『二枚目の裏側』【3】
No.2「世界中に、種を蒔いてる」
シオン「……種?」
No.2「ああ」
シオン「どういう意味だ」
No.2「そのままの意味だ」
No.2は、
荒れ果てた大地へ目を向ける。
No.2「国を一つ滅ぼす」
シオン「…………」
No.2「そこで大切なものを失った奴が――」
No.2「俺たちを憎むかもしれない」
シオン「…………」
No.2「戦争を一つ起こす」
No.2「追い詰められた人間の中から――」
No.2「英雄が生まれるかもしれない」
シオン「…………」
No.2「逆もある」
シオン「……逆?」
No.2「ああ」
No.2は、
淡々と続ける。
No.2「疫病で滅びかけた国を――」
No.2「俺たちが救ったこともある」
シオン「……!」
No.2「薬を与え」
No.2「病人を救い」
No.2「国一つを、死の淵から引き戻した」
シオン「…………」
No.2「そうすれば――」
No.2「俺たちを神と崇める奴が現れるかもしれない」
シオン「……神?」
No.2「ああ」
No.2「そいつらが凶宴の名を広める」
No.2「やがて信じる者が増え――」
No.2「一つの思想になるかもしれない」
No.2「国を動かすほどの力になるかもしれない」
シオン「…………」
No.2「滅ぼすのも」
No.2「救うのも――」
静かな目が、
シオンへ戻る。
No.2「俺たちにとっては同じだ」
シオン「……同じ?」
No.2「ああ」
No.2「一つ、世界に何かを落とす」
No.2「それで誰かが変わる」
No.2「変わったそいつが――」
No.2「また、別の何かを変える」
シオン「…………」
No.2「その先で何が起こるのか」
No.2「俺たちにも分からない」
シオン「…………」
No.2「だから――」
No.2「面白い」
シオン「…………ッ」
No.2の声には、
悪意すらなかった。
まるで――
本当に、
遊びの話でもしているかのように。
No.2「退屈なんだよ」
シオン「……何?」
No.2「何も起こらない」
No.2「昨日と同じ今日が来て」
No.2「今日と同じ明日が来る」
No.2「そんな世界は――」
No.2「つまらない」
シオン「…………」
No.2「だから種を蒔く」
No.2「善でも」
No.2「悪でも」
No.2「何でもいい」
No.2「何かが起これば――」
No.2「それでいい」
シオン「…………」
シオンの拳が、
強く握られる。
シオン「……それだけか」
No.2「?」
シオン「そんな理由で――」
シオン「世界中で、あんなことをしてるのか」
No.2「ああ」
シオン「…………ッ」
No.2「そして――」
No.2は、
改めてシオンを見る。
頭から、
足元まで。
まるで――
何かを確かめるように。
No.2「まさか――」
僅かに、
口元が緩む。
No.2「本当に芽を出す奴が現れるとはな」
シオン「…………!」
No.2「アルヴェリアを滅ぼした」
No.2「お前は生き残った」
No.2「そして俺たちを追い――」
No.2「ここまで来た」
シオン「…………」
No.2「お前も――」
No.2は、
静かに言い放つ。
No.2「俺たちが蒔いた種から生まれたものの一つだ」
シオン「…………ッ!!」
燃える街。
泣き叫ぶ人々。
崩れ落ちる王城。
父の亡骸。
そのすべてを――
“種”。
その一言で、
片付けられた。
シオン「…………ふざけるな」
No.2「…………」
シオン「俺の国も……」
シオン「そこで生きてた人たちも……」
シオン「お前らの退屈を紛らわせるための――」
シオン「遊び道具じゃない!!」
No.2「…………」
シオン「俺が――」
シオン「お前らの蒔いた種から生まれたって?」
No.2「ああ」
シオン「…………」
ガチャ――
シオンの親指が、
剣の鍔を押し上げる。
No.2「…………」
ゆっくりと――
剣を抜く。
シオン「だったら……」
シオン「その芽が――」
No.2「…………」
切っ先が、
真っ直ぐNo.2へ向けられる。
シオン「お前らの遊びを終わらせる」
No.2「…………」
風が吹く。
No.2の髪が、
静かに揺れる。
そして――
No.2「……いいな」
シオン「……?」
No.2「それでいい」
No.2もまた、
ゆっくりと剣へ手を伸ばす。
No.2「種を蒔いた」
No.2「芽が出た」
No.2「その芽が――」
No.2「今度は俺たちを終わらせに来た」
シオン「…………」
No.2「その先で何が起こるのか――」
スラァ――
静かに、
剣が抜かれる。
No.2「見てみたい」
シオン「…………ッ」
二人が、
剣を構える。
荒れ果てた大地。
観客はいない。
歓声もない。
ただ――
凶宴が蒔いた種と、
その種を蒔いた者。
二人だけが、
向かい合う。
No.2「来い」
シオン「――行くぞ」
ドンッ!!
シオンが、
地面を蹴った。
二枚目――
No.2。
その“裏側”を、
シオンはまだ知らない。




