『二枚目の裏側』【4】
ドンッ!!
シオンが、
地面を蹴った。
一気に――
間合いを詰める。
No.2「…………」
No.2は、
静かに剣を構える。
シオン「はぁぁぁ!!」
ガキィィィン!!
剣と剣が、
激しくぶつかる。
シオン「――ッ!」
No.2「…………」
重い。
だが――
シオン「…………!」
見える。
No.2が、
剣を弾く。
そのまま身体を沈め――
脇腹。
シオン「――そこ!」
ガキン!!
No.2「…………」
剣で受ける。
次。
首。
シオンは、
一歩後ろへ。
ブンッ!!
鼻先を、
刃が通り過ぎる。
No.2「…………」
さらに――
胸。
肩。
喉。
No.2の剣が、
次々とシオンの急所へ伸びる。
だが――
ガキン!!
シオン「――ッ!」
ギィン!!
シオン「そこだ!」
ブンッ!!
紙一重。
すべて――
かわす。
No.2「…………」
一度、
距離が開く。
シオン「はぁ……はぁ……」
No.2は、
黙ったままシオンを見る。
No.2「……変だな」
シオン「…………」
No.2「俺が斬る前に――」
No.2「もう避けてる」
シオン「…………」
シオンは、
答えない。
だが――
確信していた。
(見える……)
No.Aとの戦いで、
突然見え始めた――
僅か先の未来。
あの時よりも。
(はっきり見える……!)
No.2「…………」
静かに――
No.2が剣を構え直す。
無駄がない。
構え。
呼吸。
足運び。
そして――
狙う場所。
すべてが、
正確。
まるで――
一撃で仕留めることだけを、
考えているような剣。
シオン「…………」
廃村で見た、
盗賊たちの死体。
全員――
急所を、
一撃。
シオン「……なるほどな」
No.2「?」
シオン「あれは――」
シオン「お前の剣だったのか」
No.2「…………」
次の瞬間。
ドンッ!!
No.2が消える。
――見える。
右。
首。
シオン「――ッ!」
身体を沈める。
ブォン!!
頭上を、
剣が通過する。
No.2「……!」
その瞬間――
シオンが踏み込む。
シオン「そこだァ!!」
ズバッ!!
No.2「――ッ」
二人が、
すれ違う。
シオン「…………」
No.2「…………」
静寂。
そして――
ポタッ。
地面に、
赤い雫が落ちる。
No.2「…………」
頬。
薄く――
一本の傷。
No.2は、
自らの頬へ指を当てる。
指先についた――
赤い血。
No.2「…………」
じっと、
見つめる。
シオン「…………」
シオンは、
剣を構え直す。
シオン「次は――」
シオン「浅く済まないぞ」
No.2「…………」
返事はない。
ただ――
血を、
見つめている。
No.2「…………血」
シオン「…………?」
No.2の肩が――
僅かに、
揺れた。
No.2「…………」
そして――
No.2「……ひひっ」
シオン「……!?」
小さな笑い声。
No.2「ひ……」
No.2「ひひひ……」
シオン「…………」
何だ。
空気が――
変わった。
No.2「アハッ……」
ゆっくりと、
顔を上げる。
シオン「…………!」
同じ顔。
同じ身体。
同じ剣。
なのに――
違う。
目。
口元。
立ち方。
そして――
剣の持ち方。
先ほどまでの、
無駄のない構えではない。
だらりと――
剣を、
片手でぶら下げている。
シオン「……何だ、お前」
No.2「…………」
首を、
傾ける。
No.2「何って――」
ニィィ――
口元が、
大きく歪む。
No.2「俺だよ」
シオン「…………!」
瞬間――
ドンッ!!!
No.2が、
地面を蹴る。
シオン「――!」
――見える。
右から来る。
狙いは――
首。
シオン「…………!」
読めている。
これまでと同じ。
右へかわす。
そのはずだった。
だが――
No.2「アハッ!!」
ガァァァン!!!
シオン「……!?」
No.2の剣が――
突然、
地面へ叩きつけられた。
砕けた石が、
一斉に飛び散る。
シオン「な――」
何を――
次の瞬間。
No.2が、
その場で身体を回転させる。
ブォォォン!!
シオン「――ッ!!」
咄嗟に、
剣を構える。
ガキィィィン!!!
シオン「ぐっ!!」
吹き飛ばされる。
ザザザザザッ!!
シオン「…………ッ」
地面を滑り、
どうにか踏み止まる。
シオン「何だ……今の……」
未来では――
首を狙っていた。
確かに、
そう見えた。
なのに。
No.2「ヒヒッ!!」
ドンッ!!
再び――
No.2が迫る。
シオン「――!」
――見える。
正面。
胸。
突き。
シオン「…………!」
シオンが、
剣を合わせようとする。
だが――
No.2「アハハハハッ!!」
直前。
No.2の剣が、
横へ逸れた。
ガァァァン!!
岩を――
斬る。
シオン「!?」
砕けた岩。
飛び散る破片。
視界が、
一瞬塞がれる。
シオン「くっ――」
その中から――
No.2「みぃつけたァ!!」
シオン「――ッ!!」
ズバァァッ!!
シオン「ぐぁっ!!」
鮮血が、
宙を舞う。
シオンの肩が――
深く斬られる。
シオン「ぐっ……!」
後方へ跳ぶ。
No.2「アハハハハハ!!」
止まらない。
壁。
地面。
岩。
何もない空間。
No.2の剣が――
無秩序に、
振り回される。
ガァン!!
ズバァン!!
ドガァァン!!
シオン「…………!」
滅茶苦茶だ。
何を狙っているのか――
分からない。
いや。
シオン「…………」
違う。
シオンへ向けられる――
その瞬間だけ。
首。
胸。
腹。
急所。
そこだけは――
恐ろしいほど、
正確。
シオン「…………!」
脳裏に――
あの廃村が浮かぶ。
無数に刻まれた、
剣傷。
それなのに――
盗賊たちは全員、
急所を一撃。
シオン「……そういうことか」
No.2「アハッ!!」
ガキィィィン!!!
シオン「ぐっ!!」
未来は――
見える。
だが。
見えた通りに――
来ない。
No.2「ヒャハハハハ!!」
ガァァァン!!
シオン「――ッ!!」
地面が砕ける。
No.2「ほらァ!!」
ブォン!!
シオン「くっ!!」
紙一重でかわす。
No.2「もっと!!」
ガキィィィン!!
シオン「ぐぁっ!!」
剣ごと、
身体が弾かれる。
No.2「もっともっと!!」
シオン「…………ッ!!」
呼吸が、
乱れる。
肩から、
血が流れる。
シオン「はぁ……」
シオン「はぁ……」
未来を見ても――
追いつけない。
いや。
それ以前に――
シオン「……何なんだ……」
目の前にいるのは――
同じ男。
同じ顔。
同じ身体。
同じ剣。
それなのに。
さっきまで戦っていたNo.2とは――
まるで、
別人。
No.2「ヒヒッ……」
No.2が、
剣先をシオンへ向ける。
その顔には――
狂気に満ちた、
笑み。
No.2「もっと――」
シオン「…………!」
No.2「遊ぼうぜェ!!」




