踏み込む。
一撃。
二撃。
三撃。
四撃。
セイ「…………!」
全て――
紙一重。
だが。
その度に――
セイの口元が。
少しずつ。
吊り上がっていく。
セイ「…………」
セイ「……ヒヒッ」
シオン「…………?」
No.3「…………」
セイ「どうしたァ?」
No.3「…………!」
ヒュンッ!!
頬を――
刃が掠める。
一筋。
血が流れる。
それでも。
セイは――
笑っていた。
セイ「そんな剣筋じゃ――」
セイ「一生――」
セイ「致命傷なんか入らねぇぞ?」
No.3「…………」
セイ「アハッ!!」
セイ「ほら――」
セイ「もっとちゃんと――」
セイ「殺しに来いよ!!」
シオン「…………」
シオン「おい」
セイ「あ?」
シオン「お前――」
シオン「狂になってんぞ」
セイ「…………」
セイ「……あ」
シオン「…………」
シオン「まあ、いいか」
シオン「どっちも――お前だしな」
セイ「…………」
一瞬。
セイが――
シオンを見る。
そして。
再び――
No.3へ。
セイ「……ヒヒッ」
笑みは――
消えない。
No.3「…………」
No.3の口元も――
大きく。
吊り上がる。
No.3「そうだ――」
No.3「それでいい……!」
セイ「…………!」
No.3「もっと――」
No.3「もっとだ!!」
ドンッ!!
再び――
双剣。
セイ「――!」
避ける。
その瞬間。
シオンが――
懐へ。
シオン「はぁっ!!」
ギィン!!
No.3「…………!」
片方で――
受ける。
そして。
もう片方は――
シオンではなく。
セイへ。
セイ「ヒヒッ!!」
ヒュンッ!!
躱す。
シオン「戦いながら――」
シオン「余所見してんじゃねぇ!!」
No.3「余所見?」
シオン「――!」
No.3「違うな」
ギィン!!
シオンの剣を――
弾く。
No.3「どっちも――」
No.3「見てんだよ!!」
ドンッ!!
シオン「――!」
セイ「!」
No.3が――
二人の間へ。
飛び込む。
双剣が――
左右へ。
同時に。
振り抜かれる。
シオン「くっ!!」
ギィン!!
セイ「――っ!」
ヒュンッ!!
シオンは――
受ける。
セイは――
躱す。
No.3「…………」
シオンと――
セイ。
二人を――
交互に見る。
No.3「一人より――」
No.3「二人の方が」
No.3「やっぱり――」
No.3「最高だな……!」
セイ「ヒヒッ……」
シオン「…………」
シオン「楽しそうで何よりだよ」
No.3「…………」
その瞬間。
No.3が――
双剣を。
地面へ――
振り下ろす。
ズガァァァン!!
シオン「――!」
セイ「!」
岩盤が――
砕ける。
大量の――
岩。
砂。
土が――
一気に。
巻き上がる。
シオン「くっ……!」
セイ「目くらましか……!」
瞬く間に――
山頂を。
砂煙が――
覆い尽くす。
シオン「…………!」
見えない。
No.3の姿が――
完全に。
消える。
シオン「…………」
剣を構え――
周囲を。
警戒する。
だが。
砂煙の中から――
何も来ない。
双剣の音も。
足音も――
聞こえない。
やがて――
風が。
砂煙を。
少しずつ――
運んでいく。
シオン「…………!」
視界が――
戻る。
だが。
そこに。
No.3の姿は――
ない。
シオン「……消えた?」
セイ「…………」
シオン「セイ?」
セイ「…………まずい」
シオン「?」
先ほどまでの――
笑みが。
セイの顔から――
消える。
セイ「まだ――」
セイ「一つ残ってる」
シオン「…………!」
《三相》。
巨大鎌。
双剣。
そして――
シオン「…………」
セイ「弓だ」




